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あかりさんの死産は、医療現場にいくつかのものをもたらし、
いくつかのものを浮き彫りにしました。
来院から17分後に児娩出、という帝王切開は
恐らく全国レベルで最速記録を争える速さです。
休日なのに、偶然他の手術が終わった直後でope室の人手があったこともありますが、
何よりも、病棟スタッフたちの迅速で的確な判断が、この速さを可能にしました。
来院したあかりさんを診察した瞬間に、ope室と小児科に連絡をしたのですが、
私が振り返った時には、あかりさんは点滴、導尿、剃毛が済んだ状態で
ストレッチャーに横になって、すぐにope室に向える状態になっていました。
あの判断力と手際は賞賛に値しますので、
病院の看護部長室に、その旨説明に行ったところ、
看護部長から、賞賛の通達が来たそうです。
病棟全体の士気を上げるのに、大きくプラスに働きました。
この日は、他に産科当直医がいたのですが、
分娩直後の難しい処置中で、手術に入るのは厳しい状況でした。
手術室に居合わせた外科の先生に入って頂く方が早いと判断し、
外科の先生と2人で帝王切開をしました。
私の勤務する病院は、都市部にあります。
都市部の産婦人科でさえ、外科の先生と帝王切開をすることがある、という一例になりました。
非常に恐ろしい帝王切開でした。
一秒でも遅れたら、次の鼓動で赤ちゃんの心臓が止まるかも知れない、という極度の緊張は
一度味わった者でないと、理解できないかも知れません。
そのような帝王切開に立ち会った麻酔科医、ope室ナース2名、小児科医、私に対する報酬は
ゼロ円です。
opeが終わり、病棟に戻っていくあかりさんを見送った後、
ope室の床にへたり込みました。
術衣のまま、帽子とマスクのまま、床の上で、動けなくなりました。
この日、たまたま当番だったope室の師長が、
床にへたり込んだ私の頭をそっとなでてくれたのを
今でも覚えています。
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コメント
コメント一覧
いつもななせんせいの思慮深い内容にいろいろお勉強させてもらっています。
私も昔オペ室で働いていましたが、世間の人にはテレビで見るような「お医者さんの汗を拭くの?」とか、「メス!って渡したりするのよね」見たいな表面的なことしか言われず、まあ、わからない人に説明するのも面倒だったので適当にやり過ごしていましたが、本当はみんなが想像も付かないようないろいろなことがあるのよーと心の中でつぶやいていました。
どんなに大変でも、よい方向に向かえば達成感を感じたものでしたが昨今の状況を見ていると、辛いものがありますね。
どうぞ先生、ご自分も大切になさってくださいね。
ディア・ハンターの中に出てくるロシアンルーレットから生きて戻る、そんな心境です。
私も、以前はメスを握っていたわけですが、外傷などの出血性ショック状態でのOPでは、1分1秒を争い、出血源探しと止血に、喉から心臓が飛び出してきそうなほどの緊張をしたことを思い出しました。
そんなときは、やはり術場で床にへたり込んでいました。
みんな一緒なんですね。
分野の違う医療関係(お子様多し)に携わっておりますが、
命に対するなな先生の真摯で前向きで楽観的な態度には拝読する度頭の下がる思いがいたします。
モンスターといわれて久しい気のする親御さんたちが一部にいらっしゃいますが、その思いもこうして生まれてきて、その腕に擁いた過程があるんだよな・・・と、10歳未満のお子方の監督不良は親の責任ーっと思いつつも一応暖かい目で診ることができます。
責めず、妥協せず、前向きに。楽観性は大事ですw。
(でもできれば監督して欲しい^^;)。
命が増えることは当然ではない、それを支える母体や家族や医療関係者がいるからこそなんだと心に刻んでこれからも向き合っていこうと思わせられました。
(報酬0円は思うとこありますが・・・お子様方の恐怖心を煽らないよう、落ち着かせるよう、これから長い人生において負債を増やさないよう、何事もないお子様には不要な数十分~数時間を気を張って費やしても、対価0円な日本の医療です^^;まあ、滅菌系も同じですが)
やはり,お産ってこわいですね。
何もなくて当然が求められている現場ですが,実際は何もなくてよかったね,と思うのが私達の感覚として必要であると教えられたことがあります。
助産師としては緊急帝王切開では主に新生児の救命に当たることが多いのですが,小児科の先生がいるとは言えども,恐ろしい思いをしたことがあります。一度は土曜日の午後でop室ナース一人,私,産科医師1人というOPにあたり,小児科の先生が間に合わず一人で蘇生をまかされたということもあります。母体搬送の常位胎盤早期剥離でした。
急変,緊急時は,目の前の命を助けなければいけないので必死なところと,お母さんを過度の不安に陥れてはいけないので声をかけながら,余裕もみせながらということをしていますが,見えないところでは必死に手や足が動いています。そして,怖いです。
新人という域を脱してくるとお産の怖さを身にしみて感じるようになりました。でも,お母さん方にはお産は怖いものだとはおもわないで欲しいとの思いもあります。
ただ・・・妊婦健康診査を未受診の方が急増しているのですよね・・・なぜ,こんなことになっているのでしょう。現場を改めて見直すと頭を抱えてしまいそうです。
でも,この仕事は好きですよ。
私も早剥、死産→帝王切開→そのうえDICを経験したことがあります。
部長と2人体制の病院でしたが、平日の午前中私は外来、部長は車で約30分離れた看護学校で講義中・・・。
「赤ちゃんが動かない」と36週、前回帝切の妊婦が来院、エコーすると心音確認できず、胎盤やや肥厚、膣出血あり、意識やや混濁気味で血圧も低下している!
急いで部長に連絡取って、手術の準備し、外来は途中で閉めて、部長が着くまで外科の先生と開腹始めていました。開腹したところで部長が着いて、ほっとしましたが、最後まで一人でする勇気はなかったかも・・・でも誰もいなければ自分でするしかないんですよね。勇気はなくても目の前のことを必死でやるしか・・・。術後DICで約3日間患者さんは生死の境をさまよい、私と部長も交代で寝ずの番してました。
日本中の産婦人科医が昼夜なく必死に働いていること、もっと世間の人にわかってもらえたらなあ~と思います。
ope室ナースだったんですね。
ドラマになりやすい職種です(笑)。
一般の方の想像と現実とのギャップに驚くことは、
たみこさんと同じように、しばしばあります。
でも、我が身を振り返ってみると、
例えば刑事さんは、刑事もののドラマのイメージしか沸かないのです。
きっと同じくらいギャップがあるのだと、自覚することが大事なんでしょうね。
きっと同じ気持ち、と思っていた麻酔科の先生方ですが、
やはり分担がちがうと、微妙に視点もちがうのですね。
我々は、全身管理よりもまず先に、
赤ちゃんの心拍は?! という方に気が行ってしまいます。
ルシアン・ルーレット、これだけは同じ気持ちです(笑)
ope室の床、あんまりきれいじゃありませんから、
普段は座らないようにしているのですが、
極度の緊張の後では、やはりやってしまいますね。
確実に寿命が縮まる気がします(苦笑)。
お褒め下さり、ありがとうございます。
小さなお子さんと、その親御さんたちと接するお仕事も、
きっと大変なのでしょうね。
いわゆる”モンスター・ピアレント”と言われる親御さんたちと接した時、
お子さんが産まれたての頃に思いを馳せて、温かい目で見ることは
非常に難しいのではないでしょうか。
対価ゼロ円は、初めからわかっていることですし、
緊急opeも給料のうちと思って、納得しています。
これをひとつの現実として伝えたい、という思いから
ここに書いてみました。
私は幸い、助産師さんと小児科の先生が必ずついてくださる状況で麻酔をかけているので、臍帯がクランプされたかどうかだけちらっとみて、あとは、小児科の先生にお願い!!!しています。だから、声が聞こえたことくらいしか記憶がなくて、性別も、体重も、、、麻酔からさめた妊婦さんに聞かれても、重症なほど、、、「小児科の先生に聞いてください、、」なのです。
それに、元気で赤ちゃんが生まれても小児科の先生が去ったあと、DICで修羅場になることも多いように思います。そうすると、お腹が閉まったあとで、お母さんが助かるだろう、、という方向に向かった時に、やっとほっとします。
そんな中、モチベーションを保っておられるのが、またすごいと。
いえ、もしかしたら、もう相当お疲れなのかもしれませんね。
このエントリーを読むと、無事に帝王切開できたのが奇跡としか思えません。
ブログを読んで、またコメントを読んで、産婦人科の現状を知り、私も息子も無事だったのは当たり前のことではないとつくづく思います。
先生方、助産師の方々、看護師の方々、皆さんのおかげなのですね。
感謝すると同時に、そんな中でお仕事をしてみえるなな先生に、ありきたりの言葉ですがすごいとしか言いようがないです。
ブでも、ブログはずーっと読ませていただいています。
きょうは思い切ってコメントを書きました。
いつも深く考え、人の気持ちを汲んでくださる内容に
こちらも気持ちを寄せながら読んでおります。
わたしが出会ったお医者さまたちも含めて
たいていの方は寡黙でありますが
心の中はいろいろな葛藤をお持ちなのだと思え、
なな先生のブログを読んでほっとするのです。
どうかこれからもお体に気をつけてお仕事なさってください。
自分のブログのお気に入りに入れたいのですが
よいでしょうか。
他院から「常位胎盤早期剥離疑い」で、救急車で来院しOR直行、6~7分後、というのはありますが…。
来院、診察、診断、移動、手術。で17分は驚異的です。
いや、勝手に紹介します。 ゴメン
胎児適応の緊急C/Sの時では、助産師もまた同じ気持ちなのだと思います。
「助けなくては」という思いは、皆同じですから。
> お母さん方にはお産は怖いものだとはおもわないで欲しいとの思いもあります。
ここがななさんの素晴しいところです。
私なんか、もう少し厳しい覚悟を持ってほしいと思っているのに(笑)
ちょっと反省です。
未妊健に関しては、世間の態度が甘過ぎると思っています。
飛び込み出産を受け入れた病院の報酬増額を検討するのは、明らかな間違いです。
それよりは、飛び込み出産を許さない風潮を確立すべきでしょう。
私もこの仕事は好きですよ〜
好きという気持ちが、全ての原動力になっています。
ある程度経験のある産科医は、みんなそれなりに怖い思いをしているのですね。
DICが完成している早剥C/Sは、児の救命の必要がなくても、非常に恐ろしいものです。
針穴から、普通ならあり得ないような出血の仕方をしますよね。
術後も、数日は泊まり込みたくなる気持ちも、わかります。
2度と当りたくありませんが、お産をやっている限り、
そうはいかないですよね・・
出血させても、妊婦さんのお腹をぐいぐい押しても、
妊婦さんが気分不快を訴えても、
術者には何もわからないようにそっとコントロールして下さる麻酔科の先生には
いつも敬意と共に、感謝しています。
一生頭のあがらない職種の方々です(笑)
無事帝王切開できたのが奇跡、これをご理解頂いて、我が意を得たりです。
残念ながら赤ちゃんの救命はできませんでした。
あの17分の間に亡くなったのかと思うと、
どうしても割り切れない気持ちが、今でも残っています。
しかし、あかりさんを救命することができました。
これがあるので、モチベーションは揺るぎません、大丈夫(笑)。
血圧が上がった妊婦さんの帝王切開と、産褥の血圧管理も
程度によってはかなりの危険を伴います。
血圧上昇は、子癇発作や脳出血など、恐ろしい病態につながることもあるからです。
蒼さんも赤ちゃんも無事で、本当によかったですね。
平凡な町医者を目指す(・・・というか、もう実現していますが)私には、
普通の温かい言葉が、一番嬉しいですよ。
ずっとお読み下さっていたなんて、感激です。
大半の方が善良な市民なのと同じくらい、
大半の医者は、良心に従って真面目に仕事をしていると思います。
そして私も、ここではこの調子で文章を書いていますが、
実際は、時には目をつり上げて仕事をする、ごく普通の女医です(笑)。
お気に入りに追加、光栄です。
是非また遊びにいらして下さい。
すごいでしょう。
赤ちゃんの筋緊張が全くないので、児頭を触れているのに、娩出困難でした。
あの時間だけでも、もっとかかったような気がします。
突然前立ちをして下さった外科の先生も、素晴しい動きをして下さいました。
是非ご紹介お願いします。
確かに17分でCSをできる施設は国内ではそんなにあるものではありません。すごいの一言です。
ただ、そこまで急ぐ必要があるのなら、ちゃんとした手順を踏んでいたのかが問題となることがあるのではないでしょうか。おそらくNRFSで緊急CSとの診断でしょうが、早剥が原因との判断であれば、母体に適切な麻酔法に始まって(麻酔科管理でしょうが、充分な評価時間はないでしょう)輸血の手配、もちろん今問題になっているインフォームドコンセントをとる時間さえ簡略化されてしまいます。そんなことをすっ飛ばしてやるのであれば、そのリスクを受け入れる懐の深さ(問題が起こっても対処できるだけのものあるかどうか)が必要と思います。
今回は残念ながら児は助けられなかったようですが、「母体が助かったからいいじゃないか」と言うのは現在の産科医療を取り巻く状況からは、あまりにも楽観的と思います。
これが、母体死亡などのさらに不幸な結果になっていたら、そういうところが問題になります。それこそ「ノーフォルト」の世界です。
私も若輩ながらいろいろな修羅場を経験していますが、最近はNRFSで今にもとまりそうな心音の場合でも、その場の状況で最善の判断でできる限りのことをしますが、それで不幸な結果になって刑事訴追なり民事訴訟になっても仕方ないと思えるようになりました。
本当にそのように思います。
結果だけを見て良しとするのは、
結果だけを見て否とするのと同じくらい、
臨床の現場ではあってはならないことだと思います。
このような一例を検討し、次につなげていくのが臨床家の仕事です。
日産婦のガイドライン作成が、まずは産科領域からなされていますね。
ガイドライン遵守型の医療に、全く問題点がないわけではありませんが、
無意味な紛争を避ける、一助になり得るだろうと思っています。
医者が、患者さんの死より裁判を恐れるようになったら、
おしまいだと思うのです。
緊急手術になったとき、やはり患者さんはとても不安ですし、そのあと「どうしてこんなことになってしまったんだろう?」と思いますよね。それをちゃんと受け止めて、対応されるスタッフの皆様に頭がさがります。
医療は技術は必要ですけど、心が必要なところですよね。先生方の心は患者さんへつながっていること、ほんとすばらしいことです。
先生、皆さん、これからも応援しています。
> 緊急手術になったとき、やはり患者さんはとても不安ですし
そうですよね。
急変して緊急帝王切開になった妊婦さんの怯えた顔を、
今まで一体何回見ただろう、と思います。
しかしあの場では、妊婦さんの恐怖を和らげるのは不可能です。
後からのフォローにかかっているのでしょう。
その時に、いつか先生がおっしゃっていた
「あの時はああだったね、こうだったね」が
とても重要になってくるのではないでしょうか。
うちの病棟、こんな産科医療事情の下、
とても士気の高い、稀少な病棟なんです。
あの環境を守って行きたいと思っています。
1人目のお産が安産だったこと、続けて産んでしまって職場復帰したいという本人の希望があったため、年子状態で二人目を妊娠。(奥さんは医療関係とはまったく違う仕事です)
ところが、週数が進んでも胎盤が上がらない。本人は1人目を産んだ病院で産みたがっていましたが、私が強引に自分の
病院に連れてきて帝王切開をお願いしました。いくら前置胎盤の危険性を言っても本人はなかなか言うことを聞かず。
「ちょっとでも出血したら必ず病院にこい」と言っていたにもかかわらず子供のことが心配だったらしく私が家に帰るまで病院に連絡をせず。家に帰った瞬間凍りつきすぐにTEL。31週にもかかわらず帝王切開しなくてはならない、心の準備も出来ない、泣くだけの奥さんをただ勇気付けるだけしか出来ませんでした。OP中は想像以上の出血、2人とも集中治療行き。(私は産婦人科医ではありません)このときほど自分の無力さを痛感したことはありません。
その後母子共に無事に退院。今では家族4人楽しく暮らしております。私が何か仕事で壁にぶつかったときに思い出すことの1つがこれです。自分の無力さをかみ締めながら、患者さんと家族が少しでも悲しい思いをしないように努力しております。
31週で、出血を伴う前置胎盤の帝王切開は
非常に大変なハイリスクです。
お母さんも赤ちゃんも、よく生き抜いてくれましたね。
小さい上のお子さんを心配して、出血していても病院に行けない妊婦さんは
時々いらっしゃいます。本当は、良くないことですが。
しかしそういうママの気持ちは、他者にはどうすることもできないのではないでしょうか。
経験した症例だけではなく、自らの経験をも臨床の場に活かして行こうとなさる姿勢は
ご立派だと思います。
私も、そうありたいと、常に思っております。
僻地の産科医さんのところからきました。
私は助産院での子供の死でした。
その後、二人の子を授かり、二人とも病院で出産しました。
医療に従事ている方たちが悲しいお産の話をしてくださるのは、とても有難く、また、嬉しくおもいます。
私自身のことではないのだけれども、『忘れないでいてくれる』とおもえるからです。
そして、お産が抱える危険性を無知な私(達)に教えてくれるからです。
私は第一子を妊娠中に知りたかったです。
これから妊娠する人や、現在妊娠中の方や、ご家族の方たちには一緒に知って欲しいです。
ありがとうございます。
悲しい体験をなさったのですね。
ご本人の悲しみは、我々にはお察しすることもできませんが、
あかりさんの一人目の赤ちゃんのことを、忘れることはありません。
妊娠・出産は、うまく行って当たり前ではありません。
本来、生命賭けの行為です。
そして、どんなに気をつけてもどうにもならない、
ご本人には全く責任のないところで、うまく行かないこともあります。
このブログとはかなり趣向がちがいますが、
僻地の産科医先生のブログにも、繰り返しこのようなことが
書かれていると思います。
これを読み取って下さって、ありがとうございます。
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