07年度に民間会社に業務を請け負わせた刑務所や拘置所など全国72の刑事施設のうち、約9割の64施設が請負会社の従業員を直接指揮したり、勤務時間を定めたりしていたことが、朝日新聞社の法務省への情報公開請求でわかった。直接雇用や派遣の契約を結んでいない労働者の労務管理は「偽装請負」にあたり、労働者派遣法などに抵触する。同省は各施設に改善を指導した。
労働者派遣法は、請負会社の従業員を直接指揮・監督する場合、受け入れ会社は労災防止などの安全管理責任を明確にするため、「派遣契約」を結ぶよう定めている。しかし、64施設は、実態は施設側の指示で働く派遣労働者なのに、労務管理を請負会社に任せねばならない業務請負契約しか結んでおらず、「偽装請負」の状態だった。
兵庫労働局は昨年12月、業務請負契約で働いていた事務員や管理栄養士を直接指揮し、勤務時間も管理していたとして、労働者派遣法に基づいて神戸刑務所に是正を指導。これを受け、法務省が全国の72刑事施設(刑務所53、拘置所7、少年刑務所8、医療刑務所4)を調査した。
この結果、07年度、71施設が総務や受刑者の処遇部門で主に人材派遣会社に業務を請け負わせ、510業務で従業員の派遣を受けていた。従業員に直接指示や命令をしていたのは45施設計241業務、勤務時間を定めていたのは59施設計434業務、勤務状況の管理は28施設計245業務に上った。また、60施設では請負会社の業務管理責任者が常駐していなかった。
このうち刑務所では、53施設のうち47施設で直接指示などが見つかった。
法務省矯正局は調査結果をもとに今年2月、請負会社側の業務管理責任者を定め、常駐させるように各施設に指示した。管理責任者を通じて、請負会社の従業員に指示を出すという。担当者は「業務請負契約が年々増える中で各施設ともチェックが甘くなっていた」と話している。(宋光祐)