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【主張】グルジア合意 これでは露の策略通りだ
ロシアのメドベージェフ大統領がグルジア紛争について、南オセチア自治州とアブハジア自治共和国を除くグルジア全土からロシア軍部隊を今後1カ月以内に撤退させることで欧州連合(EU)の議長国、フランスのサルコジ大統領と合意した。
これによりグルジア紛争の収束に向けた一歩が踏み出されたかのようにみえる。だが、今回の合意は、ロシアが8月12日にEU側と合意しながらこれまで履行してこなかった紛争の和平原則に「今後1カ月」という期限を設定したにすぎない。
むしろ、ロシアが先に南オセチア自治州など2地域を独立承認したという暴挙に出たことに、何の方向性も出せなかった方が問題なのである。
今回の合意は、これら2地域の外にあるグルジア領内で駐留し続けるロシア軍部隊が、10月1日までに欧州の200人を含む国際監視団が展開した後10日以内に撤収するとの内容だ。
もともと、ロシアは前回の合意にもかかわらず、「秩序と治安の維持」の名目で、軍の撤退を履行せず、違法な駐留を継続した。今後の情勢の変化によっては、今回の合意も反故(ほご)にされかねない。
しかも、肝心の南オセチアとアブハジアに駐留するロシア軍の今後については、まったく言及しなかった。それどころか、ロシアは、両地域への軍事支援を行う姿勢を示している。
さらに気がかりなのは、ロシアが今回の合意を実行すれば、EUが停止していた対ロシア協力交渉を10月にも再開すると約束したことである。
エネルギーの多くをロシアに依存する欧州としては、決定的な対立を避け、対話を継続することでロシアを説得してゆこうという戦略なのだろう。だが、その対話を半ば永久的に続けて時間を稼ぎ、経済カードで欧米の分断を図り両地域の独立、ひいては併合を既成事実化しようというのが、まさにロシアの策略だろう。
グルジアをめぐる紛争は、長期にわたる欧米とロシアとの外交交渉が始まったばかりである。
北方領土問題を抱える日本は、ロシアとグルジアの間で生じている領土問題にもっと関心を払うべきだ。少なくとも、主要国首脳会議(G8)の議長国として、首相自身が違法は許さないというメッセージを出してほしい。