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タクシーに乗った時、朗らかな運転手さんと、話が弾むことがあります。
時節柄、年末年始の勤務のお話になると、私の職業に話題が移ります。
「産婦人科の先生なんですか。最近は減っていて、大変なんでしょう?
この前もテレビでやってましたよ」
・・・う〜ん、随分一般に認知されるようになったのね、うふふ。
「でも、最近は赤ちゃんも減っているから、そうでもない?」
「いえ、お産は産婦人科医の仕事の、ごく一部なんですよ。他にも不妊治療や、生理不順、子宮筋腫、
子宮や卵巣のがん、更年期障害の治療なんかも産婦人科医の仕事なんです」
「へえっ、そうなんだ。がんも産婦人科の先生が診るんですね〜」
・・・そうなんですそうなんです。
「でもさ、そんな一生懸命働いている先生もいるかと思えば、ほら、たらい回しとかあるし」
・・・出たっ!
「たらい回しって、本当は全然ちがうんですよ。本当に引き受けられなくって、泣く泣く断るんです」
「ええっ? そうなの」
「そうですよー、断る方だって、痛くて、辛くて、たまらないんです。
でも、手術中に ”今から救急車で行きます” って言われても、
来てもらって、手術終わるまで待っててもらったり、手術を途中で止めちゃったりするわけ、
行きませんから。心の中で ”ごめんね〜”って言いながら、断るんです。
で、手術が終わると、あの妊婦さんと赤ちゃん、どうなったかな、ってとっても気になるんですけれど、
忙しいとわかっている救急隊に、電話して ”どうなりましたか?” って聞くわけにもいかないし」
「ふ〜ん・・・全然知らなかったよ。ほら、新聞にはすごく悪いことみたいに、書いてあるからね。
何でもちゃんと聞いてみないと、わからないもんだね」
・・・少しは産科医療の現状を一般に伝える、助けになったかな。
その運転手さんは定年退職後の方で、朝6時から夕方まで業務をした後、
90歳を越えるお母様の、介護をなさっているそうです。
現役の仕事を全うしながら尚、真摯に生きる年長者の姿に、感動。
降り際、運転手さんは私にしっかり身体を休めるように、と
私は運転手さんに、お母様を大切になさって下さい、と言い合って、別れました。
心温まる時間でした。
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コメント
コメント一覧
>何でもちゃんと聞いてみないと、わからないもんだね
本来、『ちゃんと現場の医師の意見を聞いて』報道がなされていれば、こうした方たちが誤解せずに済むと思うのですが・・・
センセーショナリズムによって得をしているのはマスコミ自身のみ。
でも、たった一人でも、誤解を解いてもらえてよかったと思います。
また、医療の分野ひとつとってこの様子ですから、
他分野も同レベルの報道がなされているものと考えなくてはならないと思います。
心ある人にわかって頂けて、よかったと思っています。
「マスコミが得をしている」のも、今だけでしょう。
印象操作は、読者を欺く卑劣な行為です。
繰り返していたら、読者は離れて行くでしょう。
産婦人科・小児科のドクターが特に少なくなっているのは、その診療科がキツい勤務である事を避けていて、それが悪循環になっているような気がするのですが。(夜中も休日もないと聞きます。私の職場は、マンションの管理会社に近い部門ですが、住み込みの管理人さんも、それこそ夜中も休日もない時があるそうで、通いのマンションが増えています。)ちょっと話がズレましたね。
全国的産科医不足という観念でいましたが、珍しく感じない地域というのも稀ですがあります。
タクシーの運転手さんの知識は運転中のラジオ放送が主でしょうから、【たらい回し】という言葉だけが耳にこびり付いているのかもしれませんね。
「産科医不足」は皆に認知されてきたのに、「足りないからってどっかに患者を送っちゃうんだな。」というイメージなのでしょうか?…みんな精一杯頑張っているということ…わかってもらえるといいですね。
昨今の医者不足は、わんこさんのおっしゃるように「きつい勤務」が一因と言われています。
普段、自分の健康には無頓着な人でも
お腹の赤ちゃんのことや、お子さんのことだと、ちょっとしたことでも心配になってしまうのでしょうか。
考えようによっては、親心の表れなのかも知れませんね(笑)。
九州地方は、産科医療の体制がしっかりしているのだと
現地の方からお聞きしたことがあります。
なんだかうらやましいお話です。
ただ、一般の認識は東京近郊でも今ひとつですね。
看護師でも「えー、産婦人科医って足らないんですか?」
と言う方がいました。
ところで(笑)。
前記事に頂戴したコメントで
「もしかしたら、あの方かな・・・?」
と思っていたのですが、まちがっていたらごめんなさい、
海の向こうの青い空の下からお戻りになった先生ではないでしょうか。
足りないからどっかに患者を送っているという一面はあるかも知れませんね(笑)
うちの病院だって、産婦人科医も助産師も、今の倍の人数いたら・・・
なあんて夢みたいなことを考えてしまいます。
こういう「ふつうの人」に真実を広く知ってもらうのって、
どうするのが効果的なんでしょうか。
どんなにブログに現場の真実を書き連ねても、マスコミの威力には叶わないのが、
悲しいところです。。。
>お腹の赤ちゃんのことや、お子さんのことだと、ちょっとしたことでも心配になってしまうのでしょうか。
少子化の昨今、初めて経験する方が多いのでしょうか?
核家族化で「これくらいは大丈夫」と教えてくれる人(お母さんのお母さん)も近くにいない様ですしね。
彼女の通った(入院・出産した)病院は産科医2人で年間450分娩だったらしく、
「余りにもお医者さんが働き詰めで患者の私の方が心配になった」
と言っておられました。
見える人には見えているのかなと思うのと同時に、直接見たりしない限りは理解して貰えないのかなとも思いました。
ほとんどの方にとっては所詮他人事というか、医者の労働環境なんか知ったこっちゃねえ・・・のでしょう。
「たらい回し」、インパクトがありますよね。
しかし、春野ことり先生がTB下さった記事のコメント欄に書きましたが、
この「たらい回し」という言葉、患者さんにとっても何て失礼な言葉なんだろう、と常々思っていました。
インパクトさえあればよいと考えているのだとしたら、
とてもさもしいことだと思います。
一般の人に知って頂くための妙案はありませんが、
医療に興味を持つ人に、丁寧にお話していくことだろうと思っています。
そうですね。
こんなところにも、核家族化の影響が出ているのかも知れません。
お産を経験された方が、現場の実情をご理解下さることは
私たちにとって、とても意味のあることだと思います。
「たらい回し」「それでも医者か」などと心ない言葉を綴って平気な人たちも、
現場を目の当たりにする機会があれば、また違ってくるかも知れません。
私の職業を言うと,「大変ね」とは言われるのですが,何が大変かというと?です。本当に大変なことになっているのは,産むお母さん方の環境だと思うのです。もっと,みんな,わかって欲しいな。でも,どのような手段があるのでしょうね。
それと,私も助産師という職業から,新たなブログを作ってみました。少しでも,ポジティブなメッセージを届けることができたらいいな,と考えています。なな先生のブログには到底及びませんが。先生のブログのリンクをはらせていただけたら,と思うのですが・・・
> 本当に大変なことになっているのは、産むお母さん方の環境
これは私自身も非常に強く感じます。
地方ではどんどんお産のできる病院が減っているのは,今さら言うまでもありませんが、
お腹の大きな女性が、自分で車を運転して1時間も2時間もかけて健診に通っているなんて、
異常です。
都内だって、健診時の待ち時間は長くなる一方、
母体搬送の受け入れ先探しは、困難になる一方です。
より安全に、より快適にという妊婦さんのニーズと我々の願いに
完全に逆行していますよね。
つい熱くなってしまいました(笑)
リンクの件、光栄です!
なな&なな、ちょっと良くありませんか。
医学科5年生の学生のものです。
なな先生のブログ、興味深く読ませていただいています。
産婦人科医をなさいながら、精力的にブログを書かれていて、本当にすごいと思います。
たらい回し・・・比較的最近できた、切ない言葉ですよね。
妊婦さんはもちろん、医師にとっても本当につらい状況だとお察しします。運転手さんの話のように、マスコミも救急搬送を断られたということだけを伝え、その背景のドクター不足などをしっかり伝えているかというと、「?」マークのつく報道もありますよね。
地方を中心とした医師不足、特に産婦人科医の不足、という状況が少しでも良くなっていってくれれば、と願うばかりです。
ちなみに、私の周りでは、産婦人科を希望する友人は多いですよ☆
あと、なな先生のブログをより多くの人に知ってもらいたいので、よろしければ私のmixiにリンクをはらせていただいてよろしいでしょうか?
もし、やめてほしいなら、そういってくださって結構ですので。
では、お邪魔いたしました。
お体にお気をつけてくださいね★
医学部の学生さんが、医師不足の問題に関心を持って下さって、
頼もしい限りです。
産婦人科を希望される学生さんが多くいらっしゃるとお聞きして、
これも嬉しいのですが、
例えば私の同期の場合、臨床経験が10年越えた時点で
産婦人科医として勤務している医師の割合は、5割でした。
正直なところ、現状で産婦人科医になることはお勧めできないと思っていますが、
それでも希望を持ってこの道を選んでくれる若い医師がいるのなら、
大切にしたいと考えています。
リンクは大歓迎です。
一人でも多くの方に読んで頂いてこそのブログです。
ありがとうございます。
はじめちゃんさんが、豊かな学生生活をお送りになりますように。
>正直なところ、現状で産婦人科医になることはお勧めできないと思っていますが、
センセがこんな風におっしゃるのは?ですよ。
>大切にしたいと考えています。
大切にしてしてあげて下さいね。
今日たまたま知り合いになった方が薬剤師さんで、私が「FMSです」とカミングアウトしたら、2人だけ「あ〜ノイロトロピンとガバペンが効くんですね』なんて薬の話で盛り上がっちゃって、周りが若干引いてました。
あ、ここでは引かないで下さいネ。
今日は、寒いですね。
> センセがこんな風におっしゃるのは?ですよ。
私が産婦人科医になった頃に比べると、
医療を取り巻く環境は変わり果ててしまいました。
研修はしにくくなり、労働環境は悪化し、訴訟が激増しました。
産婦人科医になって数年の間は
「産婦人科はいいよ、産婦人科においで」と言っていたのですよ・・・
こちらでも(本州のはじっこ)産婦人科を取り巻く環境は酷いもので、うちの病院では月9回の当直と8回の待機当直をこなしております。当然当直明けのお休みなんてものはありません。
私も先日タクシーの運転手さんとお話しておりましたのですが、やはり「お産だけ」しているのが産婦人科のお医者さんと思われておられたようです。
おまけに、「少子化じゃから産婦人科も儲からんけーどんどん医者が少なくなっちょるんじゃろ」と。いたたた~~~っと思いまして、切々と語りました。
育児、家庭との両立と思って頑張ってはいるものの、呼び出されると、例え鍋かけてても家事すべて投げて行かないといけんし、ましてや自分の子供が寝込んでいても呼び出されるし、お弁当がいるんよ~って可愛い声で頼まれていても明け方呼び出されてお弁当箱がそのまま放り投げてあったり。。。ダンナの我慢にも限界があって親子三人の生活で主婦&医者をこなそう思ったら寝る時間をひたすら削って両方をこなさんといかんし。
たまの休みに病院行かなかったら「あれ?先生ってお休みがあるんですか?」なんて言われたりして。
運転手さんいわく、
「わしらーの仕事もやれんが、先生らーの仕事もやれんの~。文句ばーっかし通るんじゃから、おかしいで。学校も、病院も本当におかしい。日本がどねーかなるで・・・身体壊さんようにしーなー。子供さん大切にするんじゃよ。」
それ以来、ついついそこのタクシー会社さんばかり頼んでいます(^0^)
すみません、なんだか筋の無いだらだら話しで・・・・・・・明るい話が最近無いので仕事する意欲がなかなか・・・・でもつい先ほどの分娩で患者さんから「先生がお産当番のときでよかったわ~ありがとう、先生!鼻からスイカって本当ね~頑張ったわ!」と明るい声を頂きました。これでしばらく頑張れますわ。
それでは失礼します。
先生の奮闘振りが生き生きと綴られている文章、
楽しく読ませて頂きました(笑)。
仕事のことになると、お鍋もお弁当も後回しになってしまうという日常、
とってもわかる気がします。
こんな私たち産婦人科女医を支えてくれるのは、
患者さんの「先生がいてくれてよかった」の言葉と、
周囲の人たちの、やさしいひと言のように思います。
時間的にも身体的にもカツカツな昨今、
心には余裕を持って臨床をしたいですね。
今度ともよろしくお願い致します。
私の学校では今、総合の時間に「福祉」について調べ学習をすすめています。
そして私は医療についての問題点や改善点、現状などをまとめています。
ななさんのこの記事は実際に働いている方からの視点でかかれていて、とても参考になりました。
是非、この記事を私のまとめに加えたいのですがよろしいでしょうか。
ご参考になって光栄です。
公開しているものですので、どうぞ加えて下さい。
医療の問題に興味を持って下さる学生さんの存在を、とても心強く思います。
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