沈うつな情景からにぎやかな場面に。舞台が回って一気に政治風景が変わった。退陣表明した福田康夫首相(自民党総裁)の後継を選ぶ総裁選は五氏の戦いとなった。
個性的な人物ばかりだ。話題性があり、注目を集めよう。それぞれが政策通といわれるだけに、論戦が楽しみだ。景気対策、社会保障、安全保障、行財政改革、地方分権など、多岐にわたっての論争を期待したい。
だが、ポスト福田にばかり目を奪われるわけにはいかない。景気低迷や物価高で国民が苦しんでいるのに、政権を投げ出した福田首相の責任はあいまいにされたままである。辞任表明会見では、野党の協力が得られなかったと恨みがましく、謝罪はなかった。
派手な総裁選を繰り広げれば、首相の責任はごまかせると思っているのだろうか。辞任が最大の責任の取り方との見方もあるが、唐突に政権を放り出した以上、おわびはきちんとするべきだ。反省がなければ再生につながるまい。
七年前の九月十一日、米中枢同時テロが起き、ブッシュ政権はイラク戦争に突き進んだ。日本は追随した。戦争の最大の大義とされた大量破壊兵器は見つからず、ブッシュ大統領は誤りを認めたが、日本政府は言い逃れに終始する。
都合の悪いことは水に流す。こんなやり方はもう通用しない。