先日、奈良市内で開かれた高松塚古墳の壁画劣化原因調査検討会で、文化庁が白虎の退色について2枚の写真を基に一つの見解を示した。劣化は80年12月から81年2月の約2カ月間に急速に進んだ可能性が高いというのだ。
写真の違いはわずかだが肉眼でも認識できる。当時の修理作業日誌には「線描が不明」との書き込みも見られ、カビ処置や薬剤塗布が壁画に何らかの影響を及ぼしていた可能性もある。
「作業と劣化の因果関係はわからない」というのが同庁の立場だが、今後の議論が担当者の責任のみを追及する方向には進んでほしくない。試行錯誤の結果責任を問われたら、誰が壁画を守ればいいのか。(林)
毎日新聞 2008年9月6日 地方版