行き場ない子を受け入れて
《名古屋のフリースクール開設1年》
■「こころとまなびどっとこむ」
不登校の子どもたちが学ぶ名古屋市中村区椿町のフリースクール「こころとまなびどっとこむ」が開設1年を迎える。着実に実績を上げてきた一方で愛知県の不登校小中学生は8000人余と過去最多になった。20日に同所で開催される「不登校の中学生を持つ親たちの集い」の講師を務めるスクール代表の高階和浩さん(43)に不登校の現状などを聞いた。(中)
■愛知県で過去最高 不登校生8000人
同フリースクールは2003年秋に認証されたNPO法人「こころとまなびどっとこむ」が07年10月に設立した。不登校の中学生を預かり、年度替わりで十数人いた生徒は数人となったが、受け皿としての意味は大きい。文部科学省発表によると、昨年度の愛知県の不登校小中学生は前年の7000人台を超えて8098人と最多。中学生もうち6375人と最多。
「中学生が圧倒的に多く、都道府県別にみて愛知は全国的にも高い水準でしょう。スクールは中学生の両親からの相談が多く何とか対応できないかとNPOの有志でスタートしたものです」
高階さんは兵庫県出身。龍谷大を卒業。教職資格を持ち名古屋市内の教育系出版社に就職。幼児教室の設立、中学生対象の電話、ファクス授業を行い、悩める生徒や親をサポートしてきた。不登校の理由はさまざまだが、生徒や親は何をどう悩んでいるのか。
■携帯電話が一因ストレス増加
「原因は幾つかあります。早い子は小学5年生もいますが、中学生が多く、学校、親子、兄弟などほとんどの場合、人間関係の悩みを抱えている。第2反抗期の時期ですが突然、体に変調を来たし、頭痛、腹痛を訴え、学校へ行く気持ちがあっても体が動かない。母親は何が起こったのか分からない。“普通にやっていると思っていた”“何か変だが…”などと言います」
わが子をよく知らない親の姿は人ごとと笑えない。生徒を取り巻く環境の変化や親の性格、話し方が影を落としているという。
「生徒にとって携帯電話は(不登校の)一つの要因になっている可能性があります。メールのやりとりでも15分以内に返信しないと誤解されかねない。心が休まる暇がなく、ストレスの原因になっているようです」
フリースクールは生徒が寄り道をする居場所ととらえ、学習、ものづくり、体力づくりを3本柱に“交わる力”の回復を目指す。間もなく開設1年だが、復学への道が開かれたケースもある。
「中学3年女子の場合、突然でした。親から聞きましたが、来月から学校へ行ってみると言ったそうです。学校と連絡を取り、夏休み後に通学しています。担任の先生の力もありますが、生徒の表情は以前に比べて柔和になりましたね」
サポート校を通して感じた親や教育界についての問題点、期待を聞くと、返ってきた答えは前向きそのもの。高階さんから批判は聞かれなかった。
「まず親自身がハッピーになってほしい。不登校を特別なことと考えず、孤立感などで悩まないことが大切です。生徒は優しく、学校に行けないことに罪悪感を持ち、両親や友人に悪いことをしていると考えている。自己肯定感がない生徒の不安を親があおらず、にこにこしていてもらった生徒は安心するのです。公教育だけでなく民間、NPOなどのソフトな形の生徒の居場所、選択肢が複数あってもいいのではないでしょうか。フリースクールが一つの受け皿として市民に認知されるといいですね」
この前向きで明るい考え方こそ子どもを救うヒントかもしれない。
■20日「親たちの集い」高階さん講演
20日午後1時から名古屋市中村区椿町、KTC中央高等学院名古屋キャンパスで開催されるのは「不登校の中学生を持つ親たちの集い」。高階さんが講演。親からの相談を受け付ける。要予約。参加無料。予約、問い合わせはрO52(452)1136。
【写真説明】「まずは親がハッピーになること」と語る高階さん
(2008年9月9日更新)