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【産科医解体新書】(3)厳しいけど頼りになる先輩 (1/2ページ)
素人同然の僕らにプロとしての自覚を持つように教えてくれたのは、先輩であり指導医であった数人の医師たちです。
先輩たちは怖かったけれど、頼りにもなりました。いつ、どんなトラブルがあっても、彼らは確実に助けに来てくれました。普段姿が見えない先輩たちは緊急事態になると突然現れ、僕らを驚かせ、同時に安心させてくれたものです。当直でもないのに、まるで病院のどこかに住んでいるかのようでした。
チームで仕事をするときには、そんな先輩の一人からよく質問されました。「おまえは、お産がどこまで進んできたら安心できる?」。「正常なら、子宮口が全開になったくらいですか」。軽い気持ちで答えた僕はこっぴどく叱(しか)られました。「正常か異常かいったいどこで判断できる?」と。患者さんの手前、口調は穏やかでしたが、後にはさらに厳しい叱責(しっせき)が待っていると思い、落ち込みました。
分娩(ぶんべん)が進行し、赤ちゃんの頭が見えるようになったときに、その先輩は言いました。「おれならこの状況になれば安心するよ」。「はい、分かりました」と名誉挽回(ばんかい)とばかりに答えたところ、また雷が落ちました。「おれならこの場面からたとえ骨を折ってでも出せるけど、おまえはまだできないだろう! 何が『はい』だ!」と。お産では赤ちゃんの頭が出ても、その後にトラブルが発生することもあることを気づかされました。