“歯の成人病”とも言える歯周病は、歯を支えるあごの骨が減り、最後には歯が抜け落ちてしまう病気です。
特に妊婦では、女性ホルモンによる影響で、半数以上が歯周病(歯肉炎・歯周炎)といわれます。女性ホルモンを利用して増える歯周病菌もいて、妊娠中は普段より出血が多くなったり、歯茎が急速に腫れやすくなるのです。歯周病菌は毒性が強く、血流に乗って全身に広がり、時に心疾患や糖尿病などを悪化させます。米国の疫学調査では、歯周病のひどい妊婦は早産や低体重児出産のリスクが7倍--という結果も出ています。赤ちゃんの健康のためにも、妊娠中だからこそ歯周病の予防を心がけてほしいのです。
一方、虫歯菌は唾液を介して、母親をはじめ家族から赤ちゃんの口の中にうつることが知られています。赤ちゃんの歯を虫歯菌から守るには、妊娠中から母親の虫歯予防を徹底することが最も効果があり、理想的です。
妊娠中は子どもの将来を考え、健康に対する意識が非常に高まる時期です。妊娠中に体得した虫歯や歯周病の予防知識は、赤ちゃんや家族の歯の健康を守るための一生の宝物になります。日ごろから歯磨きをしっかり行い、出産後にも家族一緒に定期健診を続けてもらいたいですね。【坂根真理】
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「家族の笑顔があふれる歯科医院」がモットー。産婦人科に併設された歯科医院であり、診療室には妊婦や親子連れの姿が目立つ。専任保育士による託児サービスも。笑うことの健康への効果を考える「日本笑い学会」岡山支部会長を務める。岡山市大福369の8。電話086・282・0086。
毎日新聞 2008年9月9日 地方版