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【発明の名称】 米澱粉を使用したレトルト食品およびその製造法
【発明者】 【氏名】島田 清之助

【氏名】高木 悦子

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 米澱粉を使用したことを特徴とするレトルト食品。
【請求項2】 澱粉を使用したレトルト食品を製造するにあたり、澱粉として米澱粉を使用することを特徴とするレトルト食品の製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、米澱粉を使用した、食感と風味に優れたレトルト食品およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】1975年に制定された日本農林規格や1976年に農林省食品流通局から通達された「レトルトパウチ食品類製造流通基準」によれば、レトルト食品とは、「プラスチックや金属、あるいはこれらを組み合わせて、多層にしたものを袋状に成形した気密性の容器に充填、密封した後、加熱殺菌、常温で保存性のある食品」と定義される。レトルト食品には、カレー,シチュー,スープ,ホワイトソース,ミートソース,丼の具等多くの種類の製品がある。これらレトルト食品は、レトルト処理(一般的には120℃以上の高温で20分以上加圧加熱殺菌処理する)後も風味が良く、適度な粘度と適度なボディ感を有し、離水がなく、老化せず、安定性に優れたものが望ましい。
【0003】レトルト食品の製造に際して原料の1成分として澱粉類が使用され、通常はトウモロコシ澱粉,モチ種トウモロコシ澱粉,馬鈴薯澱粉,タピオカ澱粉およびこれらを化学的あるいは物理的に加工した澱粉(化工澱粉)の中から1種もしくは数種を選択して用いられている。なお、米澱粉は澱粉類全体の0.1%程度の需要しかなく、一般的でない上に、他のものよりも高価であること等の理由で、レトルト食品の原料としては使用されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記したトウモロコシ澱粉等の生澱粉を用いると、レトルト処理によって、粘度が低下したり、老化や離水が起こり、食感の悪いものとなる。また、レトルト処理に耐えうるとされている化工澱粉を用いた場合は、風味が劣るものとなるという問題があった。しかも、生澱粉と化工澱粉を併用してもこれら問題は改善されなかった。本発明は、食感と風味に優れたレトルト食品およびその製造法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、米澱粉を使用したことを特徴とするレトルト食品並びに澱粉を使用したレトルト食品を製造するにあたり、澱粉として米澱粉を使用することを特徴とするレトルト食品の製造法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明では、レトルト食品の原料澱粉として米澱粉を使用する。米澱粉としては、ウルチ種,モチ種およびこれら生澱粉を化学的あるいは物理的に加工した澱粉(化工澱粉)でもよく、さらにはこれらを2種以上併用してもよい。従来より、レトルト食品の原料澱粉としては、生澱粉(天然物)よりも化工澱粉の方が粘度低下が僅かで好適であると認識されているが、米澱粉の場合は、天然物でも前記した欠点を生じることなく十分に使用できる。ここで、化学的な加工としては、例えばリン酸架橋、アセチル化などのエステル化、ヒドロキシプロピル化などのエーテル化等が挙げられる。また、物理的な加工としては、例えば湿熱処理、温水処理等が挙げられる。
【0007】米澱粉の配合量は、レトルト食品の種類や他の原料組成などを考慮して決定すればよい。例えば粘度を基準とする場合、レトルト食品の種類により異なるが、ミートソースの場合は、通常レトルト食品の粘度が1×103 〜3×104 センチポイズ、好ましくは5×103 〜1×104 センチポイズとなるように米澱粉を配合する。米澱粉の配合方法は、レトルト処理前に原料中に該澱粉を分散できる方法であればよく、何ら制限はない。なお、レトルト食品の工業的製造においては、通常キサンタンガム,タマリンドガム,グアガム,ローカストビーンガム,カラギーナン,寒天,ペクチン,ジェランガム等の増粘剤、ゲル化剤などの1種もしくは2種以上が用いられるが、本発明のレトルト食品においても、これらを同様に用いることができる。また、レトルト食品の製造にあたっては、既知の方法を適用すればよく、米澱粉を用いたことによる特別な条件はない。
【0008】
【実施例】以下に、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、レトルト食品について実施した官能評価は、10名の熟練したパネラーにより行い、平均値を示した。食感については、レトルト処理の前後において粘度の低下が殆ど認められず、ボディ感があり良好なものを○、粘度がやや低下しているものを△、粘度がかなり低下して不良のものを×と評価した。また、風味は、7名以上のパネラーが良好と判定したものを○、良好と判定したパネラーが少なく評価が低かったものを△、不良と評価されたものを×とした。
【0009】実施例1レトルトミートソース第1表に示す原料を常法に従って調理した後、レトルトパウチに充填し、121℃で60分間レトルト処理を行ってレトルトミートソースを製造した。得られた製品の品質について評価した結果を第2表に示す。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】実施例2レトルトミートソース実施例1において、ウルチ種米澱粉の代わりに下記の澱粉を使用したこと以外は同様に試験した。なお、馬鈴薯澱粉は3.0重量部使用した。結果を第2表に示す。
■湿熱処理ウルチ種米澱粉■トウモロコシ澱粉■馬鈴薯澱粉■リン酸架橋型トウモロコシ澱粉【0013】実施例3レトルトホワイトソース第3表に示す原料を常法に従って調理した後、レトルトパウチに充填し、121℃で30分間レトルト処理を行ってレトルトホワイトソースを製造した。得られた製品の品質について評価した結果を第4表に示す。
【0014】
【表3】

【0015】
【表4】

【0016】実施例4レトルトホワイトソース実施例3において、ウルチ種米澱粉の代わりに下記の澱粉を使用したこと以外は同様に試験した。結果を第4表に示す。
■モチ種米澱粉■モチ種トウモロコシ澱粉■小麦澱粉■リン酸架橋型トウモロコシ澱粉【0017】実施例5レトルトカレー第5表に示す原料を常法に従って調理した後、レトルトパウチに充填し、121℃で60分間レトルト処理を行ってレトルトカレーを製造した。得られた製品の品質について評価した結果を第6表に示す。
【0018】
【表5】

【0019】
【表6】

【0020】実施例6レトルトカレー実施例5において、ウルチ種米澱粉の代わりに下記の澱粉を使用したこと以外は同様に試験した。なお、タピオカ澱粉は4.0重量部、アセチル化馬鈴薯澱粉は3.0重量部使用した。結果を第6表に示す。
■アセチル化ウルチ種米澱粉■リン酸架橋型モチ種米澱粉■タピオカ澱粉■アセチル化馬鈴薯澱粉【0021】
【発明の効果】本発明によれば、米澱粉を使用した、適度な粘度と適度なボディ感を有し、食感や風味に優れたレトルト食品とその製造法が提供される。
【出願人】 【識別番号】000218982
【氏名又は名称】島田化学工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 藤郎 (外1名)
【公開番号】 特開平9−47263
【公開日】 平成9年(1997)2月18日
【出願番号】 特願平7−224575