緊急性のない時間外や休日の受診増加が全国的に問題になる中、すさみ町の国保すさみ病院は、不要・不急の受診を減らそうと患者に直接説明したり、広報紙などで啓発したりして成果を上げている。一方で、同病院は今春から訪問診療をスタートさせた。来年度には24時間体制の看護ステーションを設立する予定。高垣有作院長は「患者さんに協力を求めた分、何で還元するかも大切」と話している。 すさみ病院は高垣院長を含む常勤医師4人と南和歌山医療センターからの非常勤医師1人の5人体制で通常の診察と夜間の当直、土日曜の救急・休日診療に対応。「ぎりぎりの状態」(高垣院長)で運営している。しかし、同病院でも夕方など時間外に受診する人や、緊急性がないとみられる飛び込みの外来が多く、勤務時間が長くなるなど医師を取り巻く環境が年々悪化していた。 適切な受診への本格的な呼び掛けには2006年度に着手した。医師が受診患者に根気強く事情を説明し、町広報紙でもたびたび「不要・不急の受診は控えてほしい」と訴え、理解を求めた。 その結果、休日と時間外の受診は05年度の1218人に対し06年度が22・5%減の944人、07年度は34・5%減の798人に減った。救急車による受け入れも05年度の222件に対し06年度が7・7%減の205件、06年度は14%減の191件に減った。 高垣院長は「休日・時間外の受診に不要・不急の受診がどれだけ含まれていたかは分からないが、呼び掛けが着実に浸透しているという実感があり、限られた医療資源を大事にしようと考えてくれるようになった」と患者の意識の変化を話す。 さらに「最近では受診が1件もない当直もあり、以前とは様変わりした。過疎と高齢化が深刻な地域にある病院なので、良質な医療と介護の継続実施が役割。医師への負担が軽減された分、課題への対応に力を注ぐ」という。 すさみ病院は今春から地域ごとに住民対象の夜間出張健康講習会を始めた。基礎的な医学知識を身に付け、健康管理に役立ててもらう。また、急な病気やけがで困った時の電話による問い合わせにも、医師や看護師が丁寧に対応している。高垣院長は「本年度は不要・不急の受診がさらに減る」とみている。