2008年09月12日 社説
[汚染米転売]
頭を下げれば済むのか
カビ毒や残留農薬に汚染された「事故米」が、食用として転売されていたのだから恐ろしくなる。消費期限の改ざん、殺虫剤が混入した輸入ギョーザ、産地偽装など、食の安全を脅かす事件が頻発する中での今回の事故米流用、転売だ。
この国の食の安全に対する信頼と企業のモラルは崩壊寸前にあると言うしかない。
米粉加工販売会社・三笠フーズが、二〇〇三年度から本年度までに国から購入した事故米は約千七百七十九トン。
転売が分かっている米の中には、有機リン系の「メタミドホス」が混入した約二百九十五トンの中国産米がある。
発がん性のカビ毒である「アフラトキシン」の混じったベトナム産も約三トンあったという。いずれも非食用で、工業用のりなどの原料として使われるものだ。
それが焼酎の原料に利用され、菓子の材料として使われていたのだから深刻だ。
輸入米で最も安いのは一トン当たり約七万円。事故米は一万円以下であり、事故米転売で約六万円の利ざやが稼げることも背景にあるようだ。
冬木三男社長は「経営が厳しくて」と転売理由を述べたが、そこには消費者への視線はひとかけらもみえない。
しかも二重帳簿を作り、工業用のり加工会社が受け取ったことを示す伝票も偽造。農水省の立ち会い検査の際は、工業用の袋に詰めていたというから悪質だ。
警察には流通経路や転売の手口を徹底的に解明するよう求めたい。
検査に当たった農林水産省の対応も腑に落ちない。
同省は〇三年から五年間で九十六回検査に入っている。いずれも抜き打ち検査ではなく、検査日を知らせていたというから何をかいわんやだ。
これでは企業側に「隠蔽工作をしてください」といっているようなものではないか。不正を見抜けなかったのは当然である。
農水省は発覚当初「健康には影響がない」とし、転売先を公表しないとしていた。
だがメタミドホスが混入した中国製ギョーザを食べた子どもが中毒症状に陥り重体になったのは最近のことだ。アフラトキシンも最悪の場合は死に至る可能性があるという。
非公表の姿勢が、逆に食品業界に不安を与えたのは間違いない。同省の「食の安全」に対する危機意識の足りなさにはあきれるしかない。
農水省から事故米を購入している企業は三笠フーズを含めて十七社だ。うち、愛知県内の事故米取引業二社の不正転売も明らかになっている。
転売による影響は焼酎メーカーから菓子メーカーにまで拡大。末端では病院の食事や学校給食にも用いられていたことが判明している。
一方で、焼酎や菓子メーカーが商品回収や廃棄費用で窮地に陥っていることも見過ごしてはなるまい。政府が売った輸入米による企業被害は理不尽であり、救援には国が率先して当たるべきだろう。
それが国の責務であり、このような企業を守っていく制度を早急に築く必要がある。
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