8月16日、アメリカのUSAネットワークで『The Best TV Shows That Never Were(幻のベストTVドラマ)』というタイトルの特番が放送されました。海外ドラマファンとしては観過ごせません。早速取り寄せてみると、内容は60年代から80年代後半まで、シリーズ化を期待されながらも果たせなかったTVドラマのパイロット版を、ダイジェストで紹介するというものでした。シチュエーション・コメディ、SF、警察もの等、さまざまなジャンルの作品が、主演俳優や内容などの解説付きで、20本ほど紹介されていました。そのほとんどが、“タイトルやスチル写真だけは本で観たことがあるけど・・・”というようなものでした。唯一、作品を観たことがあるのが、昔、NHKで放送されたアンドロイド物のSFドラマ『人造人間クエスター(THE QUESTOR TAPES)』(74)です。この作品は『宇宙大作戦』(66〜69)に続くSFドラマとして、同シリーズの企画・原案者でもあるプロデューサー、ジーン・ロッデンベリーが作った作品で、ネットワーク局のNBCで放送されました。しかし、SFファンには好評だったものの、局の反応は“知的すぎる”“娯楽性に乏しい”というもので、結局キャンセル。シリーズ化はされなかったという作品です。
つまり、パイロット版とは、TVシリーズ化を想定した企画の中で、TV局、スポンサー、視聴者の反応をみるため製作される作品なのです。その反応が良ければ作品はシリーズ化され、その場合、パイロット版が第1話となる仕組みになっています。
アメリカでは昔から、多くの番組のパイロット版が製作され、レギュラー番組が放送休止する、5〜8月のオフシーズンに放映されました。今では季節は関係なく、映画枠などで放映され、反応を見るようです。例えば昨年暮れには、かつて映画『スター・ウォーズ』(77)の大ヒットを受け、その特撮スタッフを招いて制作された宇宙SF『宇宙空母ギャラクティカ』(78)のリメイクが製作され、SF専門のケーブル局、Sci−hiチャンネルで2時間の前後編として放送されました。評判もまずまずで、この秋から同局でシリーズ化の予定です。実は、最初に挙げた、『ER〜』などは、第1話を放送する前からシリーズ化が前提とされていたようですが、こうした伝統にのっとって、そのサブタイトルは“pilot”とされていると考えられます。また、パイロット版とシリーズでは、役者さんの交代や、細かな設定の変更などが行われる場合もあります。こうした違いを見つけるのもファンの楽しみのひとつでしょう。
ところでパイロット版は、放映時間が90〜100分位の物が多く、アメリカ以外の国には、読み切り単発のTVムービーとして配給されることも多いようです。そのため、パイロット版とシリーズ化された作品に、権利上の微妙な違いが存在し、DVD化されたアメリカ・ドラマで、第1話にあたるパイロット版が収録されないというケースも出てきています。観る側にとってこれはつらい訳で、注意が必要です。また、日本のTV番組表では放送される海外ドラマが、シリーズ物のパイロット版なのか、それとも最初から単発TVムービーとして製作されたものかどうか不明なので、気になる作品はチェックすることをオススメします。
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