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産婦人科の新人たちに、必ず言っている言葉があります。
1 医師としての人格形成期である
最初の2年間くらいは、医師としての基本的なスタイルを形成する時期です。
患者さんとの会話の間の取り方や説明の仕方、
器具の取り扱い方や、切開・縫合などの手技の型、
カルテや手術記録の書き方、
スタッフとの接し方や院内外での態度、
学会発表時や論文作成時のスタイルの形成など、
この時期に身についたものは、一生ものになります。
そう思って、心して自分のスタイルを形成して下さい。
2 分娩第一期に立ち会えるのは今だけ
陣痛が始まってから、子宮口が全部開くまでの間を「分娩第一期」と言います。
産婦さんが痛みに苦しむ時間で、初産だと普通に10時間くらいかかります。
この分娩期に立ち会えるのは、最初の数年だけです。
年次が上がると仕事も増え、体力も衰えますので、
じっくりとひとつのお産に寄り添えなくなります。
分娩第一期に立ち会ったことのない産婦人科医人生は、
きっとつまりません。
是非この時期に、ひとつのお産に最初から最後まで立ち会って下さい。
3 産婦人科医日誌の勧め
その日の分娩件数と、手術内容、外来業務内容、当直などを
毎日書き留めています。
例えば、お産でひやりとしたことや、機転を利かせてうまくいったこと。
手術で他の医師の素晴らしい技を見たことや、
出血量が多かった場合には、どこで出血して、どうすればよかったのかなど。
当直で大荒れだったことや、外来で珍しい症例を見たこと。
学会で得てきた新しい知識や、今後自分でまとめてみようと思ったこと。
患者さんに言われて嬉しかったことや、心に残った言葉。
助産師・看護師と飲みに行ったこと(笑)。
今でも、たまにこのノートを開いては、思いを深めています。
4 「これは君に任せよう」というものを持つ
何でもいいんです。
緩和ケアにおける疼痛コントロールが抜群、
難しい合併症妊娠の管理に長けている、
子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群に誰よりも詳しい、
息を呑むほどopeがうまい、更年期障害の患者さんならお任せ、
学会でのプレゼンテーションが絶妙無比。
ちなみに私自身は、女性のメンタルヘルスをライフ・ワークと考えています。
子供の頃の思い出が一生心に残るように、
新人産婦人科医時代の経験は、産婦人科医としての生涯を通して心に残ります。
佳い時間を過ごして、佳い産婦人科医人生が送れることを祈ります。
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コメント
コメント一覧
懐かしい言葉です。入社してすぐに、当時の社長に言われた言葉です。
これだけは、誰にも負けないものを持てと。
今の社長は、10年、20年やれば、どんなにつらくても、
いつの間にかその道のプロになっていると言われました。
なんだかんだ言って、基礎があってこそなんでしょうけど。
産婦人科医日誌、いいですね。なな先生の将来の楽しみでしょうか?
>女性のメンタルヘルスをライフ・ワーク
なな先生にぴったりだと思います。
あの年になっても、勉強の日々なんですね。
なな先生の言葉は、すべての社会人に通じる言葉だと思います。とても素敵だな~って、自分が新入社員の時の事を思い出しながら読んでいました。
>女性のメンタルヘルスをライフ・ワーク
同性でなくては分らない事ってあるんですよね、きっと。
女性のDr.にお世話になる機会が多いのですが、これって愛情のない家庭に育ったACだからなんでしょうか?
相性のいいDr.はみなさん女性でした。
入局に当たって、具体的なことは何も言われませんでした。
言われたのは「私は、いるべき時にその場にいるかどうかで評価しますから、そこだけは忘れないように」だけでした。二十年余りたってみると、後輩にも同じことを言っていたのに気付きます。これで十分でした。
週に三・四日くらい病院に泊まるのは普通でしたね。三日くらいなら、一晩休めば疲れもとれ、吸収できることの方が多かったですから、先輩医師をつかまえては、患者さんの了解を得た上で、ぺたっと診察に付き添ったり、遅くまで病院にいて、当直に入っている先輩医師の話を聞くのが、何よりの楽しみでした。
精神科の研修医だったのですが、時間を見つけて病院全体のCPCに参加したり、中央検査部にぶらっと遊びに行って、外科の教授や内科の講師と碁を楽しんだりしていました。そして、研修医になって半年後には外来で主治医を引き受けることになってしまい・・・これでは持たん、と思っていたら、医局の先輩からほどよいアドバイスとサポートをしてもらい、実り多い研修医生活だったのを思い出します。
最初の二年が大切ですね。
なな先生の四ヶ条、よくわかります。
二十年以上前の話になりますが、昔は、学生実習の時に分娩第一期に立ち会ったものでした。妊婦検診の補助もしましたが、羊水過多の場合は、早めに入院してもらい、食道閉鎖症の可能性が高いと判断し、陣痛が始まる前に小児外科と相談していたのを思い出します。陣痛が始まったら、すぐオペ室に行けるように待機でした。
全く話は変わりますが、桜がきれいですね。ヨメイヨシノもきれいですが、青い山のあちこちに咲く山桜の美しさは格別です。
「これというものを持つ」ことは、社会人にとって普遍的な価値なのかも知れませんね。
「なにかひとつなら、自分でも持てるのでは?」という気持ちになれるし、
実現できた時には、組織にとって貴重な戦力になります。
改めて、この言葉の力を感じます。
産婦人科医日誌は、将来の楽しみでもありますが、
もし見つかったら、労働基準法違反でつかまると思いますので(笑)
時効になるまでは隠しておかないと。
産婦人科医日誌は、当時の師匠がお付けになっていたものを
真似して始めました。
既に20年近いキャリアのある先生でした。
「いいと思ったことは、真似てみよう」という考え方が
全ての社会人に通じるものなのでしょうね。
同性でなくてはわからないことが、あるのでしょうね。
女性のことしかわかりませんが、
女性のメンタルヘルス領域の大御所の先生が
「女医でなくてはできない医療がある」と言っていました。
性差の限界は、やはり存在するのでしょう。
わんこさんの相性の問題は……
う〜ん、女医と女性患者さんのことしかわかりません〜
いい研修医時代を過ごされたのですね。
実りある研修生活が送れるかどうかは、好奇心がどれだけあるかよって決まるのではないでしょうか。
先生のお話を聞いて、そう思いました。
当直の時の先輩医師のお話の良さ、わかります。
ああいう場面で聞いた、どこにも載っていない知識や人生訓とも言うべき話は
臨床医として非常に貴重なものと位置づけています。
もう2度と過ごすことのできない研修医生活が、惜しくもあります(笑)。
先日、20歳前半の若いご夫婦が妊娠初診でいらっしゃいました。
妊娠を喜ぶ若いはつらつとした笑顔を見て、
「若いっていいな〜」とうっとりしていたら、
還暦を超えたナースに
「私から見たら、なな先生だって”若いっていいな〜”ですよ」
と言われてしまいました。
それを聞いて、2度と過ごすことができないのは、
研修医生活だけではないのだ、ということに、ふと気づきました。
今を大切にしなくっちゃ、です。
東京の桜は、5月のような陽射しを浴びて、ほとんど散ってしまいました。
代わりに、3月に植えたひまわりの種が、芽を出しました。
きれいな、黄緑色です。
>う〜ん、女医と女性患者さんのことしかわかりません〜
うっかりしていました。
なな先生のところへいらっしゃる方って、ほとんど女性ですよね。
男性は付き添いで、廊下でオロオロしているおきまりの絵しか浮かびません〜(笑)
とんでもない、先生くらい産科医療問題に詳しい先生は
なかなかいないと思います。
それひとつ取っても、すごいことだと思いませんか。
お決まりの姿のパパが多いのも事実ですが、
最近は、妊婦健診に一緒にいらっしゃって、
赤ちゃんのエコーを見て
「おおー、かわいい!」と大はしゃぎする素敵なパパもいます(笑)
社会人一年生、またいろいろな環境で進級された方々・・・私も含めて・・・皆さんが初心に戻って読んでみるといいなぁ・・・と感じたメッセージでした。
長男新6年生・・・下級生にむけたメッセージを昨日一生懸命考えていました。
”小さい人は怖がりです。自信がないのだと思います。だから僕達が一生懸命教えたり、ヒントをあげたりしていきたいと思います。失敗したときは責めないで見守ってあげるとよいと思います。”と。
どうしてそう思ったの?と、聞いたら
”僕がそうだったから。”と。
・・・・・ずいぶん成長したなぁ。自分の経験を無駄にしていない・・・・と、思いました。
自分で失敗しながらいろいろな事を感じ、乗り越えようとがんばってきたのかなって・・・
なな先生もいろんなことを感じながらここまでこられたのですよね。誰もが通ってきた道。
満開の桜の下で後輩達を満開の笑顔で迎えているなな先生を感じます。
すばらしい教えです。このようにまともなことを堂々と後輩に指導できることは、どのような時代になろうとも大切なことだと思います。
今後とも、真正面から生きていかれることを祈っておりますが、退官記念講演のようで少し気になりました。
仕事のペースを少し抑えることは無理なんでしょうかね?
医療の行く末を現役で見届けるためにも。
ご長男、素晴しいですね。
思わず、抱きしめてあげたくなったのではありませんか(笑)。
「失敗したら責めないで見守ってあげる」が、最高です。
こんな男の子が将来、大人の男性になって、社会の一線で活躍するのだとしたら、
日本もまだまだ行けそうです。
どんな世代になっても、その世代になると見る風景があるのだと思います。
十余年目産婦人科医の見る「風景」、なかなか乙ですよ(笑)
お年寄りとお花見をなさっているぴょん先生を思い浮かべながら、
コメントを綴りました。
>退官記念講演
とんでもないです!!(笑) 30年早いでしょう。
>仕事のペースを少し抑えることは無理なんでしょうかね?
私のことを心から思ってくれている主人と、同じ言葉です。
ありがとうございます。
最近また一人、戦友が休職に追い込まれました、
彼女の無念を思うと、身の置き所がありません。
そして、比類なく優秀でバイタリティあふれる彼女でさえ、
休戦せざるを得なかったという教訓を無駄にしないためにも
上手に、力を緩めなくてはならないと思っているところです。
燃え尽きないよう、静かに燃やしますね(笑)
> 時効になるまでは隠しておかないと。
ななせんせー!
逆!逆!w
つかまる(可能性がある)のは、びょーいんのえらいさんです。
労基法違反で働いた「労働者」に対するペナルティは何もありませんので、ご安心ください。
でも、逆に、賃金の消滅時効は2年なので、2年以上前の日誌は「換金」できません。。。
いずれにしても、日誌は、そういう法的な側面からも、それをつけている(つけてきた)医師の方にとって有害な点はいっさいありません。
むしろ、来るべき労基署への駆け込みに備えて、積極的に毎日書くことをお勧めいたします>新人医師の皆様
fuka_fuka先生のコメントを、ご覧になりましたか。
そうなんですね~、知らなかった。
でも、ペナルティがあるかも知れないのにあの労働を
黙認している病院のえらい人たちって・・・
お医者さんの労働基準法違反て、スピード違反に似ている気がします。
「新人産婦人科医」です。
実は、今日、上司に「話し方」について注意うけたばっかりで。
タイムリーな事この上ない内容でびっくりしました。
なな先生のお言葉、自分に贈られた言葉として受け止めたいと思います。
これからも、こっそりブログ読者させていただきます。
自分が発信した言葉を素直に受け止めて下さる方がいるというのは、
嬉しいことですね。
この記事を書いた甲斐がありました。
ありがとうございます。
新人産婦人科医ですか。これからですね。
共に頑張りましょう!
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