3分で分かる米国の判例 判例USAメルマガ # 0070
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3┃分┃で┃分┃か┃る┃米┃国┃の┃判┃例┃
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判 例 U S A メ ル マ ガ # 0070
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テレビが農産物の名誉を毀損する?
−「報道被害の救済」と「報道の自由」の狭間 ・・・その2
「60ミニッツ」名誉毀損事件
AUVIL v. CBS "60 MINUTES"
(オーヴィル対CBS「60ミニッツ」)
対訳表はこちら
http://www.hanrei-usa.net/dispbilingual.php?precedentid=37
翻訳の過程はこちら
http://www.amelia.ne.jp/userProjectStatusList.do?projectId=86
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★米国判例に詳しい翻訳者(A)が米国判例について知りたいビジネスマ
ン(B)に判例を解説!
前回までの内容はこちら↓
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000142891
● 農産物名誉毀損(product disparagement)-----------------------
B:前にも報道に関する名誉毀損の問題について話したことがあったね。
確かあのときも報道側の被告が大物だった。
A:あの事件の被告は活字メディアの巨人として君臨してきたタイム誌。
その報道に対して、宗教団体のサイエントロジーが訴えた事件だね。
B:あの訴訟とこの訴訟では名誉毀損の考え方、論点は違うの?
A:うん。あの事件では「公人(public figure)」か「私人(private
figure)」かが問題になったけど、今回はそれが問題にならない。
B:集合代表訴訟というわけだしね。日本のように風評被害じゃなくて名
誉毀損というのがちょっとピンとこないけど。
A:日本語でいうと名誉毀損より信用毀損という方がなじむかと思うけれ
ど、アメリカでは農産物の信用を損なってはいけないという考え方が
ある。
B:アメリカには農産物の名誉毀損を禁じる法律があるの?
A:今回の訴訟が提起された1989年時点ではなかったけど、この事件をき
っかけとしてその種の法律が13の州で制定されている。これは、「農
産物名誉毀損法」とか「食品悪評禁止法」と訳が定まらないけど、英
語でもproduct disparagement law、vegetable libel law、product
disparagement lawなどとその呼び方は異なっている。しかし、いずれ
も基本的には報道などで農産物の信用を損なうことを禁止する法律な
んだ。
B:真偽を問わず農産物の評判を落とすような報道をしてはいかんという
こと?
A:いやいや、それじゃさすがに報道の正義は失われてしまうよ。あくま
でも虚偽の報道の場合という但し書きがつく。
B:それでも、報道する側としてはそんな法律があるだけで腰が引けるか
もしれないね。
A:うん。実際、BSE問題について日本であれだけ報道されているときにア
メリカでほとんど報じられなかった理由の一端はこうした法律の存在
にあると言われている。
B:ああ、確かに不思議だと思っていたんだ。だって、アメリカは日本へ
の輸出牛を国内販売用の牛と同じ方法で検査をしているのに、アメリ
カ人は別にBSEを気にしていない様子だったからね。アメリカ人は食
の危険性をあまり意識していないのかと思ったよ。
A:BSEの場合はほとんど知らされていなかったというのが本当のところじ
ゃないか。それを証拠に、このエイラー問題の場合は、みんな番組放
映後、急にリンゴを買わなくなってしまったんだから。
B:そうだよね。あと、サイエントロジー裁判のときの名誉毀損の基準で
いうと、虚偽であっても名誉毀損にならないケースがあったと思うけ
ど。
A:そう。問題はどれだけ正しい報道をしようと努力したか、ということ
だったね。とくに、原告側が虚偽であることを知りながら報道するよ
うな「現実の害意(actual malice)」がなければ名誉毀損にならない、
ということがあった。
B:今回の件もそういう判断でいいのかな。
A:この当時、ワシントン州に農産物名誉毀損法に相当するものはなかっ
たけど、判例を制定法のように条文化した「リステイトメント
(restatement)」があった。それによれば、「虚偽と知りながら」報
道したということが要件とされている。
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・・・次回に続く
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執筆:吉本秀人
編集:吉野 陽
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