福田康夫首相の後継を選ぶ自民党総裁選挙が10日告示され、麻生太郎幹事長ら5人が立候補した。すでに民主党は小沢一郎代表の無投票3選が確定しており、次期総裁は来るべき総選挙で小沢民主党との決戦に臨む使命を担う。秋の臨時国会冒頭の解散の流れが強まっており、総裁選告示とともに総選挙へのカウントダウンが始まった。
衆院解散・総選挙が近づく中で行われる今回の総裁選は「総選挙を戦う自民党の顔」を選ぶ選挙である。各種の世論調査で次の首相に誰がふさわしいかを尋ねると麻生氏が断トツの1位であり、小沢民主党代表も大きく引き離している。人気の高い麻生氏が総裁選の本命候補として優位な立場で戦いを進めていくとみられる。
今回の総裁選のもう1つの意義は総選挙に向けた自民党のマニフェスト(政権公約)づくりの重要なステップになるということである。自民党内には景気重視派、財政再建派、上げ潮派など、さまざまな政策的主張がある。総裁選で活発な政策論争を行い、総裁選が終われば、勝った候補者の政策を軸に有権者にわかりやすい、責任あるマニフェストを早急に提示する必要がある。
麻生氏は景気重視派の代表格であり、その政策では「日本経済は全治3年、短期集中・重点特化型の立て直し」を掲げている。具体的には定額減税、政策減税などを挙げているが、目玉としては小粒だ。年金改革では「安定的な年金財源を確保するため、国民的議論を進めます」という表現にとどまっている。
このほかでも「財政再建路線を守りつつ、弾力的に対応します」とか「歳出の徹底削減と景気回復を経て未来を準備する税制をつくります」などと慎重な表現が少なくない。麻生氏の持ち味は歯切れのよい言葉である。政策論争を通じて具体化や肉付けをしていくべきだろう。
財政再建派の代表格である与謝野馨氏は消費税引き上げの必要性を訴えているが、税率や導入時期は不明確だ。初めての女性候補者となった小池百合子氏は上げ潮派に属し、改革路線の堅持を主張する。石破茂氏と石原伸晃氏も出馬して総裁選は5人の候補者で争われる。
にぎやかな総裁選になったが、にぎやかなだけで政策論争の中身は薄いといわれるようでは困る。各候補はもっと具体的な政策を出し合って有権者を引き付ける努力をすべきである。外交・安全保障政策も含めて民主党との違いを鮮明にすることが大事である。