家西悟事務所 
 C型肝炎感染問題

 2000年12月1日号 フライデー

エィズ問題と同様「危険な非加熱製剤」を放置した
「薬害C型肝炎」200万患者を見捨てた厚生省の大罪

写真1 「厚生省は輸入非加熱製剤によって、エイズだけでなく、肝炎に感染する危険性があることをとうに承知したうえで、放置し続けたのです」
 怒りもあらわにこう語るのは、早くから肝炎問題に取り組んできた家西悟衆議院議貝(40・写真)だ。10月30日、静岡県内の大学生(20)が新生児のときに受けた腸の手術で非加熱製剤を投与され、C型肝炎に感染していたことが報じられた。血友病治療で血液製剤を投与された患者は、9割が肝炎に感染しているといわれてきた。だが、この大学生の一件以釆、血友病以外の治療でも、非加熱製剤が原因でC型肝炎に感染しているケースが相次いで報告され、大騒ぎになったのだ。
 C型肝炎はウイルス感染症の一種で、感染経路は血液だ。放置すれば肝硬変や、肝臓ガンに移行し、死にいたることもある。いまや肝炎患者数は全国に200万人以上、その大部分がC型といわれている。家西議員が続ける。
「厚生省は、薬害エイズのとき、血友病の治療以外で血液製剤を使われた患者の実態調査を行いました。このとき、騒がれていたエイズのほうだけ調査して、肝炎は放置したのです。早く知らせていれば、早期治療で病気の進行は防げた。厚生省は患者から治療の機会を奪ったんです。これは”薬害C型肝炎”ですよ」
 ’79年から’85年にかけて、輸入非加熱製剤は、血友病以外に出産や手術の際の止血剤などにも多用されるようになった。その際に感染していたとしても、感染者本人は気づいていない可能性か高い。
写真2  ようやく厚生省は、11月1日、肝炎対策チームを設けた。メンパーは13人の官僚だ。ところか、この対応に早くも批判が相次いでいる。
「メンパーの一人の中島正治(まさはる)血液対策課長(49)が『(感染者本人が)知らなければよかったという話もあります』と、とんでもない発言をしたんです」(家西議員)
 もうひとつの「薬害」を放置し続けた責任を問うべく、津島雄二厚生大臣(70)に取材を申し入れた。しかし、多忙を理由に、本人ではなく厚生省から次のような回答が返ってきただけだった。
「(薬害エイズの実態調査をしたとき、肝炎を調査しなかったのは)当時の緊急課題はHIVをどうするかということでしたので、重要性を考えてのことです」
 こうしたスレ違いの返答からは、およそ犯した罪への反省が感じられない。そこで、”問題発言”をした中島課長と、津島厚生大臣を直撃した。
 11月13日午前8時30分過ぎ、まず、自宅から出勤する中島課長に発言の真意を尋ねた。
「感染を知ったがために、就職などでの差別や家庭の中で孤立してしまったりということが考えられます。精神的なカウンセリングの仕組みもないまま知らせるのは、慎重になったほうかいいと」
−全国的に実態調査はするんですか。
「まあ、それも含めて専門の先生方にお聞きしてそれを尊重したいと思います」
−なぜいま突然取り組み出したのか。
「まあこの際だから、ということで……」
 続いて、午前11時過ぎ、自宅に迎えにきた黒塗りの車に乗り込む津島厚生大臣を直撃したが、
「お約束していませんから。じゃあ」
そう言い放つと、走り去ってしまった。
もっと早く取り組まなかったのは「エイズのほうが緊急かつ重大だったから」、騒がれて重い腰を上げても「実態調査と感染者への告知はやるかどうか決めていない」。いったい何のための対策チームなのだろうか。大阪HIV薬害訴訟原告団代表で、厚生省の血液行政アドバイザーも務める、花井十伍(じゅうご)氏(38)がいう。
「厚生省は患者を見殺しにするつもりです。200万肝炎患者は血液行政の失政が生んだのです」
 これでは当の感染者はたまらない。日本肝臓病患者団体協議会の高畠譲二事務局長(65)がいう。
「今回発端になった大学生は、厚生省はどうしてもっと早く知らせてくれなかったのか、と大きな怒りを感じています。彼はいま、同じような境遇の人たちと団結して行政に対して何らかの措置を考えているようです」
 高畠氏の元にはこれまでの6〜7倍の相談が寄せられているという。しかし、大臣や官僚たちの対応をみていると、国民に広かっている「薬害C型肝炎」の恐怖を厚生省が受け止める気かあるとは、とても思えないのである。