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木 THURSDAY
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木:海外ドラマに夢中!

いよいよスタート!『奥さまは魔女』(by 多田幸子)

No.122 2006.09.28

こんにちは。この夏から『懐かし海外ドラマ』を担当しております、多田幸子です。今回から、このコラムの仲間に入れていただきました。会員の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、BS2でご好評をいただいている「懐かし海外ドラマ」ですが、10月5日(木・深夜0時〜)から、新たに、あの名作=『奥さまは魔女』(原題:Bewitched)が登場します! アメリカだけでなく日本でも大人気となったコメディの代名詞的な作品ですが、放送開始直前ということで、あらためてその魅力についてお話しさせていただきたいと思います。

アメリカで『奥さまは魔女』の放送が始まったのは1964年。大きな人気を得て、72年まで全8シーズンにわたって放送されました。その後、日本でも放送され、やはり大人気となりました。このドラマのすごいところは、初回放送から40年以上の歳月がたっているにもかかわらず、いまだにさまざまなところでその影響が見られること。ハリウッドではニコール・キッドマン主演で映画化され、日本でも米倉涼子さん主演でTVドラマとしてリメイクされたのは記憶に新しいところです。ドラマ自体を見たことのない世代でも、『奥さまは魔女』というタイトルを聞けば、“ピコピコピン♪”という、あのサマンサが魔法を使うときの音(そしてお鼻ぴくぴくのしぐさ)を連想したりするのではないでしょうか?

主人公はサマンサ(エリザベス・モンゴメリー)。魔女である彼女が、広告代理店に勤めるダーリン(ディック・ヨーク)と恋に落ち結婚することから物語は始まります。基本的には、二人の生活の中に起きる様々な事件を周囲の人たちを交えて描く一話完結のコメディです。ちなみに、“ダーリン”という呼び名は、“最愛の人”を意味する“Darling”ではなく、“Darrin”という人名(固有名詞)です。レギュラーとしてこの夫婦にからむのは、サマンサの母親(当然、魔女です)エンドラ。大切な娘が、つまらない人間なんかと結婚することを苦々しく思ってしきりにちょっかいを出しにやってきます。それからダーリンの上司ラリー・テイト(デビッド・ホワイト)や、2人の奇妙な生活に疑問を抱き何とか真相を探ろうとする隣人のグラディスさん(アリス・ピアス)も存在感ばっちり! 第2シーズンでは、サマンサとダーリンの子ども、タバサ(ダイアン・マーフィ&エリン・マーフィー⇒双子による2人1役)が誕生します。実生活でE.モンゴメリーが妊娠したことをきっかけに登場するキャラクターなのですが、番組と平行して実際に成長していくかわいい姿を視聴者は見守ることになります。こうしたレギュラー・キャラクターがにぎやかに登場しながら番組には笑いが生まれていくのですが、この『奥さまは魔女』は、それまでのシット・コムとは異なる豊かなドラマ性を帯びていた点で画期的でした。

シット・コムとは“シチュエーション・コメディ”の略。いつもほぼ同じ状況(セットや場面など)を背景にさまざまな出来事が起こり、番組が進行していく作品のことです。観客を前に収録する場合が多く、そのためシット・コム特有の“笑い声”が入っているのが一般的です。アメリカのテレビドラマにシット・コムが登場したのは1950年代で、その最初の代表作といえるのがこれまでBS2で放送してきた『アイ・ラブ・ルーシー』でした。
『〜ルーシー』の終了(1957年)から7年後に『奥さまは魔女』の放送が始まりますが、その新しさは、放送開始直後から視聴者を魅了しました。確かに、家庭をはじめとした“決まったセット”で繰り広げられる物語で、観客の笑い声入りの作品なのですが、主人公が「魔女」であるという設定自体、当時のアメリカでは物議をかもしたそうです。というのは、キリスト教社会では魔女は邪悪なことの象徴の一つだったから。しかし「魔女」サマンサは心からダーリンを愛し、彼と共に生きるためなら、万能の“魔法の力”を放棄することも惜しみませんでした。そして何があっても彼女を深く愛している人間ダーリン。この2人の心の結びつきには、誰もが夢見ている“違いを乗り越えて信じあい、愛し合う”という、いわば人種差別などへの批判も含んだ社会的メッセージが込められていたのです。毎回巻き起こる大騒ぎの中で、夫婦や周りの人々の感情が自然に描きこまれ、見終わると何かホッとし、元気が出て幸せな気持ちになることができる・・・。「奥さまは魔女」は、そんな作品でした。
残念ながら、エリザベス・モンゴメリーやディック・ヨークを始めとする多くの出演者は、既にこの世を去っていますが、今回あらためて、彼女たち、そして作品そのもののすばらしさに触れていただければ、担当者としても幸せです。

また、このドラマが日本で人気となったのは、日本語版の魅力によるところも大きいでしょう。サマンサは、キュートだけれど、やや低めな声で安心感も抜群の北浜晴子さん。次から次へと降りかかる事件に毎回大変な目にあうダーリンの柳澤愼一さんも、見事な受身の芝居を披露! ご存じの方も多いかもしれませんが、柳澤さんは『アイ・ラブ・ルーシー』のリッキーも担当されています。元気な妻に振り回されるという共通点、まさに、はまり役!?
そして、もう一つ、忘れるわけにはいかないのが中村正さんのナレーション。実は、「奥さまの名前はサマンサ、だんなさまの名前はダーリン・・・・・奥さまは魔女だったのです!」というオールド・ファンなら誰もが知っているフレーズは、日本語版オリジナル。この部分を含め、翻訳・演出を担当されたのは木原たけしさんと佐藤敏夫さん。現在の『ER 緊急救命室』にいたるまで多くの名作を生み出してきた名コンビによるものなのです。そうした日本語版の素晴らしさも、あらためてご堪能(たんのう)いただければと考えています。

なお、オリジナル版では、第1〜2シーズンは白黒放送ですが、今回の放送は、デジタル技術によるカラライズ版でお送りします。カラライズにあたっては、オリジナルネガ・フィルムをデジタル素材にコピーし、画面の汚れや傷を復元し、雑音などを取り去って美しい音声を整えたうえで、1フレーム1フレームに着色していくという気の遠くなるような作業が施されました。時代考証も綿密に行い、衣装や車、小道具などの色彩が60年代当時の通りに見事に再現されています。照明によって微妙に変化する肌の色調など、最初からカラー撮影だったのでは? と思ってしまうほどの見事さです。オリジナルの印象が強いという方も多いかもしれませんが、昔からのファンという方にも違和感のない仕上がりとなっていますから、きっとご満足いただけると思っています。
そして、もちろん、第1シーズン第1話からの放送です。サマンサとダーリンがどうやって結婚したのか? といった“そもそものお話”からしっかり楽しんでいただけます!

とにかく、40年たっても色あせない魅力に満ちた、幸せな作品です。かつてのファンも、初めてご覧になる方も、ぜひお楽しみください!!

『奥さまは魔女』はBS2で、10月6日から毎週木曜 深夜0時〜0時50分(再放送は10月9日から、毎週月曜 午前9時〜9時50分)です。どうぞお楽しみに!



多田幸子(ただ・さちこ) 多田幸子(ただ・さちこ)

1994(平成6)年にNHKに入局。ドキュメンタリードラマ『宇宙へ〜冷戦と二人の天才〜』などを担当。「懐かし海外ドラマ」の担当には今夏から加わりました!
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