大麻とアルコールとのリスク比較

イギリス政府サイトのデータで比較する

Source: UK Cannabis Internet Activists (UKCIA)
Subj: So, what about the health risks the government is always going on about?
Web: http://www.ukcia.org/culture/effects/risks.php#mh


政府は大麻の害について繰り返して言いたてているが、その害が実際にどの程度なのかは広く知られているアルコールの害と比較してみるとわかりやすい。

以下の比較一覧は、2001年に立ち上げられたイギリス政府系の反ドラッグ・キャンペーン・サイト D-2K の情報をもとに整理したものだ。サイトでは、大麻とアルコールは直接比較しているわけではなく、アルコールに関しては隠すようにサイトの最後のほうに記載されていたが、それらをカテゴリー分類して大麻と対照して並べてみた。

その比較結果は一目瞭然としているが、だが、もともとD-2Kサイトはドラッグ教育サイトなので、大麻の害についてはかなり大げさに書かれている。それを指適した下の解説を見れば、害の格差はいっそう明確になってくる。

イギリスでは2003年から大麻の取締り分類が B から C へとダウングレードされ、それに合わせて D-2K は 「Talk to Frank」 というサイトに変更されてバイアスも少しは改善されている。しかし、D-2Kサイトは依然消去されることはなく現在も閲覧できるようになっている。

http://www.d-2k.co.uk/html/factfiles/cannabis/risks.htm
http://www.talktofrank.com/


 大麻    アルコール
 大麻を単独で使ったときのリスク    アルコールを単独で使ったときのリスク
  • ボングや水パイプで煙を深く吸込み肺に留めておくと、肺の組織に付着するタールなどの危険な化学物質が増える。長期間大麻を吸っていると肺癌などの呼吸器系の疾患のリスクが高まる。(1)

  • 大麻に酔うと、目が充血し、心臓の鼓動が早くなる。(2)

  • 気分や周囲の状況によってパラノイヤや不安になる。(3)

  • 大麻は短期的な記憶に影響をおよぼし、集中力や判断力が低下する。さらに翌日にも影響が残ることがあり、明晰な頭と鋭い反応を要する重要な仕事に支障をきたすこともある。(4)

  • 大麻に酔うと位置関係の認識力に影響し、事故のリスクが高まる。運転能力を損なうので酔っているときには決して自動車を運転してはならない。(5)

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  • 過剰飲酒をすると意識を失ったり死亡することもある。

  • 意識を失うと、嘔吐して窒息するリスクが高まり、ときにはそれが原因で死亡することもある。

  • 長期のわたって過剰飲酒を続けると、肝臓や心臓や胃などに深刻な問題を生ずることがある。

  • アルコールの乱用は暴力犯罪やセクハラを誘発しやすい。

  • アルコールは運転能力を損なうので、飲酒の影響があるときには決して自動車を運転してはならない。

  • アルコールで抑制力が低下し、羽目をはずしやすい。素面に戻るとひどく落ち込んでしまう結果になることがある。

  • アルコールは脳機能に影響を与えるので、その度ごとに違った感情が表れる。予期せぬ激情が起こることもある。

  • 現実逃避にアルコールを使っても問題の解決にはならない。酔いから醒めても悩みはそのまま残る。

  •  大麻と他のドラッグと併用リスク    アルコールと他のドラッグと併用リスク
  • 大麻を吸うときにタバコを混ぜると気管や肺にダメージを与え、ニコチン中毒になる。(6)

  • 大麻とアルコールとを併用すると病気になるリスクが増える。(7)

  •  
  • アルコールと他のドラッグとの併用は危険。

  •  注意すべき行為    害削減のアドバイス
  • ペットボトル、ゴムホース、塩ビ管、アルミ缶、アルミホイルで大麻を吸ってはならない。こうした素材は熱すると毒性ガスを発生する。(8)

  • 同じジョイントを数人で吸い回すと肝炎のような感染症が伝染ることがある。(9)

  • 間接喫煙の恐れがあるので、特に子供など他人がいるところで吸うべきではない。小さな子供の尿にも少量の大麻が見つかっている。(10)

  •  
  • アルコールを飲んでいるとだんだん飲んだ量がわからなくなる。ちゃんぽんはやめて一種類の限定して飲めば、飲んだ量を判断できる。

  • アルコールには、大人が毎日どのくらい飲んでいると健康のリスクになるかのガイドラインが用意されている。一日に、女性なら2〜3ユニット、男性なら3〜4ユニットになっているが、この量は若者には適応できない。アルコールへの反応は大人とは異なるのに加え、肝臓も小さい。

  • アルコールは方向感覚に影響を与えるので自動車事故を起こすことがある。家庭などの安全な環境で家族や友達と飲むめば事故のリスクを減らすことができる。


  • 解説
    上の表で見れば一目で大麻のほうがアルコールよりも害や破壊性が少ないのがわかるが、政府のわざとのらりくらりした情報だけを聞いているとそんな実態は思いも寄らないだろう。D−2Kはドラッグの真実を教える 「教育」 のサイトだと思われているが、実際は明らかに反大麻のバイアスがかかっている。情報はピント外れで過剰心配妄想で歪められている。


    (1) 大麻は肺癌などの呼吸器系の疾患のリスクを高める
    これは一見真実そうだが、実際に大麻の喫煙が癌や呼吸器疾患の原因になっているという確たる証拠はなく、この主張は研究結果の寄せ集めと憶測に過ぎない。いずれにしても、タバコとは異なり、大麻の場合は喫煙のリスクを軽減するためにユーザー自らが簡単に対処する方法があることも指適しておかなければならない。バポライザーという究極的な吸引法では、タールになる成分を燃焼することなく大麻の活性成分だけを取り出すことができる。
    この分野の研究では最も著名な一人であるドナルド・タシュキンは、これまで何年にもわたりマリファナの煙が気管支の組織に損傷をもたらす証拠を求め、マリファナの煙には発がん性の物質が含まれており、細胞の分子構造に変化をもたらすことを確認してきた。この結果はアメリカ政府の反マリファナ・キャンペーンで、大麻は肺癌をおこすという根拠として使われてきた。

    しかし、一方では別の研究者が6万4000人の患者を調査したころ、マリファナ・ユーザーには肺癌が極めて少ないという報告も出ていた。この結果に疑問を抱いたタシュキンは、前提として、ヘビーで長期的な大麻使用が肺や気管支の癌のリスクを高める、という仮説をたてて自分でも大規模な調査を行った。しかし、2005年6月に発表した結果 では 「使用量がリスクを高めることを示すものは何も見つからなかった。」 と述べている。

    (2) 大麻は目を充血させ、心臓の鼓動を速やめる
    この主張はもう無節操な証というよりほかない。そもそもリスクなど呼べる症状なのか?

    大麻には血管を拡張する働きがある。眼は、白目の背景に赤い血管が浮きでているので血管を直接見ることができる。大麻によって血管が拡張されると目が充血して赤く見えるようになる。 しかし、代謝が済むと血管は平常に戻り赤目も消える。これは気まずいときに顔が赤面して、やがて消えるのと似ている (気まずいとどうして血管が拡張するのかについてはあまりよくわかっていないが)。

    大麻によって引き起こされた赤目は、炎症やアレルギーや怪我などによる赤目とは同じものではない。

    心臓の鼓動が速まるのも血管拡張と関係している。一般に、血圧が下がると鼓動が増える。これは血圧をもとに戻そうとする働きで、体内のすべてが関連してバランスを保とうとする恒常性とよばれる機能の一つだ。

    こうしたことから言えるのは、赤目や鼓動への影響について注意を促すという点においてはD−2Kは正しいが、大麻の場合は深刻な状態ではなく、リスクと呼ぶのは適切ではない。
    大麻と血管拡張の関連を扱った参考文献
  • Acta Psychiatr Scand 1992 Aug;V 86(2):173-8   "Middle cerebral artery velocity during upright posture after marijuana smoking".   Matthew R J, Wilson W H, Humphreys D, Lowe JV, Wiethe K E
  • J Anal Toxicol 1988 Jul-Aug;12(4):169-75   "Marijuana-laced brownies: behavioral effects, physiologic effects, and urinalysis in humans following ingestion".   Cone E J, Johnson, RE, Paul BD, Mell LD, Mitchell J
  • J Chronic Dis 1987;40(2):131-6   "Behavioral factors and blood pressure in black college students".   Adams LL, Washburn RA, Haile GT, Kuller LH
  • Ophthalmology 1980 Mar;87(3):222-8   "Effect of marihuana on intraocular and blood pressure in glaucoma"    Merritt JC, Crawford, WJ, Alexander PC, Anduze AL, Gelbart SS

  • (3) 大麻は パラノイヤ や不安を引き起こす
    確かに、これは、特に初心者が大麻を過剰摂取してストーンし過ぎた場合などに起こりやすい。しかし、大麻の効果がピークを過ぎればだんだんおさまり、効果が消えればもとに戻る。

    普通、慣れてくるとこのような症状はあまり起こらなくなるが、一部の人ではアルコールの場合と同様に、大麻が体質に合わず、いかなる量でも不快な酔いしか得られないこともある。 また特に、他のドラッグでも精神障害を起こしているような人は症状を悪化させる恐れがある。このような場合は大麻をやらないほうがよい。


    (4) 大麻は短期的な記憶や集中力を損ねる
    大麻に酔っているときは、物事に意識を集中するのが難しくなり、勉強に集中できなくなったりする。だが、大麻の効果が消えれば、自然におさまる。

    また、一部の人、特にアーティストやミュージシャンなどの中には、こうした状態が創造性を刺激する場合もあるが、誰でもがそうなるわけでもない。

    大半のユーザーにとっては、短期的な記憶や集中力の低下は不快な体験などではなく、効果が消えた後はよく眠れて、すっきりと目覚める。上の表では、翌日は明晰な頭とシャープな反応を要する重要な仕事ができなくなると警告しているが、大麻ではアルコールのような二日酔いは起こらない。


    (5) 大麻は自動車事故のリスクを高める
    酔っているときに機械の操作や自動車の運転はやらないほがよい、というアドバイスは妥当といえる。しかし、研究によれば、大麻の運転への影響は政府が危険だと言い立てているほどには危うくはない。


    (6) 大麻をタバコと一緒に吸っているとニコチン中毒になる
    正直に、ピュアな大麻を吸うようにユーザーにアドバイスすればいいものを、わざわざタバコに混ぜて吸うと危険だという言い回しをしなければならないところに注目。このように言わなければならないのは、当然、タバコが合法で大麻が非合法であるからだ。さすがの政府も、違法なものを使うときには合法なものは一緒に使わないように、というアドバイスはできない。

    だが、ここでは正直に、大麻はピュアな状態で吸おう、と明解に書いておく。もし大麻と一緒にタバコを吸うと、肺癌などを引き起こすとされるニコチン中毒になり病気に苦しむリスクを抱えることになる。

    これは、本来、政府が言うべき最も効果的な害削減のアドバイスの一つなのだが、大麻に対するドラッグ戦争を支持している手前、そうすることもできない。


    (7) 大麻をアルコールと併用すると健康のリスクが高まる
    確かにこの組合せは人を不健康にする。どのようなドラッグであってもアルコールと併用しない、というのが理にかなったアドバイスだ。だが、この警告は、本来、アルコールに対するものであって、大麻を対象にしたものではない。


    (8) 大麻をペットボトルやアルミ缶などで吸うと危険
    大麻をきちんとしたパイプ(ボウル)の中で燃やしている限り、アタッチメントにプラスチックの容器やゴムホースを使っても熱くならなければ何の問題もない。

    アルミ缶を使うな、というアドバイスは、間に合わせでアルミ缶やアルミホイルをパイプの代用として使てはならないという意味だ。これは熱で発生したアルミニュウムの蒸気を吸い込むと危険なためだ。


    (9) 大麻には感染症のリスクがある
    肝炎などの感染症はさまざまな経路で感染する。おそらくジョイントの吸いまわしでも伝染る可能性も万一あるかもしれないが・・・

    A型肝炎は糞便/経口ルートで感染し、C型肝炎は汚染した体液が注射や傷などのルートで侵入して感染する。いずれにしても、たとえジョイントに唾液がべっとりついたぐらいでは感染することは考えられない。

    ところで、D−2Kは、まさか、大麻を使うと肝炎のような深刻な病気が伝染るリスクがあるなどと本気で主張しているのだろうか? もしそうなら、正直なところ、過剰注意妄想に陥っているようにしか見えない。これはまさに 「大麻精神病 (reefer madness) 」 大賞に値する。


    (10) 大麻には間接喫煙の害がある
    思いやりをもとう。煙やその匂いが嫌いな人もいる。害の有無に関係なく、他人に自分の煙を吸わせること自体がフェアではない。