◎自民党総裁選告示 景気対策の具体論問いたい
きょう告示の自民党総裁選に出馬する五氏に、まず問いたいのは、失速し始めた景気を
テコ入れし、活力を取り戻すための道筋である。日本経済を立て直す方法をただ漫然と語るのではなく、具体論を示してもらいたいのである。たとえば、先に公明党との間で合意した定額減税について賛成なのか反対なのか、賛成ならどれぐらいの規模で実施しようと考えているのか、反対なら定額減税に代わる景気対策は何を考えているのかを聞かせてほしい。
米政府は世界的な金融不安の「元凶」となっている政府系住宅金融機関(GSE)を政
府管理下に置く決断を下し、最近の世界同時株安に一応の歯止めをかけた。今後、公的資金の投入など追加的な対策が取られるだろうが、金融市場の危機が去ったわけではない。欧米がサブプライムローンの後遺症対策に懸命になっているなかで、日本だけが、知らぬ顔では済まされない。日米欧が足並みをそろえて金融不安の解消と景気対策に取り組み、経済の活力を取り戻していかねばならない。
総裁選候補のうち、麻生太郎氏と石破茂氏は、景気対策を重視する「積極財政派」と目
されているが、投資促進や住宅ローン減税など政策減税だけでは物足りない。景気テコ入れの軸となるのは大型減税であるべきだ。小池百合子氏や石原伸晃氏ら「上げ潮派」は、規制緩和や霞が関改革を訴えるようだが、景気刺激にはまったくの力不足である。「財政規律派」と目される与謝野馨氏は総合経済対策の早期実現を口にしながらも、一方で持論の消費税増税を念頭にした「社会保障税」を提言しており、腰が定まっていない印象である。
民主党代表選で三選を決めた小沢一郎代表は、一人月額二万六千円の「子ども手当」や
農家への戸別所得補償、高速道路無料化など、昨年夏の参院選のマニフェスト(政権公約)を踏襲した経済政策を打ち出している。財源についての言及がないうえに、「ばらまき」の印象もぬぐえないが、景気対策として見た場合、効果は十分期待できる。批判も大いにすればよいが、具体的な対案を示したうえでの活発な論戦を期待したい。
◎小沢民主党に望む 整備新幹線の扱い明確に
無投票三選が決まった小沢一郎民主党代表に注文したいのは、次期衆院選に向けて策定
を進めるマニフェストで整備新幹線についての考え方を明確にすることである。従来通り、あるいはそれ以上に推進するのか、それとも建設計画を見直すつもりなのか。これまでは、大都市と地方の両方に配慮してあえてぼかしてきた感もあるが、本気で政権を狙うつもりなら、もはやそんな姿勢は許されまい。
おそらく、現時点では多くの有権者が「民主党は整備新幹線には消極的」との印象を持
っているだろう。民主党はかつて、他の野党と連携して整備新幹線や道路、港湾事業などの見直し削減を盛り込んだ予算組み替え要求を出したこともあるからである。一方、同じ民主党でも整備新幹線の沿線国会議員に是非を問えば、まったく反対の答えが返ってきそうだ。
これまでの選挙は結果的に政権交代につながらなかったから、あいまいなままでも大き
な問題は起きなかった。ただ、次の衆院選後に本当に民主党を中心とした政権が誕生したとしたら、そんなわけにはいかない。
石川、富山県では、待望の北陸新幹線開業をにらんで「二〇一四年」対策が加速してい
る。JR金沢、富山駅周辺の地価などを見ても分かるように、地域浮揚への期待も大きい。もし、民主党中心の政権の下でいきなり北陸新幹線の開業時期が遅れたり、あるいは整備が凍結されたりしたら、影響は計り知れない。せめて既着工区間の扱いくらいは衆院選前にきちんと説明してもらわなければ、有権者が困るのである。
もちろん、自公両党にも整備新幹線に批判的な向きがいないわけではない。それでも、
曲がりなりにもここまでレールを延ばし、現在も工事を進めているという実績が、彼らの考えを何よりもはっきり表している。ことあるごとに寄り合い所帯の側面が顔をのぞかせる民主党の場合、意見をまとめる作業にも困難が伴うかもしれないが、有権者に政権担当能力を示す意味でも、それを乗り越える必要があるのではないか。