2008-09-11
■わたしのお父さん
わたしのお父さんは、三年くらい前から日本に住んでいて、わたしはずっとサウジアラビアに住んでいたのですが、今年からようやく、いっしょに住めることになり、こちらにひっこしをしてきました。四月からは、日本の小がっ校にかよっています。わたしは二年せいです。おんなの子です。
日本はちょうたのしいところだとおもう。つぶつぶいちごポッキーはおいしいし、でん車の中は冷ぼうがきいててすずしいし、プールで、もがもがもぐぐをするとおもしろいから。友だちは、ななちゃんとまきちゃんです。他にも友だちはいるけど、いちばんなかよしなのはこのふたり。ちなみに、もがもがもぐぐは、ななちゃんのかんがえたあそびで、三人でいっせいにプールにもぐってから、だれかひとりが「起しょう転けつ!」とか、「しゅっ発しん行!」とかのむずかしいことばを水の中でさけんで(なるべくむずかしいことばがよい)、でも水の中だから、「もがもがもぐぐ」としかきこえないんだけど、のこりのふたりは、ちゅう意をして声をきいて、なにをいったかを予そうしてあてるゲームです。
そうしてわたしが、スターをとったマリオみたいに活どう的になり、大まん足の日びをすごしているにもかかわらず、お父さんはいえでひっそりとくらしています。たまにしか外しゅつをしません。それはなぜかというと、ここだけの話ですが、お父さんがいぜんにすごくわるいことをしたからです。まだわたしがお母さんのおなかの中にいた七年前に、ちょうわるいことをして、けい察とか、軍たいとかに追いかけられて、にげてにげて、こっそり日本にきて、せ田がや区に住むことになったのです。
どのくらいわるいことをしたかというと、たとえば誰かが「お父さんがここにいますよー」とつげ口しただけで、せかい中のけい察がさっそくきん急しゅつ動! お父さんをたいほしてしまうくらいです。あ、ちなみに「きん急しゅつ動」はもがもがもぐぐで使えそうなことばだからこんどやってみるわね。わたしは、ななちゃんとまきちゃんにだけ、お父さんは犯ざいしゃだと、こく白したんだけど、ななちゃんは、犯ざいしゃのむすめなんてしぶいじゃーん、あたしそういうのすきよ、といってくれたし、まきちゃんも、わたしのお父さんも前かいっ犯だから心ぱいしないでね、となぐさめてくれました。
お父さんはたまに、七年前のことを、せつ明してくれる。「ほんとうにわるいことをすると、ちょうわるいことをすると、ちょうちょうわるいことをすると、あんまりにもわるすぎて、もう誰も、そのことにたいして、しかったり、ばつをあたえたりできなくなるんだよ。それはとてもこまったことだ」とお父さんはいった。わたしはなんだか不あんな気持ちになり、「それってちょうやばいじゃん!」とさけんだ。お父さんはかなしそうな顔をしてうなずき、「だからおまえも、ビルに飛こう機をぶつけたりしたらだめだ」といった。「お父さんはぶつけたの?」とわたしはきいた。「ぶつけた。二れん続でぶつけた」とお父さんはこたえた。ちょっとのあいだだけ、いやーな沈もくがおとずれた。わたしはこの沈もくがすごくきらいだ。このおはなしのきょう訓は、「むかっとくることがあっても、ぼう力をふるわず、できるだけがまんするべし」ということ。
えーっと、書きわすれたけど、わたしとお父さんは、せ田がや区にいる、しんせつな同きょ人さんにおせわをしてもらっている。今は三人でくらしているのです。同きょ人さんは、ごはんを作ってくれたり、つぶつぶいちごポッキーを買ってきてくれたりしてやさしいけど、お父さんのひげが伸びると、あくまの顔になっておこり、「ラーちゃん、ひげそって」という。なんと、お父さんのひげが伸びると、すごくやばいことがおこるらしいのです。同きょ人さんは、「お父さんのひげが伸びたら、ぜっ対ぜつ命だぜ」といっている。せかい中の人たちがお父さんをさがしているのだ。あ、そういえば、「ぜっ対ぜつ命」も、もがもがもぐぐで使えそうだから、つぎにはためしてみるね。おわり。
二年一くみ たかこ B L