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海外ドラマに夢中 !

アメリカ・テレビ・ドラマの“パイロット版”って?
(by 岸川 靖)

No.21 2004.09.16

アメリカのテレビドラマも、毎回サブタイトルがついています。当然ながら、普通はその回の内容を示すものなのですが、第1話目のそれが、“pilot(パイロット)”となっているものが圧倒的に多いということをご存知でしょうか?
近年、NHKで放送された作品でも、『ER 緊急救命室』や『アリー・my・ラブ』、そして『ダーマ&グレッグ』でも第1話はそうなっています(尚、日本語版のタイトルは、それぞれ“甘い誘惑”、“めぐりあい”、“ひとめぼれ”と、内容を反映したものとなっています)。これは、もともと、新番組を放送する前に、パイロット版と呼ばれるものを制作する場合があるというところからきているのです。今回はそのパイロット版とはなにか? どうして作られるのか? について紹介しましょう。

8月16日、アメリカのUSAネットワークで『The Best TV Shows That Never Were(幻のベストTVドラマ)』というタイトルの特番が放送されました。海外ドラマファンとしては観過ごせません。早速取り寄せてみると、内容は60年代から80年代後半まで、シリーズ化を期待されながらも果たせなかったTVドラマのパイロット版を、ダイジェストで紹介するというものでした。シチュエーション・コメディ、SF、警察もの等、さまざまなジャンルの作品が、主演俳優や内容などの解説付きで、20本ほど紹介されていました。そのほとんどが、“タイトルやスチル写真だけは本で観たことがあるけど・・・”というようなものでした。唯一、作品を観たことがあるのが、昔、NHKで放送されたアンドロイド物のSFドラマ『人造人間クエスター(THE QUESTOR TAPES)』(74)です。この作品は『宇宙大作戦』(66〜69)に続くSFドラマとして、同シリーズの企画・原案者でもあるプロデューサー、ジーン・ロッデンベリーが作った作品で、ネットワーク局のNBCで放送されました。しかし、SFファンには好評だったものの、局の反応は“知的すぎる”“娯楽性に乏しい”というもので、結局キャンセル。シリーズ化はされなかったという作品です。

つまり、パイロット版とは、TVシリーズ化を想定した企画の中で、TV局、スポンサー、視聴者の反応をみるため製作される作品なのです。その反応が良ければ作品はシリーズ化され、その場合、パイロット版が第1話となる仕組みになっています。

アメリカでは昔から、多くの番組のパイロット版が製作され、レギュラー番組が放送休止する、5〜8月のオフシーズンに放映されました。今では季節は関係なく、映画枠などで放映され、反応を見るようです。例えば昨年暮れには、かつて映画『スター・ウォーズ』(77)の大ヒットを受け、その特撮スタッフを招いて制作された宇宙SF『宇宙空母ギャラクティカ』(78)のリメイクが製作され、SF専門のケーブル局、Sci−hiチャンネルで2時間の前後編として放送されました。評判もまずまずで、この秋から同局でシリーズ化の予定です。実は、最初に挙げた、『ER〜』などは、第1話を放送する前からシリーズ化が前提とされていたようですが、こうした伝統にのっとって、そのサブタイトルは“pilot”とされていると考えられます。また、パイロット版とシリーズでは、役者さんの交代や、細かな設定の変更などが行われる場合もあります。こうした違いを見つけるのもファンの楽しみのひとつでしょう。

ところでパイロット版は、放映時間が90〜100分位の物が多く、アメリカ以外の国には、読み切り単発のTVムービーとして配給されることも多いようです。そのため、パイロット版とシリーズ化された作品に、権利上の微妙な違いが存在し、DVD化されたアメリカ・ドラマで、第1話にあたるパイロット版が収録されないというケースも出てきています。観る側にとってこれはつらい訳で、注意が必要です。また、日本のTV番組表では放送される海外ドラマが、シリーズ物のパイロット版なのか、それとも最初から単発TVムービーとして製作されたものかどうか不明なので、気になる作品はチェックすることをオススメします。

※コラムに含まれる番組の放送日時や告知の情報等は掲載時のものです。ご注意ください。




岸川 靖(きしかわ・おさむ) 岸川 靖(きしかわ・おさむ)

1957年、東京生まれ。編集者・ライター。雑誌「幻影城」編集を皮切りに執筆をはじめ、海外ドラマ、特撮映画等の著書多数。
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