【ソウル=箱田哲也】北朝鮮の最高指導者、金正日(キム・ジョンイル)総書記の健康悪化説を受け、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は10日朝、大統領府幹部を集めて対策会議を開いた。韓国政府は関係者らを総動員して情報収集にあたっているが、正確な状況は把握できていない模様だ。
大統領府関係者は会議後、「なにやら尋常ではない状況とみられる。かなり前から関連情報を入手し、綿密に検討してきた。今後も状況把握に努めるとともに準備を整えたい」と語った。また、金夏中(キム・ハジュン)統一相は10日の国会の委員会で「現時点では昨日、(北朝鮮の建国60年行事に)参加しなかったということ以外に正確な情報はない」と述べた。
一方、韓国の聯合ニュースは同日、韓国政府関係者が「金国防委員長(総書記)の体に異常があるのは、ほぼ確実だ。情報を多角的に分析すると、金委員長は(病気で)倒れたとみられる」と語ったと伝えた。別の政府関係者は「(一部で報じられた)脳卒中が事実なら回復までにかなりの時間がかかるし、深刻な後遺症が出る可能性もある。北の核問題などに関するあらゆる対策を準備する必要がある」と述べたという。
韓国政府関係者は、北朝鮮の建国記念日前日の8日、金総書記の健康問題について「状態は良くないが、対外活動ができないほどではないようだ」との見解を明らかにしていた。しかし、9日に平壌であった閲兵式にも金総書記は姿を見せなかった。
韓国メディアも金総書記の重病説を一斉に報じ始めた。中央日報は10日付で米国の外交消息筋の話として「数週間前に脳卒中を起こし、現在は半身不随の状態だが、意識はある程度残っている」と報じた。朝鮮日報は「先月22日にフランスの医師1人が北朝鮮に急派されたという情報がある」と指摘した。