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20代後半の、妊娠初期の患者さんがいらっしゃいました。
診察すると、子宮の中に10数mmの小さな赤ちゃんがいます。
しかし、どうも浮かないご様子です。
気になって、患者さんの言葉を待っていると
「今回はあきらめようと思いまして・・・」
「・・・そうですか。それは、パートナーの方とよく話し合った結果ですか?」
「話し合って、彼は生んでほしいと言っているのですが・・・」
ここで、言葉が途切れます。
その日は、妊娠は間違いないこと、考える猶予はまだあることをお話して
診察を終えました。
数日後、再診にいらっしゃいました。
やはり今回はあきらめます、と言いながらも、今にも泣き出しそうなご様子。
お話をお聞きしたら、彼とは2人で育てて行こうと決めたのですが、
ご両親が、彼の職業を理由に反対なさっているのだそうです。
でも、2人とも20歳をとうに超えているし、
親と縁を切ってでも生んで育てたい、と思う一方で、
両親に大反対されてまで生まれた子が、幸せになれるのだろうか、
という思いも、ぬぐい切れません。
ご両親は、大丈夫、すぐに次の子ができるから、と言っているそうですが・・・
どんな手術でも、100%絶対に成功する手術は存在しません。
中絶手術でも、1000件に1件くらい子宮穿孔が起きますし、
術中の大量出血、子宮内腔癒着など、
今後の妊娠に影響する危険性も、皆無ではありません。
何故、我が子が選択した幸せを信じないのか。
中絶手術に伴う危険を冒し、心に傷を負わせ、
それでも親の選択が正しいのだ、と信じて疑わない自信に、
ただ、圧倒されます。
しかし、親子関係は様々で、本人同士にしかわかり得ないものがあります。
患者さん本人が悩んだ末辿り着いた、ひとまずの結論です。
却って混乱させるようなことは、言えません。
でもでも、大反対を押し切ってお産をしたら、
赤ちゃんを見た途端、骨抜きになった、という例は本当にあります。
いいえ、私は医師なんだから、
あくまでも医学的なアドバイスだけをすべきだろう、
あまり個人的な考えを述べるのは、控えなくては・・・
でも、私は医師だ。治療マシーンじゃない。
人間味があったって、いいじゃない。
医師も、迷います。
「ご両親は、リスクのこともご承知の上で、そうおっしゃっているのですか」
この問いには、言葉に詰まっていました。
結局、結論は先に持ち越されました。
最終的に患者さんがどのような選択をしても、支持するのが、
産婦人科医の仕事であると思っています。
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コメント
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恐らく、まだお若いし、そう考えるのかもしれませんが・・・ちょっと、こういう考え方は怖いな、と思いました。
若い妊婦さんでも、何があるかわからない。次は、無事に妊娠できるかわからない。だから、今回授かった命を大切にしてほしいと(個人的にはね)そう、思います。
仮に、お母さんの体に異変がなく、それなりの時期に次の子ができたとしても・・最初の子供だって次の子だって同じ尊い命のはず・・私は3人の子供の母で、皆個性が違いますが誰一人いらない子はいません。
親御さんが大切な目の前の娘さんとおなじ命に対しそんな言葉をかける事にも一人の母親として悲しさを覚えます。
ちょっとコンビニに出かけてきました。その帰り、私より少し年下くらいの作業服のおじさんが、携帯電話で大声で会話しています。娘さんを諭しているようです。
「相手がどんな男であれ、お前にこどもができたということは、慶ぶべきことじゃろう!」と力が入っていました。
患者が適切な判断をできるように、というのは理想ですが、実際にはなかなか難しいですね。ただ、それぞれの選択によっては命を落とすこともある、と伝えておくことは大切ですね。
何気ない場所でのふとした風景に、いろいろと考えさせられることも多く、問題解決の糸口を当事者がつかむことも少なくはないですね。
時折先生のブログを拝見しているナースです。
いつも患者さんのことを本当に大切に思っておられるお姿には感銘を受けております。
私も彼の仕事(経済面)を理由に両親に大反対され、交際を諦めた経験があります。一年以上は頑張ってお付き合いをしていたのですが、執拗な母の電話や手紙攻撃(母もたぶん一種病んでいたのではないかと疑うくらいの執拗さ)に精神的に参ってしまい、嫌いではなかったのに別れました。
ただ、その当時私が心に決めていたことがひとつ。
それは絶対に妊娠しない、させない、ということです。
私の両親の性格上、私に子供が出来たらきっと結婚を許さざるを得ないでしょう。でも私は、そのような展開にはしたくなかった。何の罪もない小さな命には、祝福して生まれてきて欲しかったからです。
患者さんのご両親の発言も、確かに悲しい一言だと思いますが、両親に反対されていることを気になさって不安に思っている彼女だからこそ、妊娠するということをきちんと考えて行動して欲しかったなと思ってしまいました。またそのような状況にいる彼女を持つ彼氏だって、彼女を大事に思うなら、新しい命が宿ることの重みをもっと考えて行動してほしかった。
私も命の現場で働く者の一人だからこんな風に説教じみて思ってしまうのでしょうか?
でも、それだけ「命」って重いものだと感じています。
きっと彼女は先生がこんなにも心を痛めていること、知らないんだろうな。
長々と失礼しました。
どうか状況が許し、尊い命が祝福して生まれますように!
いつも先生のブログで勉強させていただいてます。
私は元看護師で、現在ドイツ在住です。こちらで看護師免許を取得するために勉強中です。
ついきのう、彼氏と妊娠についての話をしたところです。
彼氏はドイツ人ですが、私たちはまだ学生と言う立場なので妊娠するわけにはいきません。 以前、もし万が一妊娠したらと言う話をしましたが、そのときは私が「日本に帰って産む」という話をしました。中絶は選択にありません。
しかし、もちろん望まない妊娠になるし、私は妊娠したと分かったときは心から喜びたいし、家族にも祝福されたいと思っています。 そのため二人で話し合って今月からピルを飲んでいます。
ドイツでは中絶は3ヶ月まで、中絶前にカウンセリングを受けなければならないそうです。 以前見た、世界の20歳以下の妊娠率と中絶率の表では、ドイツは圧倒的に数が少ないです。 私としてはカウンセリングの結果かと思っていましたが、彼によると3ヶ月までに気づかない人も多いようで、それでも中絶したい人はオランダに行くそうです。 もちろんいろんな面で難しいことはあるそうですが、不可能なことではないそうです。
ただ、なな先生の書いておられる女性の件では、カウンセリングはとても役立つのではないかと思いました。 迷っている彼女に、専門家の助けが入ることはとても大きい気がしました。
彼女が幸せになれることを祈っています。
>『すぐに、次の子ができるから』
私も、この言葉がとてもひっかかりました。
お嬢さんの不安を取り除くために言った言葉だと思いますが、
こう言われて、ご本人はどう思うでしょう。
やはり不安だから、産婦人科医の前でこぼしたのではないかな、
そんな気がしてなりません。
本音は、私もazukiさんと同じ気持ちです(笑)
3人のお子さんのお母様ならではの、お気持ちの篭ったコメントです。
このまま手術に踏み切ったとしても、患者さんにとってこの命は
一生痛みを持って忘れることのできない命になるのに。
悲しいことですね。
先生は、その時ごとの身の回りのお話を織り交ぜてコメントを下さるので、
なんだかメールでやり取りをしているような気持ちになります(笑)。
いけてる作業服のおじさんです!
親御さんの姿勢は、こうも違うものなのですね。
患者さんが適切な判断をできるように援助するのは、簡単そうでとても難しいことだと思います。
特に中絶手術の場合は、考える時間が限られています。
本来だったらこのケースの場合、ご両親にも手術に伴うリスクについて説明したいところですが、
それも叶わずにいます。
限られた時間の中で、若い2人が少しでも良い選択ができるよう、
力を添えて行こうと思っています。
私は2人の女の子の父親ですが、実はその子達が生まれる前に1人流産しております。そのことは私たち夫婦にとっては、未だに忘れることの出来ない悲しみであり、深い傷として残っております。だから、中絶なんかはまったく持って、やる人の気が知れません。もちろん、経済的な問題はあるかもしれませんが、やはりそれは避妊をしなかったことに問題があるわけで、出来てしまった以上、親としての責任として、生んだ子供をいかに幸せに育ててあげるかということを考えていくべきだと思います。
今回の患者さんですが、私はぜひ、生んであげてほしいと思います。やはりせっかく芽生えた命です。K&R先生のコメントにあったおじさんの言うとおりだと思います。私も嫁さんの母親には反対されての結婚でしたが(未だに嫌われてるかも・・・)、子供たちが生まれてからは、関係は良好になっていると思ってます。キット子供が生まれたら、この患者さんの両親もかわると思いますよ。後はご主人も変わるべきかも知れませんけど。
それと、『すぐに次の子が出来るから。。。』という言葉は我々ももらいましたが、あまり気休めにはならなかったことも最後に書いておきます。この患者さんは生みたいという気持ちがあるようなので、ぜひ、生んでほしいなあ。
まとまりのないコメントで申し訳ありませんでした。
私も3人の子の母で、1人流産しています。
妊娠を知ったときの喜びのあとに、子を失う悲しみは
体の変化を伴う女性にとっては本当に辛いものです。
それが、染色体異常による流産であっても、
仕方ないとわりきれるものではありません。
なのに、中絶。。。
彼女の気持ちに寄り添えば、かける言葉も見つかりません。
彼女が産むことを選べるように、安産の神さまにお願いしたいです。
実は全てのエントリーを読ませて頂いています♪
今回初めてコメントします。
親にとって子供って幾つになってもイチバン大事な存在だから、どうしても子供のことを案じて転ばぬ先の杖って選択をしてしまいがち。
それが結果的に正解でも不正解でも子供にとっては迷惑なことだったりするのではないかしら。
きっと昔はあきらめなきゃいけない命が、今よりずっとずっとあったのではないでしょうか。
だから傷つく子供になんとか楽になって欲しくて、「すぐに、次の子ができるから」って励ますのではないでしょうか。
それが不器用で的外れな励ましかもしれませんが。
幸せに生きていれば傷は薄れます。
いつまでもひきずっていることが美徳ではないと云ってあげられる親御さんは、ある意味とっても理解があると思います。
とってもお忙しいはずなのに、患者さんの事情に深く想いを馳せておられるなな先生を心から尊敬します。
それにしても、お腹の赤ちゃんに暖かい眼差しを向けているのが、お母さんでもおじいちゃんおばあちゃんでもなく、産婦人科の先生だなんて・・・。「すぐに、次の子ができるから」って言ったって、その子の命はその子だけのものなのに。私が代わりに産んで育ててあげたいぐらいです。理不尽ですね。
切ないご体験をなさいましたね。
そんな中で「妊娠はしない」とお決めになっていたことは、
苦しいながらも善い選択だったのではないでしょうか。
何よりも、ご本人がその選択をご納得されていることが大切です。
それに、お母様思いですね。
この患者さんにとって、ご両親の大反対が予想されたことなのかどうかは、わかりません。
また、これは患者さんのお話ではありませんが、ご両親の反対にあって、絶縁覚悟で妊娠に至ったら、
状況ががらりと変わったという人もいました。
人は様々だし、何がどう転ぶか、わかりませんね。
>尊い命が祝福して生まれますように!
「祝福して」のひと言に、明るいやさしさを感じます(笑)
ドイツで勉強中の看護師さんですか。
世の中、活躍中の女性はいっぱいいるんですね。
改めて憧れを感じます。
ドイツの中絶に伴うカウンセリングのシステム、大変参考になりました。
中絶に関するケアは、日本では全く手付かずの領域です。
ああ、課題は山積み(苦笑)
この患者さんにも、本来はカウンセリング的ケアが是非とも必要でしょう。
彼女は、既に深く傷ついています。
今後受ける傷を最小限に抑え、より善い選択ができるよう、
エンパワーメントしていくのが、せめてもの力添えであると思っています。
彼氏とお幸せに、そして実りある学生生活をお送りになりますように。
産婦人科をまわっていたときに、外来にいらしたかたが妊娠を告げられて、既に子どもが3人いるので今回はおろしたいっておっしゃったんです。
実は未婚のかたよりこういうケースが多いみたいですね。
経済的にもう一人は無理だからって。
すると教授が3人の子がいるなら赤ちゃんがどれほど可愛いか判ってるでしょうって説得をはじめたんです。
自分にも孫がいてまだ赤ちゃんでそりゃ~かわいいなんてことまで言い出して一生懸命に中絶をやめるように説得するんです。
学生ながらに初診のそのかたの背景や人柄が判らないのにひたすら産みなさいって言うのは無謀だなと思いながらも、この先生いいなあって思いました。
何十年も産婦人科をやってきて、中絶希望のかたなんて星の数ほど経験なさっているだろうに。
残念ながらその後のことは知りません。
大学では経済的理由での中絶はやってないので、よそにいらしたのかもしれません。
この話で教授を懐かしく思い出しました。
率直なお言葉に、心打たれます。
また、ご体験を踏まえてのコメント、とても胸に迫りました。
>出来てしまった以上
そう、そうなんですよ。
愛し合う若い2人の間にできた、命です。
ご両親が2人を傷つけ、特にかわいい愛娘を傷つけてまで守りたいものは何なのか、
どうも思い浮かびません。
しかし、医療者としての援助は大変難しいですね。
「最終的な決定権は、あなたにあるのですよ」と言ってあげたいのですが、
却って彼女を追い詰めたりしないかと思うと、なかなか言えずにいます。
医療者でなければ、相手の男性に「彼女をさらって行って!」という暴論を投げ・・・
いえ、独り言です。
私も流産を経験していますので、お気持ち、よくわかります。
>彼女の気持ちに寄り添えば、かける言葉も見つかりません。
彼女の気持ちを真剣に考えると、そうなりますよね。
ここのコメント欄、やさしい女性が多いのですが、
rinyuさんもまた、やさしい女性です。
もしかしたら、誰かに止めてほしいのかも知れない。
そんな気も、少しするのです。
最初からお読み下さっているのですか。
感激です。
なるほど・・・
私、親の立場ではありませんので、この件についてはどうも「理解の壁」を感じていました。
もしかしたら、先生のおっしゃるようなものだったのかも知れません。
>どうしても子供のことを案じて転ばぬ先の杖って選択をしてしまいがち。
これには、何だか納得です。
親御さんが反対される根っこがどこにあるのか、ちょっとだけわかったような気がします。
でも・・・
>「すぐに、次の子ができるから」
これはやっぱり、中絶手術をした後に言うべき言葉ではないかと。
この親御さん、「すぐに次の子ができるから、だから中絶したって大丈夫」
という持って行き方をしているようです。
日ごろ手術のリスクを口を酸っぱくして説いている産婦人科医としては、
どうしても容認しがたく感じてしまいました。
もし、中絶という選択を取ったならば、
「いつまでもひきずっていることが美徳ではない」
と、是非言ってあげてほしいと思います。
お褒めのひと言、ありがとうございます。
コメントの最後のひと言、「理不尽ですね」、
なんだか、私もとってもそう思うのです。
子供の人生を決めたがる親は、決して珍しくはないですが、
この件に関しては、激しく理不尽さを感じるのです。
お腹の子のお母さんは、その子に向ける視線をどう定めていいのかわからず、悩んでいるようです。
「両親が反対するから、あきらめようか」ではなく
「両親の反対の下で生まれて、この子が幸せになれるだろうか」
ですから。
切ないですね・・・
すごい教授です!(笑)
先生もおっしゃる通り、中絶希望の患者さんに何人接してきたかわからないご経験をお持ちの方でしょう。
ですから、説得するのがどういうことかも、当然ご存知のはずです。
昔はそういう、人間味あふれる医療が許されたんですよね。
いいなぁ。私も真似したいなぁ・・・
旧き佳きお話を、ありがとうございました。
私は大学の授業でこの患者さんのような症例を多く扱っている女医さんの書記を読みました。
その女医さんは患者さんのことを考えて試行錯誤され両親やパートナーと話し合って説教をガンガン言い、説得されていました。
この女医さんの考え方が必ずしもいいとは思いませんし、悪いとも思いません。
なな先生のこの記事を読んで、
医療者も一人の人間で、様々なポリシーを持って現場に立っているのだと再確認しました。
その患者さんが満足される結果になることを祈ります。
11年目の産婦人科医のくろすけ(女)と申します。
人工妊娠中絶は、どんな事情があろうと、人一人の命を奪う行為です。
殺人です。
そして、なな先生もおっしゃっている通り、日本では中絶が出来る期限があります。
今回あげられた方とは事情が違いますが、
私が出会った患者さんの中に、15週で全前脳胞症(単眼症の全前脳胞症だったようです)と診断され、中絶された方がいらっしゃいました。
私がその方と出会ったのは、その方が中絶された半年後、でした。
無月経のため外来受診されたのでした。やせ細って、鬱病を患ってらっしゃって、妊娠を希望されていらっしゃったのでした。
15週で、重症の胎児奇形と診断され、中絶したけれど、もし、その子を産んでいたらその子はどんな状態になったのか、本当に生きられない子だったのかと、質問されました。あのときは周囲の家族にも説得され中絶を選択したけれど、中絶をした後、その子を殺してしまったという後悔の念に堪えきれず鬱病になってしまわれたそうです。
そして、もし次妊娠したら、たとえどんなに重症でも、目を開けることも言葉を発することも生きて病院を出ることも出来なくても、たとえ数分しか生きられないと分かっていても産みたい。殺すのではなく、ちゃんと産んであげたいと、泣いておっしゃっていました。
人工妊娠中絶は、ドラマでも出てきて、皆さん結構簡単に考えていらっしゃると思います。
でも、やっぱり殺人なんです。
「すぐ次妊娠できる」としても、殺したその同じ子供は二度と生まれてくることはありません。
そして、たとえ自ら望んで中絶したとしても、心に大きな傷を残す場合があります。
人を思いやれる、優しい人であればなおさら。
私たちは産むことを強制することは出来ませんが、もし、パートナーの方が望んでおられるのであれば余計に、せっかくの生まれた(宿った)新しい命を殺すのではなく、はぐくみ育てることで道を切り開いていってほしいと、私は願います。
結局、どういう選択をすれば正しかったのか、どういう選択をすれば間違いだったのか、いつも分かりません。
手術のリスクだ倫理だという問題だけでは済みません。
産めばすべてOK・・・なんてこともありません。
結局誰が育てる、この子をどうする、ともめにもめて挙句の果てには乳児院行きというのはこれまでに何件もありました。虐待で警察沙汰というのもありました。
性行為というものはあくまで生殖のための行為であることがあまりにも置き去りにされています。
男性も女性もあまりにもお互い・自分自身を大事にしなさ過ぎます。
マリア様でもあるまいし、することをしないで妊娠することはあり得ないのです。産む覚悟も育てる覚悟もないのに、正しい情報もないまますることだけはする・・・その結果が望まない妊娠です(中には暴行によるものもありますが・・・)。
無事に産んで欲しい・生まれて欲しいと心を砕いて診療することもあれば、この手でご丁寧にも胎児を殺して差し上げていることもあるのが私たち産婦人科医です。私も毎日のように葛藤しています。
中絶はとても難しい問題ですが、私としては、出産することを決めて、無事に産んでほしいと心から願います。一つとして同じ命はありません。障害児医療をしていると、お腹にいたころから、異常が見つかり、反対されながらも、家族で話し合い、産んで幸せにくらしている患者さんも沢山います。もちろん、生きていくなかで大変なことは沢山ありますが、この子がいてくれたおかげで家族の絆が強まったという話は時々聞きます。反対されながらも産んで、子供を立派に育てているシングル+ヤンママもいます。中絶しようか迷った挙句、産んで虐待で警察沙汰になるというケースも確かにありますが・・・。悲しいことですね。いろいろなケースがあり、難しいことがあるのもわかりますが、すべての胎児、子供が母親の愛のもとに幸せに生きていけるよう願っています。
おっしゃる通りですね。
中絶を思い留まるように説得することは、必ずしも良いこととは限りません。
大切なのは、中絶=悪、説得=善と単純に考えないことでしょう。
患者さんにはそれぞれの背景があって、医師にも様々なポリシーがあって、
偶然向き合った両者が、患者さんにとって良い方向に動いてくれるのが、最優先の目標なのでしょう。
おはようございます。
K&R先生のコメントのおじさん・・・素敵なお父さんですね。
私も子供が転ばないように杖をたくさん準備してきたように思います。
子供のがっかりする姿を見ることが・・・”親である自分がつらい”のですよね。
そして、自分の価値観をそっくり子供に植え付けてしまい、反省をすることがよくあります。
この女性・・・ご自分のお気持ちや愛する人の言葉よりも親の言葉を優先してしまうのですね。
後に後悔が出てきますよね。
愛する男性がしっかり支えてそして精神的な親離れをしてもいいのかなと思います。
追っかけに?なってるかもしれませんね(笑)
愛するもの同士に宿った命を大切に思えば、育てたいと思えないでしょうか
なかには、どんなに愛しあっていても授からないこともあります。
テレビで時々、生れたての赤ちゃんを見たり、新生児室での赤ちゃんのあくびや手を口にもっていったり、寝ていたりする色々な表情を見ると、小さな命の尊さを感じます。
授かった命には、魂があるということを見てほしいと思います。
何かのきっかけで、気持ちが変わることはないでしょうか
いや、変わってくれたらいいな〜と思わずにいられません。
最近大きな悲しみを経験した私がいろいろなサイトを
歩き続けようやくなな先生のブログにたどり着くことが
できました。
日々のお仕事お疲れ様です。
産婦人科医のお仕事、大変ですがとてもすてきですね。
いきなりぶしつけな質問でごめんなさい。
先生は、結合双胎をごらんになった経験はありますでしょうか。
実は6/10に27週で結合双胎を死産しました。
分離はできないような状態でいつまで私のお腹の中で
生きていられるかわからない。羊水も多い。などの
理由から人工死産となりました。
今でも生まれる直前まで私のお腹を蹴っていた子供達の
ことがリアルに思い浮かんで忘れることができません。
もっとお腹の中にいたかったんだろうかと思うと
私の決断は間違っていたんではないだろうかと。
答えのでない質問ばかり自分にしてしまっています。
そして同じような経験をした方とお話したいと思っても
ネット内での結合双胎の情報が少なすぎて孤独感で
いっぱいです。
あの子達はもういないのに自分はお腹はすくし眠くなるし
普通に生きているのが苦しくなることもあります。
どうかなな先生、結合双胎について知っていることがあれば
教えて下さい。私は私のせいであの子達があんな運命を
背負うことになったのか知りたいのです。
初めてのコメントで自分のことばっかり話してしまって
ごめんなさい。
またゆっくりとなな先生のブログ読ませて頂きます。
今回の記事、いろいろなことを考えさせられました。
それぞれの人の、それぞれの立場での考え方があって、どれもわかるような気がしてしまうからです。
私は、上の子を妊娠したとき、手放しで喜べませんでした。
現在の夫である彼はまだ学生でした。
妊娠したことがわかって、一人で考える時間があればあるほど、どんどんあきらめなければならないと考えてしまっていました。
誰かが産むことを躊躇することを私に言っていたら、上の子の命はなかったかもしれません。
それくらい、思いつめていました。
彼に事実を伝えた時に、あまりにもあっさりと産むことを考えてくれたことを今でも感謝しています。
でも、産むことができた今でも、妊娠したときに、喜んであげられなかったことが、ずっと心にひっかかっています。
ふと思い出すと、申し訳ない気持ちでいっぱいになるのです。
なな先生のように、患者さんの気持ちに寄り添ってくださるお医者さんがいらっしゃるだけで、救われる方はたくさんいらっしゃると思います。
妊婦さんが、笑顔でいられる選択と結果となりますよう、心から祈るばかりです。
知識の不足が利害の衝突を産むこともあるし、感情の衝突が誤解を拡大させることもありますね。オプ・ジンのドクターは癌治療と並んで、患者と家族の感情の板挟みになりやすい状況にあると思います。
それでも応援していますよ。患者の人生のために迷ったり悩んだりしてくれる医師の存在は、自分が病気になった時にこれ以上ないほどの援軍に見えますから。
心に迫るお話を教えて下さいまして、ありがとうございます。
何人、先生の患者さんになされたのと同じような説明をして、terminationして来たでしょう。
その後、患者さんたちはどんな思いをしていらっしゃったのでしょう。
考えると、言葉もありません。
法的にも医学的にも、先生のお話の患者さんの行為は、決して殺人ではありません。
しかし、あくまで「法的・医学的には」です。
自責の念に苦しむこの方にとっては、法も医学も無意味なのでしょう。
自責の念に悩むご自分ごといつか受け入れ、苦しみが少しでも癒えていくことを
祈ってやみません。
最近、先生とはあちこちで共感していますが(笑)、
中絶に関する葛藤もまた、同じなのですね。
人工妊娠中絶は、グレーゾーンが多く、矛盾に満ちたものなのだと思います。
そもそも妊娠初期の待機というものが、
ある人にとっては命に代えても守りたいものであったり、
またある人にとっては望まないものだったりします。
我々産婦人科医は、一人の生命を助けるのに壮絶な思いをしたかと思えば、
ひとつの生命を絶つのに手を下したりします。
真剣に考えると、何もできなくなってしまうので、
あまり考えないようにしている、というのが本音なのかも知れませんね。
障害児医療に携わっている方ならではのお話です。
迷った後産んで、警察沙汰になることも確かにあるのでしょう。
さらにその後、素晴らしい里親に出会って幸せに暮らしている子供達もいます。
もちろんその影には、そうではない子供もいるのでしょうけれど・・・。
ともあれ、この例の場合は特に、当事者同士の気持ちを最優先したいところです。
産むにしても産まないにしても、その決断がもたらすものを引き受けるのは両親ではない、
当事者の2人なのですから。
娘さんには、「生まれた子が、幸せになれるのだろうか」と悩むより、勇気を持って、自分自身に正直になって、正しいと思う道を選択してほしいと願います。
子どもを授かるのに、最適のタイミングなんてないと思います。私も、二人目を産むのは、もう少し育児に余裕ができてからにしよう・・・と考えて先延ばしにしていたら、もう出産には無理な年齢に達してしまいました。(この年齢でも出産される方はいますが。)
今回、患者さんに対してもここのコメント欄でも、つい遠慮がちになるのは(これでも笑)、
やはり私自身が親になった経験がないためだと思うのです。
私の両親もまた、私の知らない間に、杖をたくさん準備してくれていたのかも知れません。
親の心子知らず、ですね。
この患者さん、その後生むことにお決めになりました。
「反対していたご両親が、赤ちゃんに会った途端に夢中になった、なんていうこともあるんですよ」
とお話したら、
「ええっ、そうなんですか?」と、そんな例があることも知らない、若い2人です。
私にできることなどごく僅かですが、精一杯、支えて行きます。
>授かった命には、魂があるということを見てほしいと思います。
本当に、そう思います。
方針が決まらないうちは、子宮内の映像をお見せしないでおきました。
もし中絶という選択をした場合、辛い思いを増幅させてしまう可能性があるからです。
生むことに決めたので、初めて赤ちゃんを見てもらいました。
子宮の中で、動いていました。
魂があるのを、感じてくれたと思います。
大変丁寧なコメントを、ありがとうございます。
お産から、10日足らずなのですか。
大きな悲しみ、お察しするに余りあるのですが・・・
ごめんなさい、ここは「つぶやきの場」に留めておきたいのです。
医学的なアドバイスは、ここには書けないので
ブログの方にメッセージをお送りしました。
素敵なだんな様ですね(笑)。
でも、真剣に考えるからこそ、手放しで喜べないということもあると思います。
今は幸せにしているご家族のママのお話ですが、一人目の妊娠が発覚した時、
当時の彼(現在のご主人)に妊娠を告げたら、まず困ったような顔をした、ということが
20年近くたった今でも、心に刺さっているのだそうです。
今はとても子煩悩なパパになっています。
上のコメントに書いたように、お話の患者さんは生むことを選択して下さいました。
ご本人にとって良い選択となるように、援助を続けます。
>知識の不足が利害の衝突を産むこともあるし、感情の衝突が誤解を拡大させることもありますね。
とても客観的に表現して下さいました。頭の整理がつきます。
このブログが全然売れていなかった頃から
(いえ、今だって1円にもなっていませんから、売れているわけではありませんが)
応援して下さっているhirataさんの心あるメッセージです。
当初よりさらに医療崩壊が進んでしまった今、より温かく胸に響くようです。
ありがとうございます。
>人間の基本的な尊厳が忘れ去られているように思います。
なるほど・・・また違った角度からのご意見、ありがとうございます。
「親の反対で中絶」ということに、言い知れない理不尽さを感じていましたが、
これはmomokaさんのおっしゃるような「人間の基本的尊厳」に関わる問題なのだと思います。
>子どもを授かるのに、最適のタイミングなんてないと思います。
そう思います。
あるとしても、その人ごとに違うものなのでしょう。
ご自分で産むという選択をなさったのですね。
妊娠、出産も危険が伴うわけだし、産まれてくる子も健常児とは限らないし、産まれて来た子を愛せるかも判らないしお産ってリスクいっぱいですよね。
だから産んだほうがいいとは他人からは簡単には言えない。
でも個人的には子どもの命はお腹の中にいるときから親のものではなく、その子自身のものだって思ってるんです。
このケースは出産を望んでいないのは本人じゃなくて親なんですが、本人が望まない場合でも養子縁組などがもっと出来るようになるといいなあって思っています。
日本では血縁っていうことがものすごく重要視されるので難しいんでしょうけどね。
「自分で選択した」ということが大切だと思います。
産む産まないどちらを選択するにしても、結果を引き受けるのはご本人です。
他人の「どうした方がいい」という言葉は、責任を伴いませんから、
簡単には言えませんよね。
選択が決まった以上、産婦人科医として年長者として、
見守って行こうと思っています。
先生もおっしゃるように、日本では養子縁組はあまりなされていません。
江戸時代以前に遡れば、もっと存在したようですが、
血縁へのこだわりと、子供は社会で育てるものという意識が希薄になってきたせいでしょうか。
これも今後の課題かと思っています(課題、山積みです)。
なな先生はまだ”親業”に携わっていらっしゃらないかもしれませんがなな先生にしか感じることの出来なかった経験をたくさんしておられますよね。強みですよね。
そんな経験からのエピソードは患者さんの狭くなってしまいがちな視界に風穴を開けてくれますね。
精一杯支えて下さるなな先生と出会えてこの方やご家族が幸せをかみ締めながらの人生でありますように。
患者さんを支えようとする私を、更に支えて下さるコメントの数々、
いつもありがとうございます。
この患者さんの相手の男性も、天晴れだと思うのです。
お会いしたら褒めようと思って、今から楽しみです(笑)。
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