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社説2 相撲協会は出直せるのか(9/10)

 大相撲は一つのスポーツ団体にすぎないが、長い歴史を持ち日本の文化伝統の一翼を担ってきた。その自負を忘れたかのように前代未聞の事件が相次ぎ、今回は大麻汚染だ。

 8月18日に元幕内若ノ鵬(20)が大麻取締法違反(所持)で逮捕された。さらに協会の抜き打ち検査でロシア出身の幕内・露鵬(28、大嶽部屋)と十両・白露山(26、北の湖部屋)の兄弟2力士が陽性反応を示した。白露山は北の湖理事長(55)の部屋の力士である。兄弟は全面否定していた。北の湖理事長も「本人は否定している」などとかばった。

 8日、ようやく北の湖理事長が辞任したのも角界内部からの突き上げで「解任」の圧力が高まった背景がある。優勝24回の大横綱が任期途中で辞任するということは重いが、理事にとどまったことで世間の理解が得られるかどうか。

 2006年名古屋場所中に露鵬がカメラマン2人に暴行を加えたのを手始めに最近、協会は事件の対応に追われてきた。07年6月の名古屋場所前に起きた時津風部屋の力士傷害致死事件。巡業をさぼり横綱の品格を問われた朝青龍には2場所出場停止処分が下っている。

 いずれも北の湖理事長のもとで起きた。だが、協会のトップとして自ら説明し、その責を負う姿勢を示すどころか「部屋の師匠の責任」として転嫁し、責任逃れに終始してきた感がある。これでは理事長としての能力が疑われてもしようがない。

 横綱武蔵丸や大関武双山を育てた武蔵川新理事長(60、元横綱三重ノ海)は事業部長として協会ナンバー2にあった。サプライズのある人事ではない。危機意識をもって臨まなければ信用回復は難しいだろう。

 協会は文科省の指導で「再発防止検討委員会」を発足させ、外部識者とともに再生の道を探ってきた。その途中で発覚した大麻汚染の衝撃は大きい。これを根絶するしかなく、十両以上だけでなく力士全員を対象に検査を行う必要があるだろう。

 そのうえで協会は、新理事長の下に開かれた団体として外部の理事を複数入れるなど大胆な刷新を行うべきだ。このままでは「財団法人」返上の事態となるかもしれない。ファンも改革の行方を注視している。

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