日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 |
妊婦さんを搬送する際に、搬送先が見つかりにくいことが問題になっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
http://mainichi.jp/select/science/news/20071026dde007040022000c.htm
妊婦搬送:3回以上照会、667件 27回、3時間半も----消防庁06年調査
消防庁は26日、奈良県の妊婦が救急搬送中に死産した問題を受けて実施した妊婦救急搬送の実態調査結果を発表した。06年に全国の消防本部で出動した救急搬送3万4917件のうち、受け入れ病院が決まるまで3回以上の照会を必要としたのは667件で、このうち45件は10以上の医療機関に受け入れを断られていた。東京都では、かかりつけの医師がいない女性の搬送で、27回もの照会が行われ、通報から搬送まで3時間半を要したケースもあった。
受け入れを3回以上断られた件数が全体に占める割合は、04年の0・9%から05年に1・3%、06年に1・9%と増加している。10以上の医療機関に受け入れを断られたのは北海道、茨城県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県、埼玉県、宮城県、千葉県で、首都圏など都市部で照会回数の多さが目立つ。
一度も受け入れを断られずに病院に搬送したのは3万2249件だが、救急車が到着しながら、受け入れの照会のため現場で30分以上待機を強いられるケースも1012件に及んだ。受け入れを断られた理由は、機材やスタッフが整わないといった「処置困難」が26・6%、「手術・患者対応中」(17・2%)、「専門外」(11・7%)など。【与那嶺松一郎】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「母体搬送」という制度があります。
例えば、妊娠30週くらいで破水してしまった妊婦さんや、妊娠高血圧症候群が悪化して、
その病院では管理しきれないような場合、
より高次の医療機関に、妊婦さんを救急車で搬送する制度のことです。
病院から病院へ、多くの場合は産婦人科医が同乗して、救急車で移動します。
この母体搬送の必要性が生じた場合に、産婦人科医が取る行動を紹介します。
東京都には、母体搬送の受け入れ可否を掲示したネットワークがありますが、
リアルタイムの情報を反映していない場合がありますので、
電話をかける方が、確実です。
まず、何件も電話をかけなければ搬送先が見つからない場合がほとんどですから、
外来や病棟など、予定していた業務を全てストップします。
そして外線電話の前に、メモ用紙と、搬送先の電話番号一覧を持って、座り込みます。
依頼先の病院に電話をかけても、まずはあちこちの部署に転送されますから、
待っている時間が長くなりますので、その間に、妊婦さんのそれまでの経過を記した紹介状を書きます。
電話をかけ、あちらの担当の産婦人科医に母体搬送の依頼である旨と、妊婦さんの状況を説明すると、
上級医師や、小児科・NICU、場合によってはope室に搬送依頼を受けていいかどうか、
確認する必要がありますので、
時間がかかりそうな場合は、一旦電話を切ります。
切ってから、折り返しの電話をもらえる時間が、またかなり長くなり、
15分くらいは、当たり前です。
その間に、他の病院を当るわけにはいきませんので、ひたすら待ちます。
そして、ようやくかかってきた折り返しの電話でも、
冒頭の新聞記事にあるが如く、
他の患者さんにかかり切りで人手がなかったり、手術に入っている最中だったり、
あるいは満床だったりで、受け入れられないと言われることが、よくあります。
受け入れ不能の返事をもらうと、最初に用意したメモ紙に問い合わせた病院名を書き連ねて行きます。
このようにして断られ続けるのが普通です。
1件目で見つかることなど、まずありません。
3件目で見つかったら「ラッキー!」という感覚です。
仮に3件目で見つかったとしても、搬送先を探し始めてから、軽く30分以上経過しています。
タイミングが悪いと、10件目くらいでようやく見つかることもあります。
そうすると、どう見ても1時間は探し回っている計算です。
以上が、産婦人科医から産婦人科医へ、搬送を依頼した場合の概要です。
妊婦さんのそれまでの経過を正確に把握して、専門家同士で端的に説明しても、
それでも、このくらいの件数と時間がかかるのが普通です。
固定リンク | コメント (21) | トラックバック (3)
コメント
コメント一覧
産婦人科医2人以上?(搬送元、搬送先)、
小児科医、NICUのスタッフ、手術室のスタッフ、
救急車の運転手(2人?)、事務の人?等々、
総勢何人の人が動くのかと思うと、
すごく人手がかかるんですね。
1時間くらいはあっという間なんでしょうね。
運良く見つかっても、またそこから搬送となると、
道路の混み具合もあるし、距離が遠いともっと時間が...。
送る側の先生も大変ですが、送られる側の先生って、
もっと大変かも...。三次救急なら、もう後ろがないんですものね...。
ニュースの記事の3万2249件は、こういう作業を3万2249件もこなされているということですね。
気が遠くなるような数字です。
かかりつけがあっても、何度も照会しないと
搬送できないのに、その中に割って入ることになる
飛び込み分娩というのは、やはり一番の問題ではないかと
思ってしまいます。
大淀町立の産科医が不憫です。
野良妊婦と呼ばれる妊婦さんは自己責任能力のない方で本来なら同情したくないのですが、お腹の赤ちゃんには罪なしですから現場の産科医は頑張らなくてはなりませんよね。
一般の方にこの現状が届けられたらよいのですが、日本のメディアはいかんせん、、、
私は新人で就職したところがこれにあたっていました。
民間病院でそんなに大きなところではなかったのですが,公立病院は満床でいつも断られ,最終的にうちの病院に回ってきて,救急隊の方から「もう,どこもないのです」と悲愴な感じで頼まれて受け入れるといパターンが多くありました。
そこにお産などがかちあっていたら,本当に大変です。特に深夜勤。誰かスタッフを呼び出さないと対応は無理で,よく,呼び出されていたことを思い出します。
日本のマスコミの方,人の悪口とか必死になって放送するんだったら,危機的状況にある産科医療,小児科医療をもっときちんと報道してください。お願いです。
さて、救急患者や入院患者の病状が重くなり、より設備のある病院へ送る、..、
これは、私も一人当直の内科救急でよく経験しました。
腹痛で運ばれた患者が急性腹症でどうしても外科のある病院へ送らなあかん!
酔っぱらって意識消失発作をおこしたおっちゃんが、運ばれたときは元気だったのに、点滴しながら様子を見てたら、急に苦しがって血圧低下、ST低下で慌てて循環器の充実している病院へ送る..、
倒れていた、というだけで運ばれた患者が、意外に元気だけどどうも統合失調症らしく言ってることが意味不明、精神科の病院を探す...、
時には気が遠くなるほど搬送先が見つからない...
15年以上前からありましたね。救急体制の不備...。
(病院の多い京都市内でさえ!)
政府も厚労省も、無視し続けた結果、今があります。
送る側にも、送られる側にもいずれにもいたことがあります。
送る側は、少なくともあらかじめわかっているハイリスク症例は早い段階で紹介しておくことが必要と思います。たとえば一次施設での双胎管理。MDであろうとDDであろうと、現状では一次施設で管理するのは無謀で当然NICUのある施設で管理するべきです。ただそれがお分かりにならない一次施設の先生が少なからずいらっしゃる。で、たいていPPROM、やら早い段階での一児IUFD、すでに完成したTTTSなどなど、どうしようもなくなっての搬送依頼は、受けてもらえるのはかなり困難です。
そんな状況であっても、送られる側は、送る側の状況を充分理解し、最大限受け入れるための努力をしたいものです。自施設がNICUもあって、麻酔科もいるから相手は搬送を依頼してきているだけなのに、自分より年配の先生に対して、若気の至りか無下に対応する若い医者は困りものです。
立場が変われば、当然お願いするとかお願いされると変わりうるわけですから、医療従事者であるからこそ、お互い配慮を持って対応したいものものです。
数字を分析なさっているところは、さすがですね(笑)。
> かかりつけがあっても、何度も照会しないと
搬送できないのに
今回の記事で一番言いたかったのは、このことです。
かかりつけ医がいる、つまり妊娠経過を医学的にある程度は保障されているにもかかわらず、
搬送まで1時間は当たり前なのですから、
感染症をはじめ、何が潜んでいるか全くわからない妊婦さんは
そう簡単に受け入れ先が見つからないのが、むしろ当然ではないでしょうか。
お腹の中の赤ちゃんを、きちんと大切にしてほしいものです。
そう、これは東京のお話というところも重要なポイントと思います。
ちなみに東京では、以前は母体搬送の救急車に同乗すると、
帰りは自分の病院まで送ってもらえましたが
最近は、搬送先の病院で産婦人科医だけ落とされて、
救急車は、次の仕事に行ってしまうようになりました
(当然と言えばそうかも知れませんが)。
これを知らずに、地方病院赴任から東京に戻ったばかりの時、
搬送先の病院の玄関に、分娩衣の上に白衣の格好のまま置いてきぼりにされて、
その姿で電車に乗って帰った、とほほな経験があります(笑)。
搬送依頼の電話は、ope中でも分娩中でも、
容赦なくかかってきますよね。
opeの途中で手を止めて、ナースに受話器を耳にあててもらって
救急隊の人と交渉をすることもあります。
救急隊の人もまた、必死です。
> 日本のマスコミの方
助産師さんのこういう声、マスコミに届いているのでしょうか。
産科医の声が届かないのであれば、助産師さんの声を聞いてほしいのです。
お久しぶりです(笑)。
内科のこのようなお話、具体的にお聞きして
背筋の凍る思いです。
それも、恐ろしいですね・・・
最近、妊婦さんの搬送困難の記事が花盛りですが、
産科の問題から、こうして新聞に載せるようになっただけでも
もしかしたら進歩と言っていいのかも知れませんね。
内科も外科も・・・となれば、皆が自分のこととして
真剣に考えてくれるかも知れません。
送る側・受ける側、両方を経験するのはむしろ必須と言っていいかも知れません。
私自身も、KEIさんと同じように
両者の切実さを理解できる経験を持っており、貴重なものと感じています。
送る側に回った時、はるかに若いドクターの横柄な態度を見たことも(苦笑)。
医療者同士の関係は、そのまま患者さんの利得に直結します。
送受どちら側に回っても、患者さんのためにも真摯な態度で
ありたいと思います。
とても参考になる話でしたので、ブログで紹介させて頂きました。
また、トラックバックも頂きました。
経験しないとなかなか現実的に考えられないのは私も同じなのですが、こうやって現場の方の話により、想像に具体性を持てるようになって来ました。
皆さんからのコメントもとっても参考になります。
ありがとうございます。
母体搬送の具体的な状況をお伝えするのが目的で書いた記事でした。
気持ちを読み取って下さって、とても嬉しく、「わが意を得たり」です。
実は、私自身もこのような現場が日常になってしまっていて、
1件電話をする毎に15分近く待って、それを数件、などという現実を
何とも思わなくなっていたのでした。
他科の先生にこの話をしたら驚かれていたので、
「ああ、普通じゃないんだ、これ」と思うに至った次第です。
それから、お伝えしたい過去記事があります。
亡くなった赤ちゃんを、私たちもいつまでも覚えています。
http://blog.m3.com/nana/20061009/1
実は訪問させていただくようになって随分経ちます。
いつも貴重な情報をありがとうございます。
現在妊娠中なのですが、本当に発信していただく情報やお言葉に助けられています。
トラックバックさせていただきました。
よろしくお願いします。
自分自身の入院は本当に恵まれていたなぁと自覚できる内容でありがたかったです。
私も搬送受ける側、送る側両方経験しています。
医者になりたて1年目の時は周産期センターで仕事していました。地方の県でしたが、ほぼ県全域の母体搬送を一手に引き受けており、緊急帝王切開も数多く経験しました。
そこではセンター長が産科のDrで、とにかく「母体搬送は断らない」という方針でした。実際私が知る限りでは断った例は1-2例だったと思います。(NICUの空きがなく、隣県の病院へ依頼しました)
産科がOKでもNICUはいっぱいのことも当然あるわけで、新生児科のトップとセンター長(産科)とは相当仲が悪かったように思います。それでもどうにか搬送を受けられたのは新生児科の先生たちのおかげです。
そのセンターでの搬送受け入れはすべてセンター長に連絡をし、センター長が新生児科医と折衝してくれていました。
当時はセンター長をワンマンで怖い上司と思っていましたが、週に多くて2-3例の搬送をほぼ100%近い割合で受けていたのはあのリーダーシップあってのものなのかなと今は思います。
一番下っ端の研修医は上のDrと一緒とはいえ、2日に1回の当直をこなし、正常分娩も夜中に多いときで5-6例取って、そのうえ搬送の妊婦さんも管理し・・・とほんとに大変な日々でしたが、その経験があっての今の自分だと思っています。
東京のような比較的病院の多い都会でも、私のいる地方でも周産期医療の崩壊は徐々に、でも確実に進んでいる気がします。
私たち医療者はどうしたらいいのか、私には答えが見つかりません。
分娩をしているクリニックで働いている助産師です。いつも先生のブログで、立ち止まり考える機会を頂いています。ありがとうございます。
今のクリニックでも、以前働いていた総合病院でも母体搬送を送る側ですが、待つ間は本当にどきどきします。電話の前にずっと座っていらっしゃる先生方の気持ちも、搬送先がどうなるのかお腹が張りながら待っていらっしゃる妊婦さんとその御家族の気持ちも、そして受け入れを断らざるを得ない側の先生方の気持ち、あるいは受け入れを決めてくださって待つ側のスタッフの気持ち・・・いろいろな事を考えて本当に長く感じられる時間です。
ここ20年で日本の周産期医療は格段に進歩したと思います。そんな時期にまさかの医師不足で、足元から医療がくずれていく感じです。さらに母体搬送や新生児搬送が厳しい状態になりそうです。
今の出生数に対して、どれぐらいの周産期医療センターが必要なのか、どれだけ不足しているのかという点での改善と将来のための整備も必要だと思います。設備やマンパワーは限りがある現状で、私たちクリニックのような一次施設に働くスタッフにできることは何か。うん十年前に助産師学生だった時に教えに来てくださった新生児科医の先生が、「あなたたち助産師の大切な仕事は、妊婦さんを早産にさせないことです」といわれたことをずっと覚えてます。もちろん保健指導だけでは防ぎ得ない状態もありますが、切迫早産にしないようにあるいは進行させないためにできることがあることを考えさせてくれた授業でした。
なな先生のように現状をうまく伝えてくださるブログがあるおかげで、いろいろな方の思いや意見が伝わってきて、本当に勉強になります。お会いしたことがなくても、なんだか一緒に働いているような気持ちになってうれしいです。
早速読ませて頂きました。
ありがとうございます。
(コメントも残させていただきました)
でも、毎回読ませていただいていますからね。
>東京都には、母体搬送の受け入れ可否を掲示したネットワ>ークがあります。
このネットワークの事を、少し前にテレビの特集番組でも取り上げていました。でも、リアルタイムで情報を反映していないと、何のためのネットワークなのかって、今回のなな先生の記事で、思ってしまいました。
東京都はオリピックをするよりも、こういう方を早く解決することが先決じゃないの?って思ってしまいました。
今回のブログもとても勉強になりました。ありがとうございます。今の厚労省の大臣にもぜひ、読んで欲しいと思います。
TBありがとうございます。
妊娠中なんですね。
妊婦さんの言葉は、産婦人科医にとって格別の重みがあります。
温かいコメントを頂戴すると、真面目に医者をやっていてよかった、
ブログ書いていてよかった、と思います。
ご健康にお気をつけて、
是非良いお産をなさいますように。
貴重な体験をお話して下さって、ありがとうございます。
「最後の砦」の病院にご勤務されていたのですね。
どこも受けられないような重症例も、時を選ばずにやってきますから、
そのプレッシャーは、非常に重いものなのではないでしょうか。
それにしても、産婦人科と小児科のトップ同士が仲が悪いとは、
大変でしたね。
何よりも妊婦さんにとって良いことはないので、
産婦人科・小児科に係らず、トップ同士は仲良くあってほしいものです。
産科医療崩壊に関しては、なす術がわからない、というよりは
なす術は存在しないのではないかと最近思います。
目の前に患者さんがいるから続けているだけで、
先の見通しはわかりませんね・・・
新生児科の先生らしい教えの言葉に、感動しました。
母体搬送は、送り先が見つかるまでの時間もはらはらですが、
救急車に同乗して、渋滞があったりするとやり切れない気持ちになります。
あの立場に立つと、路上駐車が憎くなります。
取り締まりを始めた頃は一時的によくなりましたが、
最近また、たった一台のために一車線が使えなくなっている光景を目にします。
救急車の前を平気で横切る人も、多くいます。
モラルの低下が、こんなところにも顔を出しているのかも知れません。
現状がうまく伝わってくれているといいのですが(笑)
分析力がないので、現状をとつとつと語るというスタイルを取って来ました。
戦友である助産師さんの目にとまってくれて、嬉しい限りです。
今後ともよろしくお願い致します。
お元気でしたか。
オリンピックと比較する視点は、私にはありませんでした。
面白い発想ですね(笑)。
ブログを書いていると、到底自分では思いつかなかったことを教えて頂いて、
はっとすることがしばしばあります。
母体搬送のシステムは、ずっと前からあります。
でも、本当に困った時には
頼みやすい先生のところに直接お願いしたり、
逆に願いされたり、というのが現実でしょうか。
この世界もまた、人間関係は重要です。
コメントを書く