国が熊本県相良村に建設を予定する川辺川ダム計画について、同県の蒲島郁夫知事は11日開会した県議会で「現行の計画を白紙撤回し、ダムによらない治水を追求すべきだ」として反対する考えを表明した。蒲島知事の意見に法的な拘束力はないが、国は「知事の意向を重んじる」としており、ダム建設が中止される公算が大きくなった。計画発表から42年にわたって賛成派と反対派が対立し、足踏みが続いた九州最大級のダム建設計画は、大きな転機を迎えた。
蒲島知事は反対理由として、建設予定地の相良村長と最大受益地の人吉市長が相次いで反対を表明したことなどを挙げ、流域住民がダム建設を取りやめ、地域の財産として自然環境の維持を求めていることを強調。「治水は全国画一的なダムではなく、地域の特性を生かしたものが必要。洪水を治めるのではなく、共生する新たな考えに立脚すべきだ」と述べ、事実上の「脱ダム宣言」を唱えた。
ダム建設を推進してきた国の姿勢に対しては「ダムによらない治水を極限まで行っていない」と批判。現状では住民の理解が得られていないとして、新たな治水対策を求めた。
水没予定地の五木村については「ダムによる地域振興を待ち望む村民の期待に沿えないことになり、胸が痛む」と述べ、自身が先頭に立って新たな振興計画策定に取り組む決意を示した。
川辺川ダムは1966年に国が計画を発表。歴代の知事は国とともに計画を推進してきたが、2000年に就任した潮谷義子前知事は、ダム建設に伴う漁業補償交渉の混乱などを理由に「中立」に転換した。
今年3月に就任した蒲島知事も賛否を明言せず、「就任から半年後に決断する」として建設の是非を判断するための有識者会議を設置。事業主体の国土交通省、県議会、流域自治体や住民から幅広く意見を聴いてきた。
=2008/09/12付 西日本新聞朝刊=