「医療崩壊防ぐには予算必要」−病院経営シンポ
急性期医療を担う病院の将来について考えようと、田辺三菱製薬はこのほど、東京都内で「病院経営シンポジウム」を開催し、慶大の田中滋教授、埼玉県済生会栗橋病院の本田宏副院長、済生会熊本病院の正木義博副院長、全国社会保険協会連合会の伊藤雅治理事長、産業医科大の松田晋哉教授がそれぞれ講演した。「急性期医療を担う病院の今後をさぐる」というテーマのパネルディスカッションもあり、コーディネーターを務めた田中教授は「医療崩壊を防ぐには、適切な医療費が必要だ」と述べ、医療費削減政策に強い反対の姿勢を示した。
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「医療崩壊」について各地で講演している本田副院長は、「ある財務大臣はもっとぎりぎりまで医療費を削れると言っていたが、これ以上削ったらどうなるのか。米国の社会保障費は国家予算の半分だが、日本は23%にすぎない」と指摘した。
また、医師不足で経営が悪化し、9月末で運営休止する銚子市立総合病院の例を挙げ、「市役所の庁舎を残すために、市立病院をつぶしてしまっていいのだろうか」と疑問を投げ掛けた。その上で、「医療機関がなくなったら、そこには人が暮らせなくなってしまうが、医療機関ができれば、多くの雇用を生み出すことができる。東国原英夫宮崎県知事は宮崎県に道路が必要だと言っているが、道路よりも医療機関をつくるべきだ」と述べた。
フランス留学の経験を持つ松田教授は、「公的病院サービス」について説明した。フランスでは昼夜関係なく、すべての患者を受け入れる機能を果たす病院は、設置主体が官であろうと民であろうと関係なく同額の補助金を受けられるという。松田教授は「日本も設置主体が官や民という基準で分けるのではなく、“機能”で分けてほしい」と求めた。日本で問題になっている“深夜のコンビニ受診”についても触れ、「フランスは民間の救急サービスが充実しているので、日本のように救急車をタクシー代わりに使うことはない」と話した。
民間企業出身で病院の事務を担当している正木副院長は、病院経営を健全化するための人事評価制度について取り上げ、「医師や看護師の評価システムは、それぞれ医師同士や看護師同士で話し合ってつくってもらえばよいのではないか」と提案した。
医師の教育制度についても意見交換した。2つの大学で指導している松田教授は、「医学生の多くは、入学時は高い理想とモチベーションを持っており、それをいかに維持していくかが大事だ。臨床系の教員をもっと増やして、早い段階で臨床の現場を見せていく必要がある」と訴えた。本田副院長は「米国は、医療は最悪だが(医師の)教育制度は一番いい。メディカルスクールは教育効果が高い」と述べ、国内でのメディカルスクール設立を呼び掛けた。
ディスカッションの最後で、田中教授は「医療に従事している人間はここ10年で100万人増えているのに、医療費は増えないので、一人当たりの収入は減っている。『医療費を上げても、病院と医師の収入が増えるだけ』という(国民の)誤解を解く必要がある」と指摘した上で、「医療崩壊を防ぐには、適切な医療費が必要だ」と締めくくった。
更新:2008/09/11 12:00 キャリアブレイン
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