3/5.失語症の型



失語症のタイプ(型)についてお話しします。大きく分けて4つに分かれます。もっと細かい分類方法もあるんですが、わかりやすくするために、一応4つに分けたものを紹介します。

まず、一番多いと言われているタイプが「運動性の失語症」というものです。これは「言葉を作る部分」すなわち「話す命令を出す部分」が損傷されるタイプの失語症です。この失語症は、自分の考えを言葉や文字にあらわして人に伝えることが難しくなります。一般の生活をしている人には、言葉が出ないということはどういうことなのだろうかと、なかなか体験出来ることではないのでわかりにくいことかと思います。斉藤部長もリハ教室の1回目でお話ししていましたが、「見ず知らずの国へ行って、全く言葉が通じない状態」というのが運動性の失語症です。例えば英語だったら、聞いたら少しはわかるんだけれども、自分がいざ話すとなると話せないという状態です。

この失語症の場合は、おもに話すことと字を書くということが障害されます。患者さんひとりひとりによって病気が違ったり、脳出血であれば脳出血を起こした部分の大きさが違ったり、学歴などの色々な社会的な背景も関係してくるので、これは運動性失語症だとか、この型だとか、あの型だとか、失語症の全てがはっきり分かれるわけではないんですね。混ざっていたり、非常に軽かったり、その人その人によって違うので、一般的な話として知っていただきたいと思います。運動性の失語のかたでも、話すのは難しいけれども、いくらか書くことは出来るというかたもいらっしゃいます。軽いものから重いものまで差はあるということです。

二つ目のタイプとして「感覚性の失語症」というものがあります。感覚性というのは脳の後ろの方の、「言葉を聞いて理解する部分が」がおもに損傷されるというものです。話す言葉の数としては非常に多いのですが、聞いていて意味のある言葉というのは非常に少ないんです。流暢にたくさんのことを話すので、「なんだ、話せるじゃないか」という感じも受けるんですが、実は内容を聞いてみると、とてもわかりにくいという失語症で、こちらのタイプは聞いて理解すること、読んで理解することというのがおもに障害されます。運動性の失語と同様に程度の差があって、ひとりひとりの重症度は違ってきます。

三つ目のタイプとして「混合性の失語症」というのがありますが、「運動性の失語症」と「感覚性の失語症」が混ざった状態です。これも軽い程度から重い程度まであります。

四つ目が「全失語」といって、話す力、聞いて理解する力、字を書く力、字を読んで理解する力、そういう全般的な機能が全てにわたって落ちていて、失語症の中でも一番重いとされているタイプです。大きく分けて、この四つに分類されます。




前ページへ 次ページへ
本講演の1ページへ戻ります 「2.リハビリ教室講演録集」へ戻ります Home page(Top page)へ戻ります