イラク派遣中の航空自衛隊が年内に撤収する。政府は復興支援の目的をほぼ達成したとしている。だが活動実態は不透明なままで米軍支援一辺倒の疑いも強い。すべてを検証し、説明責任を果たせ。
イラク復興支援特措法に基づき陸上、航空自衛隊は二〇〇四年から支援活動を本格開始。〇六年の陸自撤収後も空自は多国籍軍の要員や支援物資の空輸に従事してきた。年内撤収でイラクでの活動は約五年で幕を閉じることになる。
撤収理由について、政府はイラク国内の治安状況の回復と、駐留の根拠となる国連決議の期限が年末で切れることを挙げている。
期限が切れた場合、活動を続けるにはイラク政府と地位協定を締結する必要がある。だが、衆参ねじれの状況下では国会承認の見通しは立たない。一方で各国軍の撤退が相次いでいる。何より名古屋高裁は判決の傍論で「憲法九条違反」の判断を示した。内外の情勢を踏まえての方針決定だろう。撤収は自然な流れだ。
ただし、忘れてはいけないことがある。イラク派遣に関する一連の経緯と実態の検証だ。
大量破壊兵器保有を理由に米英が踏み切ったイラク戦争を小泉政権は支持した。攻撃の結果、フセイン政権は崩壊したが、兵器は発見されず、十五万人以上のイラク人が死亡する悲劇を招いた。「誤った戦争」が国際常識になる中、日本政府は開戦支持について非を認めていない。その判断の妥当性をあらためて問いたい。
活動実態もやぶの中だ。基本計画では「人道復興支援活動を中心とする」と定めている。空自は十日現在で七百六十八回、計六百四十トンの物資を輸送しているが、具体的な中身が判然としない。大半が米兵や米軍物資関連らしいが、そうなると人道復興というよりも米軍支援そのものになる。
名古屋高裁は「武装兵員を戦闘地域へ空輸するのは武力行使と一体化した行動」と断じている。復興支援を成し遂げたというなら、正確な情報を公開すべきだ。いいかげんな総括では自衛隊活動への理解は深まらない。
イラク撤収に伴い、政府や自民党はインド洋での給油活動継続に全力を挙げる。「双方とも撤退するのは国際社会の一員として許されない」と、意見の割れる国民に訴えるだろう。しかし、それは性急すぎないか。給油の効果の点検も含め、日本が実行可能な貢献について冷静な議論が必要だ。
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