大阪市北区の米販売会社「三笠フーズ」が工業用の事故米を食用に転用した問題で、農林水産省が事故米の購入・販売先として公表した18業者に朝日新聞社が取材したところ、複数の業者が、事故米の購入を農水省側から持ちかけられていたことを明らかにした。また、回答しなかった1業者をのぞく17業者が食用への転用を否定した。
「国から頼まれて買った米。とても迷惑な話だ」。奈良県の工業用のり製造販売業者は04年11月、水害に遭った事故米の購入を農水省側から勧められたという。だが、買った米は相当傷んでおり、のりの原料としても使えず、結局、焼却処分したという。
山形県内のコメ油製造業者は、農水省側から「何とか有効利用を考えてくれ」と頼まれ入札に参加した。約140キロを買い、発酵有機質肥料の原料として商品化を試みたが失敗。今も大半が余っているという。「恩を売っておけばという考えで入札に参加していた」と打ち明けた。
中国産もち米で工業用のりをつくっていた富山県内の業者は「国は『知らなかった』では困る。入札前に業者の信頼性をチェックすべきだった。はっきり言って農水の怠慢だ」と不満をぶつけた。
転用を疑われ、農水省の調査まで受けた各業者は、三笠フーズの不正に憤りを隠せない。「寝耳に水。とばっちりだ」。秋田県内の運送会社幹部は、リサイクル事業の一環として07年、県内の豪雪でつぶれた倉庫のカビ米約1200キロを買いとった。スーパーで集めた野菜くずなどに事故米を混ぜ、肥料にして無料で農家に配ったという。
松山市の肥料製造卸会社でも3年前まで、菜種油や魚粉を事故米に混ぜて肥料をつくっていた。社長は「うちは水にぬれて使えなくなった事故米を利用しただけだ」。