トリアージ、新たな段階へ
東京都は9月10日、シンポジウム「救急医療とトリアージ」を開催した。本格開始から1年が過ぎた救急搬送、電話相談、病院の救急外来でのトリアージ(緊急度・重傷度による患者の選別)の現状が紹介され、今後の課題について議論した。
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119番受信時「重症患者を優先」 都は昨年6月から、救急隊が緊急性が低いと判断した場合、患者に自ら病院に行くことを勧める「救急搬送トリアージ」制度や、電話で救急車を呼ぶべきか相談できる「救急相談センター」を始めており、シンポジウムではトリアージにかかわってきた各パネラーが報告を行った。
基調講演を行った有賀徹・昭和大学病院副院長は、東京の救急医療、救急車不足は深刻で、消防車が先に現場に駆け付けて処置し、救急車が遅れて到着する件数が一日平均228件(2006年)に上ると訴え、「自分で病院にやって来た緊急入院患者が、本来ならば、救急車で早く運ばれているべきかもしれない。ここを改善できる」と指摘した。また、「地域の救急医療改善が求められているが、全体としてのバランスが大事。医療を社会資本としてとらえるべきではないか」と述べた。
石原哲・白鬚橋病院院長は、都内に2か所ある「救急相談センター」に、医師364人、看護師20人、通信員30人、監督員9人が登録、二十四時間体制で対応に当たっており、一日平均732.5件の問い合わせがあると説明。その上で、「救急相談はチーム医療でなければできない」と指摘し、医師・看護師・通信員が適切に医学的な処置を行える「プロトコル」を整備したことで、緊急度の判断が的確になっていると報告した。一方、土日の相談が増えて対応が難しくなっていることなどを問題点として挙げた。 東京消防庁の三浦弘直氏は、昨年の救急出場が70万件に迫り、20年近くの間に30万件も増加したと指摘。救急出場の多さが、救急車の現場到着に大きな影響を与えていると説明した。その一方で、救急搬送トリアージを始めて、自ら病院に行くことに同意する患者が増えてきたほか、深刻な「アンダートリアージ(実際よりも優先度・緊急度を低めに判定すること)」は生じていないと報告した。また、救急搬送トリアージと救急相談センターが協力を強めることで、「不必要な救急搬送を減らし、本来救急車を呼ぶべき重症者をすくい上げることができる」と訴えた。
救急外来でトリアージを進める東京都立清瀬小児病院の吉野広美看護師は、子どもは自ら病状を言えず、容態が急変しやすいため、小児救急トリアージの運用が必要とし、「母親もどうしてよいか分からず、救急に連れて来る。情報の提供が必要」と指摘した。トリアージの実施に当たっては、重症判断基準を緩める「オーバートリアージ」は原則的に容認しながらも、看護師が悩んだ場合は、医師と相談しながら決めるなど、コミュニケーションを重視しているという。また、「行政と医療者と患者の家族が支え合わなければ、小児救急トリアージは運営できない」と訴えた。
また、後半のディスカッションで、「救急現場でトリアージを行い、すべて問題ないとしても、救急隊長がプロの感で不安を感じたらどうするのか」との有賀氏の質問に、三浦氏は「どうしても不安が残る場合は、安全を優先するが、それを逆手に取る現場もあると聞いている。10月に隊長を集めてもう一度、トリアージの意義などを伝える」と答えた。
更新:2008/09/11 22:23 キャリアブレイン
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