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< なんにもしない夏休み | メイン | 救急車で来た妊婦さんの症例 >
2007.09.09 01:16 |  診療  |  その他(医療関連)  |  なな  | 推薦数 : 13

医療費を払おうをしない人たち

産婦人科にかかる患者さんたちは、大部分は善良な女性です。 

しかし、ごくごく一部に、そうではない人がいます。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

1 「でも、タダでしょ?」

 

その患者さんの問診表には、「検査希望、薬希望」と書いてありました。

しかしこれだけでは、何故外来にいらっしゃったのか、わかりません。

とにかく診察室にお呼びして、お話をお聞きすると、

「公的保護を受けているが、今月いっぱいで打ち切りになる。

今月中ならお金がかからないので、可能な限りの検査と、

出せるだけの薬を出してほしい」とのことです。

むむむ。

 

「何か症状がありますか」

「いえ・・・」

「どんな検査を、ご希望されますか」

「ええと、できるものを、全部」

「お薬は、どんなものをご希望ですか」

「出せるものを、なるべく多くお願いします」

 

こんな調子で、しばらくやり取りをしていましたが、

発展しないので

「保護の財源は、税金なんですよ。○○さん(その患者さん)はここでお金を払わないと言っても」

と言ってみましたが、

「でも、タダでしょ?」。

 

う~ん・・・

 

 

2 飛び込み分娩

 

救急隊からの連絡です。

病院から5分くらいのところで、女性が激しい腹痛を訴えており、

どうやら分娩が始まっているようだ、受けてもらえないか、とのことです。

受ける旨お返事をしたら、ほんとに5分くらいで到着し、

ちゃんと間に合って、分娩室でお産になりました。

母児共に無事です。

ほっと、安堵の息が漏れます。

 

しかし、直後から様子が変でした。

経産婦さんで、赤ちゃんには慣れているはずですが、

ほとんど赤ちゃんに触れようとしません。

産後薬はきちんとのむし、悪露交換も受けますが、

疲れた、と言っては授乳を休みがちだと

助産師たちが心配していました。

 

ある日、赤ちゃんを置いたまま、産婦さんが行方不明になってしまいました。

当然費用は払っていません。

その後、師長をはじめ病院職員が走り回って、

赤ちゃんだけは、産婦さんのもとに返りましたが。

 

あれから数年たっています。 

今頃、どうしているでしょうね・・・

 

 

3 ゴネ得?

 

もうすぐ赤ちゃんが産まれそう、という時に、

産婦さんのご主人が病院に到着しました。

ナースが状況を説明しに行った数分後、

その方向から男性の怒鳴り声が聞こえて来ます。

内容は聞き取れませんが、気になって耳を傾けていたら、

陣痛に苦しむ産婦さんご自身が、陣痛の合間に

「すみません、うちの主人、いつもああなんです・・・」。

 

その後もそのご主人は、しょっちゅう来ては怒鳴っていました。

看護師や助産師、清掃の人、食事を運んできた厨房の人までならまだしも、 

他の患者さんのお子さんが騒がしい、とか

同室のお見舞い客の態度が悪い、とか

ナースステーションにやって来ては、大声で文句を言っています。

スタッフたちは、クレームに慣れていないわけではありませんが、

周り中に響いてしまうので、困り果てていました。

また、横で申し訳なさそうに涙ぐんでいる産婦さんが、

お気の毒でなりません。

 

分娩費支払いの段階で、いよいよ勢いは増し、

結局たまりかねた師長が、未払いのまま帰しました。

戦いは病棟外に持ち越されたので、その後支払いがどうなったのかは、わかりません。

 

それにしてもあのご主人、私には文句を言うどころか、

目を合わせようともしなかったのですが、

怖かったのかしら・・・(苦笑)

 

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囚人と退役軍人の天国 
脳幹梗塞を2ヶ月前に来たした老人。MRAにて脳底動脈の高度狭窄をきたして当科外来に紹介された初診の患者。狭窄度は高く、病変部が短い。脳幹梗塞の症状は軽度であり、前医で心原性も否定されている。 ここで本... [続きを読む]

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3.ゴネた御主人を睨んだとか、思い当たる節は?

1.ただだからと言うのであればアメリカでは囚人が州政府の負担ですから刑期中に悪いところを全部治そうと手錠をしたまま来院されます。アメリカでは医療費が払えないから、保険がカバーしてくれないからという場合、犯罪を犯せば無料で受けられ問題解決です。変な社会でしょ。
written by Tai-chan / 2007.09.09 02:29
Tai-chan、こんにちは。TBありがとうございます。

> ゴネた御主人を睨んだとか

身に覚えないです~(笑)

後半、どこの国も似た部分がありますね。
以下、殺人事件の被害者になったご遺族の言葉だそうです。
「犯人は、税金で住むところも、3度の食事も与えられ、
病気や怪我をすれば、手当てをしてもらえる。
でも、私の夫は殺されてしまった。
遺された私たちに、なんの補償もない」
制度上、ある程度仕方ないのかも知れませんが
やっぱりヘンな気がします。
written by なな / 2007.09.09 02:42
世の中、何か変ですよね。今日もニュースで、刑務所の食事は美味しいと出ていました。法務大臣が、犯罪犯せば、ただで美味しいご飯が食べられると思われると困ると、クレームをつけていたし。給食費を払わない、ベンツを乗り回しているお母様もいらっしゃるようですし。
ゴネどくというのも、まかり通る世の中にちょっと寂しさを感じます。
written by J / 2007.09.09 02:48
お久しぶりでございます。


>それにしてもあのご主人、私には文句を言うどころか、
目を合わせようともしなかったのですが、
怖かったのかしら・・・(苦笑)


そういう輩は一部を除いて本当は臆病です。それから文句を言う相手を選びます。つまりなな先生は「選ばれし者」、言い換えると「一目置かれた者」ということではないでしょうか。
written by KEI / 2007.09.09 05:28
 初めてコメントさせていただきます。
 日本は医療費の何割かを自己負担するというシステムをとっている以上,未払い問題には徹底した対策が必要だと思います。特に払えるのに払わないなど悪質な例には,資産差し押さえにするぐらいのことをやってもいいのではないかという気がします。税金と保険料を横取りされているわけですから。
 でもこういったことを言うと,弱者に鞭打つとは何事かという声がどこからか聞こえてきそうですが…こういった悪質な未払いに黙っていられるほど日本の医療費は余裕があるのでしょうか?まして,そういったモラルの持ち主には,同情する余地はないと思うのですが…弱者なら何でもかばえばいいというのは間違いだと思います。
written by bosendorfer / 2007.09.09 06:20
はじめまして。
レスが荒れるようでしたら削除して下さっても構いませんので。

現代の日本人は戦後から子に苦労はさせまいと躾をおろそかにし、教育に力を注いでいるように思います。その世代が現在の国の中枢を担っている状況。地位、名声、富に執着するようになったのと同時に人間関係を築かなくなり、肉親でさえ希薄な状況ではないでしょうか?ここ数年の家族間の殺害、近隣住民への威圧果てはトラブルによる殺人です。性犯罪も多様になり、富を得ている者でさえ当たり前のように振舞う。

医療費、給食費、保育費その他各々の義務を果たさず、法の下、平等という権利を主張、利用し、当たり前のように振舞っているのが現状ではないでしょうか?それが今回のように、不払いに繋がっているように思われます。報道する側も適正な報道をせずに、個人が不利益を被ったという部分だけを取り上げ、その経緯に至っては報道しません。選挙も報道も人気投票と変わりないのです。あくまでも人気さえ獲得出来れば政権は確保できるのです。

適正な報道と教育がなされてこそ、初めて全体が上手く機能できるようになると思います。上記の内容からそれぞれの家庭の事情もある方も多いと思いますが、国全体が政治家の実験台にされたようにも思えてなりません。長々と失礼致しました。
written by 権兵衛 / 2007.09.09 07:56
なな先生、おひさしぶりです。
医療費を払わない患者さん、増えていますね。
生活保護の患者さんも増えていますが、最近はカルテに生活保護の印を見ると、安心してしまいます。医療費の取りこぼしがないので・・・。
服役後に吐血して入院してきた患者さん、治療してもうすぐ退院という時期に脱走して、また盗みをして警察につかまりました。入院中の態度はよかったのですが、退院してシャバで生きるのが不安だったのでしょうか・・・。
矛盾だらけでやってられないことも多い世の中ですが、リフレッシュしたことだし、お互いがんばりましょう!
written by 春野ことり / 2007.09.09 08:14
Jさん、こんにちは。

給食費滞納の話は、聞いたことはありましたが、
ベンツですか。
誰かが出したお金が代わりに使われていることを、わかっているのでしょうか。
う〜ん……

> 刑務所の食事は美味しい

関係ありませんが、当直食で、
黄色いご飯と、おかずがにんじんの煮物3切れということがありました(愕)。
他に、黄色いごはんと卵焼きだけ、ということもあったそうです。


written by なな / 2007.09.09 23:24
KEIさん、こんにちは。

> そういう輩は一部を除いて本当は臆病です。

経験のある助産師・看護師は、やはりKEIさんのように
この点を見抜いていたようです。
弱さを虚勢で隠しているのでしょうね。
(そうじゃなくて、ただ単に私のことが苦手だっただけだったらどうしよう……(笑))
written by なな / 2007.09.09 23:27
bosedorferさん、こんにちは。

医療費未払いも、本当は食い逃げと同様の罪に問えるのだそうです。
しかし医者の間では
「患者さんにそこまでやるのは、ちょっと」という空気があるため
結果として泣き寝入りになっている、という印象です。
筋を通してきちんと追求すべき、と思う反面、
病院が警察を介して患者さんに医療費請求……なんて世の中は、想像したくないですね。

>弱者なら何でもかばえばいいというのは間違いだと思います。

その通りと思います。
written by なな / 2007.09.09 23:33
権兵衛さん、こんにちは。
丁寧なコメントを、ありがとうございます。

現状に関してのご意見、つまり希薄な人間関係、異常な犯罪、権利ばかりの主張、
まさにその通りと思います。
こんな現状は、躾をおろそかにし、教育ばかりに力を入れたことが
一つの原因ということでしょうか。

幸せは、人生に対する満足度と、肯定的な感情の体験で決まってくる、
という話を聞いたことがあります。
この2つが欠落していると、特に人生に満足することが少ないと、
益々満足する感覚が鈍ってきて、常に満ち足らず、
与えられた権利にさえ満足できずに、当然のように振る舞ってしまうのではないか、と考えました。

メディアが商業であり、目的が売ることである以上、
適正な報道は期待できないと思っています。

> 国全体が政治家の実験台にされたようにも思えてなりません。

実験をするほどの計画性はないように見えますが、
考えてみたことのない視点でした。

全然荒れるようなコメントではないと思います。
貴重なご意見です。ありがとうございました。
written by なな / 2007.09.09 23:56
春野ことり先生、こんにちは。

先生のところ、なかなか壮絶ですね。
吐血の患者さん、病んでいるのは病人だけではない、の実例という気がします。
ほんと、矛盾だらけです。

>お互いがんばりましょう!

そうですね(笑)
先生に言われると、その気になります。

written by なな / 2007.09.10 00:02
はぁ~、呆れて言葉がでません。
私の身近だと「給食費未払い」にあたる行為ですが…。うちの学校では聞いたことありませんが、全国的にはすごい件数だそうで。りっぱな「食い逃げ」なのに(-_-メ)驚くことに中には生活に困っているわけでもなくベンツを乗り回している。なんて記事を見ると???な思考回路だなと思ってしまいます。医療費を払わない人たちも同じ「回路」なのでしょうか。子供たちにどういった教育をしているのでしょう。世も末ということですかねm(__)m
written by mizuho / 2007.09.11 01:40
> 1「でも、タダでしょ?」
こんな世間知らずを甘やかしてはいけません。

生活保護でタダになるのは「医療費」です。
「検査」は病気や障害があるのではないかと疑ってするもので,もし病気や障害があったら治療のために「薬」をつかうわけです。そのような医療行為にかかる費用を医療費というのです。

検査をして異常がなかったら,それは健診であって,医療費の適用にならず自費になる。病気がないのに薬を出す場合も全額自費になる。そういうことをきちんと教えてあげないと。

夜中に救急に来て,一昨日から頭痛がするのでMRI撮れ,とかいう自称「仕事が忙しい」人にも,「MRIを撮って異常がなかったら自費になりますが,どうしますか?」と聞くと,たいてい引き下がります。
written by KKK / 2007.09.11 11:40
未払いの人って、厳しく対応しないと
平気な顔で戻ってきます。
場合によっては、口コミで広がって、
お友達もやってきます。

彼らは、患者という弱者の仮面をかぶってさえいれば、
なんとかなると考えているのです。
こちらは、強者の仮面を無理やりかぶらされた子羊たちなのに・・・。

困ったもんですね。
written by y-gami / 2007.09.11 19:56
mizuhoさん、こちらにもコメントして下さって、ありがとうございます。

> 子供たちにどういった教育をしているのでしょう。

子供の教育にことが真っ先に頭に浮かぶなんて、
私にはない視点でした。
本当に、その通りですね。
給食費にしろ医療費にしろ、払わないことに正しい理由は存在しませんから。

本文冒頭にも書きましたが、患者さんの大部分は、善良な女性です。
ほんの一握りの人の心ない行為によって、
医者と患者の信頼関係が壊れていくのだとしたら、
こんな理不尽はないと思うのです。
written by なな / 2007.09.11 21:43
KKK先生、こんにちは。

先生くらい毅然とした態度は、今後益々必要になってくると思います。
医療者にある「患者さんにそこまでやらなくても」という気持ちは、
この調子では薄れていくのではないでしょうか。

確かに、本来保険ではない検査や処方が、
特に産婦人科領域では多いような気がします。
医療費削減の観点からも、この点は改めるべきなのでしょうね。


written by なな / 2007.09.11 22:12
y-gami先生、こんにちは。

先生も相当、修羅場をくぐっていらっしゃるのではないでしょうか。

> 子羊
そこまでかわいいかどうかはさておき(笑)、
言い得ていますね。
未払いに泣き寝入りもそうですが、
警察に取り調べられた時、医者ほど脆弱な人たちって、他にいるのでしょうか。
ああ、考えたくない〜〜

written by なな / 2007.09.11 22:18
はじめまして。
私も日常の診療でこの記事に出てくるような患者に出くわしますが、本当に冷静を装うのが精一杯で、はらわたは煮えくり返ってしまいます。

医療が崩壊の一途なのも、彼らのような人種が増えるのを見ていると仕方ない事のように思われます。
written by doctor-d / 2007.09.14 16:28
doctor-d先生、こんにちは。

先生のところでも、同じようなことが起きているのですね。
記事に挙げた例は決して特殊ではなく、
どの先生が日常診療の場で見かけても不思議ではない、といことも
伝えたいことのひとつでした。

本当にいけないのは、誰なんでしょうね。


written by なな / 2007.09.14 20:25

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