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【社説】

自民総裁選 皆がぼかす消費税上げ

2008年9月11日

 自民党総裁選が告示され、論戦が始まった。ライバル小沢民主党への痛烈な批判が続いたが、注目の「財源論争」は一様に歯切れが悪い。逃げの説明では判断がつかない。土俵際の危機感はあるか。

 共同記者会見に臨んだ五人が麻生太郎氏を中心にがっちり握手をかわす。福田康夫首相の退陣表明を受け、三年連続の自民版「秋の風物詩」の幕が開いた。

 本命は四戦目の麻生氏だ。世論調査では人気断トツ。国会議員や都道府県連からも幅広い支持を集める。前回と違って派閥横断型の支援体制を組む候補が多く、最大派閥の町村派は分裂含みの様相。ただ後継レースそのものは「一強四弱」というのが下馬評だ。

 「十月衆院解散」が与党内で有力視される中での総裁選である。自民支持率が上がったとはいえ民主党と拮抗(きっこう)していることには変わりはない。そんな現実が無投票三選を決めた小沢一郎民主代表を総裁選の「陰の主役」としている。

 麻生氏は小沢氏の政権構想に触れ「財源の話がなかった。責任政党としては無責任だ」と切り捨てた。小沢氏の政治手法を、相談、説明、説得をしないとも指摘。四候補も小沢氏批判に余念がなかった。質問に答えたものだが、熱の入りようは与党の後継総裁選びとしては異様に映った。

 論戦の焦点は経済・財政政策とされる。私たちの関心は将来世代にツケを残すことなく「不安のない暮らし」をいかに手にするかにある。突き詰めれば、財源問題をどう考えるかだ。

 来年度の基礎年金の「国庫負担二分の一」方針をめぐり、全員が堅持を明言した。だが財源で麻生氏は「埋蔵金」活用の言及にとどめ、消費税上げも「今すぐはいかがか」とかわした。消費税率10%が持論の与謝野馨氏は「安定財源は消費税しかない」と強調したが、時期、上げ幅は示さなかった。

 自民は公明党の要求する定額減税をのんだ。その財源でも納得できる見解を示してもらわないと、小沢構想批判も天につばするものになる。肝心な部分に口をつぐむような論戦では迫力に欠ける。違いも分からない。自分たちを責任政党というなら、具体論で国民に語りかけるべきだ。

 にぎやかな総裁選で自民が注目を集めるが、国民の視線は温かくはない。二代続けての首相の政権投げ出しの総括も不十分だ。お祭り騒ぎに浮かれるだけでは、下野への道をひた走ることになる。

 

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