宮脇俊三が作家活動を開始したのは51歳の時、長く勤めた中央公論社を辞してからのことですが、有能な編集者として培った厳しい眼は、感傷に流されない緻密な紀行文へと結実していきました。国鉄全線を乗りつくすという偉業の旅を記録した処女作『時刻表2万キロ』(昭和53年、河出書房新社)は大きな反響をよび、その後も国鉄線の最長片道ルートに挑んだ『最長片道切符の旅』(昭和54年、新潮社)、鉄道史からみた昭和の記録ともいえる『時刻表昭和史』(昭和55年、角川書店)、そして海外の鉄道紀行や廃線跡を巡る旅など、次々と旅の記録を著し、それらは鉄道ファンのみならず一般の読者をも魅了して、鉄道紀行を文芸の一ジャンルにまで押し上げました。
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1926年、埼玉県川越市に生まれる。1951年、東京大学文学部西洋史学科を卒業し、中央公論社に入社。「中央公論」編集長、常務取締役などを歴任し、1978年に退社。同年、国鉄全線完乗の旅を綴った『時刻表2万キロ』(第5回日本ノンフィクション賞)で作家デビュー。著書は『最長片道切符の旅』、『時刻表昭和史』(第6回交通図書賞)、『殺意の風景』(第13回泉鏡花文学賞)ほか多数。1999年、第47回菊池寛賞を受賞。2003年、2月逝去。 |
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