焼酎王国の九州・沖縄で、焼酎や泡盛の製造過程で出る「かす」の再利用が進んでいる。なかでも「かす」を原料にした健康飲料は人気を呼び、売り上げが急伸しており、除草剤など、意外な分野での研究も進行中だ。これまで大量に海洋投棄されて汚染問題を引き起こしていた“厄介者”が、新たな商品開発の種として脚光を浴びだした。
焼酎はソバや芋、麦など、泡盛は米が原料。いずれも原料を糖化、発酵させ、蒸留でアルコール分を取り出すと「かす」が残る。九州本格焼酎協議会(鹿児島市、288社)によると、九州の焼酎生産量は年間約36万キロリットルで、「かす」は約48万トンに上る。
現在、約40%まで飼料や肥料での再利用が進んできたが、海洋汚染防止を強化するロンドン条約議定書の批准に向け、海洋投棄は全廃が急務。再利用をさらに拡大するためには、売れる新商品がほしいところだ。
大分県宇佐市の焼酎メーカー三和酒類では、子会社の大麦発酵研究所が焼き肉のたれやドレッシングへの利用を試みてきた。ヒットしたのは肝機能や血圧に良い健康飲料として2年前に発売した「麦酢」。今年の生産量は1年目の5万本から3倍増の15万本に達する勢い。今後、大量生産を実現し、かすの利用量を増やすのが目標という。
泡盛は沖縄県の47社で年間約2万キロリットルを生産する。かすは約3万トンだが、黒糖やかんきつ類と混ぜて「もろみ酢」として販売するため、「捨てる業者はいない」(県)。「飲むと疲れが取れる」と評判で、4年前に約4億円だった売り上げは2年前に約23億円に増加した。今年は40億円に達する見込みだ。
九州沖縄農業研究センター(宮崎県)は霧島酒造(同)と共同で、作物に影響を与えず、雑草だけを取り除く除草剤を研究中。「芋の発酵で生じる成分に効果がある。廃棄物のない作物リサイクルを目指す」という。
大分大の望月聡教授(食品栄養学)は「かすには健康に良いといわれるクエン酸やアミノ酸などが含まれる。動物実験では肝機能の改善効果も認められている。研究が進めば、新食品の開発で産業界の発展にも寄与できそうだ」と話している。
資料:5/9日付 共同通信ニュース速報
(文責:編集部 立山 小松) (エコロジーシンフォニー2003年5/19)
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