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2泊連続当直が明けた日のことです。
午前は、外来患者さんを40人診察しました。
午後は開腹のopeが2件、お産が1件ありました。
夜、ope患者さんの様子が安定したのを見届けて、帰宅します。
しかし、もし夜間にopeが必要な急患が発生したり、搬送があったりしたら、
出動して、病院へ向かいます。
今までもそうやって、搬送を受けて来ました。
ちょうどその日、奈良県で妊婦さんを乗せた救急車が10数カ所で受け入れ不能となり、
病院到着までに3時間かかってしまう、という事件がありました。
受け入れ不能の影には、この日の私の病院のように
無理してでも受けて来た、幾多の病院があるはずです。
しかし残念ながら、私の病院も、近いうちに搬送受け入れの範囲が制限される予定です。
人員不足により、責任を持ってお受けできる範囲が、狭まってしまったためです。
マスコミの人たちへ。
世の中の女性たちに向けて
「妊婦健診はきちんと受けましょう」と、発信してもらえないでしょうか。
この事件の妊婦さんも、普通に健診に通ってかかりつけ医がいたら、
搬送先が見つからずに往生することは、なかったでしょうから。
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産婦人科医になってから、
「全身の血液が沸騰するほど怖い思い」をしたことが、何回かあります。
そのうち上位10に入る事件が、S先生の産院で去年の今頃にあった
分娩時出血多量事件です。
http://blog.m3.com/nana/20060831/1
子宮内反、修復後の弛緩出血、頚管裂傷で、
搬送先での出血量もあわせると、
身体中の血液が全部出切るくらい、出血しています。
人が一人失血死する過程を、目の前で見ているような感じでした。
S先生の産院で分娩、輸血、内反修復、裂傷縫合
搬送先でも再度内反してope、輸血、術後入院していますが、
実は、当院にも搬送先にも、全く費用を払っていないのです。
ちなみに、きちんとした妊婦さんです。
真面目に健診に通い、ちゃんと費用を支払っていました。
思いがけないアクシデントのために、医療費がかさんでしまい、
払い切れなかったのではないか、と思うのです……
あの時産まれた子は、1歳になるはずです。
あの妊婦さんがママとなって、
今、どうしているのか、どんな気持ちでいるのかと、
時折、思うことがあります。
1週間ほど留守にします。
もしコメントを下さる方がいらっしゃったら、
お返事遅れます。よろしくお願いします。
9月7日、戻りました。
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コメント
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その影には、これまで、日本中、たくさんの産科の先生の、普通じゃない努力と真心がありました。
でも社会は、マスコミは、それに対して、感謝の意を表すどころか、産科のお医者さんの努力に頭から煮え湯をぶっかけ、真心を踏みにじりました。
医療崩壊について、責めを負うべき者はいったい誰なのでしょうか…。
心が通い合わなければ、真の医療はできません。
マスコミは主張します、医者が心を閉ざし、義務を忘れ、過失を犯したから、産科は崩壊し、真の医療は失われた、と。
でも本当にそうでしょうか。
命を助けてもらいながら、治療費を踏み倒す患者が存在する事実…。
本当に悪いのは誰なのでしょうか?
以前勤めていた病院では分娩費用を払わない方が2,3ヶ月に1度はいました。かかりつけ医を持たない,いわゆる飛込み分娩も同程度の割合でいました。
飛び込み分娩は怖いです。何も知らないのですから。
この問題にはいろいろな要因が重なっています。でも,報道は医師の責任,病院の責任しか問わない。報道するからには,きちんと調べて欲しいのですが。
でも,確かに救急搬送が難しいのは現実ですね。医師が少ないのも。助産師も少ないのも。どうするつもりなのでしょう。だれが,母子の命を守るのでしょう。
誰かを悪者にするのは簡単です。だけど,それでは根本の解決にはならない。現場にいて,非常に腹立たしい思いです。
それでも,私達は日々,がんばらなければならない。迷っている暇もないというのが現状でしょうね。
本当になな先生,お疲れ様です。
高尚な理想を掲げて、よりよい社会を夢想する気持ちもわかります。
しかしそれと同時に、現実的に今なにができるかを、いま一歩立ち止まって考える気持ちを持っていただきたいと私は思います。
周産期センターを早く作れ。
正論ですが、予算とそこで働く医師・助産師・看護師などの人が確保できなければ、すぐにはできません。
病院が急患を断るな。
正論ですが、その時に医師が診療できる態勢になければ、断らざるを得ません。病院は好んで断っているわけではありません。自分たちの手が回らない現状に悔しい気持ちを抱きつつ、急患の引き受けを断って、目の前の患者の診療にあたっているはずです。
理想は将来への道しるべですが、眼下の足元を照らしていません。
医療の現状において、もっとも簡単に、即効性をもって、今回の残念なイベントを避けることができる方法はなんでしょうか。
今回のような飛び込み妊婦を減らすことではないでしょうか。
妊婦検診の必要性、飛び込み出産の危険性をもっとも効果的に世間の人に知らせることができるのは、マスコミの方々です。
私たち医療人は、マスコミの方々と敵対したいとは思っていません。
これからの医療をよくするために、手を取り合うパートナーでありたいのです。
医療人は医療人としてできることを、日々模索しています。
マスコミの方々にはマスコミとしてできることを、もう少し視点を広げて考えていただきたいのです。
妊娠してすぐ検診に行って、長い時間をかけても、本番で予期せぬことがおこるのに、飛び込みなんてもってのほか!と認識しないと。
それにしても、飛び込みで、何の信頼関係もない医師にまかせる気がしれないですが。
それにしても、理不尽な人のために、今現在、良識をもって、ちゃんと検診に通おうとしている人や、出産の準備をきちんとしている人が、門前払いされるほど、産科医がいないということが、とんでもない状況・・・。
http://www.naramed-u.ac.jp/~gyne/2007.08.28.html
こういう大変なお医者様をバッシングするのが今のマスコミなんだなぁと思います。
今回の奈良の妊婦さんは、かかりつけ医がいないという時点で驚きですが、ひょっとしたら経済的な事情で検診に行けなかった可能性があるのではと思います。私は共働きですが、それでも毎回5千円から1万円以上かかる定期健診費は家計を確実に圧迫しています。格差社会がクローズアップされている今、検診を受けずに分娩時のみ病院に飛び込む妊婦さんが今後増えていくだろうなと思います。
> 医療崩壊について、責めを負うべき者はいったい誰なのでしょうか…。
最近、これを考えます。
約10年前までは、医師たちは過重勤務を厭いませんでした。
しかし、勤務の大変さは大幅には変わっていないのに、
今、逃散する医者が増え続けているのは、何故でしょうか。
10年前と、何が違うのでしょうか。
色々な意見があると思いますが、
> 真心を踏みにじりました。
これが、大きなポイントではないかと思うのです。
医業には、医業にしかない誇りと、使命感と、人間愛があります。
サービス業や科学としての一面もありますが、
それはごく一部でしかありません。
医業の原動力となっている、誇りと、使命感と、人間愛が損なわれる時、
医療は崩壊するのだと思うのです。
ここにも同志がいた!という気持ちです。
産科医も助産師も足りない現状で、本当に、誰が母子を守るのでしょう・・・
現場を知らない一部のマスコミの、不見識極まりない無神経な報道に
非常に腹立だしい思いをしているのも、まさにそのまま同じです。
> 迷っている暇もないというのが現状でしょうね。
そしてこれもおんなじです(笑)。
そんなに大変なら何故辞めないの、とか、
改善するよう努力すべきでは?と言われても、よくわかりません。
産婦さんが目の前にいるから、やっているだけなんです。
産婦さんに向き合うことしかできない私たちって、
なんて無力なんでしょうね。
時々、そう思います。
貴重な、素晴らしいコメントをありがとうございます。
ここのコメントに留めておくのは勿体ないですね。
すごい、と思った点は何点もありますが、
即効性を考慮すべきとなさっている点が、素晴らしいと思います。
そのくらい医療の崩壊は、急を要する事態になっています。
医療資源の不足は、明らかです。
周産期センターも不足しています。
そして何より、マンパワーが不足しています。
数が充足していて、居る医者が怠けているわけではないのです。
医療資源に関して、ハード面や、マンパワーの数に焦点を当てず、
マンパワーの質だけを問うような議論をしていたら、
現状打開にはつながって行きません。
マスコミ関係者の方、どなたかrinzaru先生のコメントを読んでくれてないでしょうか。
先生のブログ、拝読しました。
健康管理に関する自己責任、という観点から
これから妊娠・出産しようとしている女性たちに
妊婦さんとしての自己責任を自覚してもらうのは、
大切で有効なことと思います。
胎児の健康管理は、妊婦さんに100%かかっているのですから。
> 飛び込みで、何の信頼関係もない医師にまかせる気がしれないですが。
これが正常な感覚と思っています。
それに母子手帳がないのは、子供がかわいそうなのでは?
しかし飛び込み産は、どうやら一般人の感覚では理解できない域の業のようです。
お産だけして、費用も払わないところまではまだしも、
赤ちゃんを置いていってしまう人もいるのですから。
奈良県立医大の発表は、私も読みました。
あれは大学病院の産婦人科としては、決して特殊な状況ではないのです。
私がいた大学病院も、あんな感じでした。
みどりさんのように、ご理解して下さる方がいらっしゃると、ちょっとほっとします。
> 経済的な事情
そうそう、これなんです。
今回記事で、全く別の話をを2つ並べた意図は
「これが”美しい国・日本”の現実です」というメッセージを伝えたかったこともあります。
大多数の家庭では、妊婦健診の費用は家計を圧迫しています。
また、救急車の受け入れが困難になっている現状も、
本来真面目な妊婦さんが、医療費を踏み倒さずにはいられない現状も、
既に、個人の力が及ばないところに来ていると思うのです。
たまたま当時者になった妊婦さんや病院の責任を問うていては、
大切なことを見誤るのではないでしょうか。
1人の出産経験者として、「妊婦検診は受けて当然」だと思っています。しかしネックは検診・出産にかかる費用が「健康保険対象外」ではないかと思います。
特に、費用面で若い世帯にとっては負担が大きいかもしれません。だからといって、検診を受けないのは間違っています。
もう少し、公的な費用の助成があればとは思いますが、行政も頑張っているように思います。また、個人的に加入している生命保険や医療保険があれば、妊娠中や出産時、思わぬアクシデントがあっても、カバーできることもあります。
妊婦検診を受けると同時に、妊娠・出産に関わる費用助成制度についても、同時に知っておいてほしいと思います。
> 真心を踏みにじりました。
これが、大きなポイントではないかと思うのです。
↑同感です。
「医療」のところにほかの言葉をいれ「○○崩壊」としてみても同じことがいえるのではないでしょうか。
マスコミの堕落が大きい要因であることは間違いありませんが、それは表面にあらわれた病理現象であって、やまいの根源は、日本全体の風潮、すなわちいつのころからか「真心」とか「真面目」とか「誠実」とかいうものを軽んじるようになった風潮である、その風潮に拍車をかけたのはタケナカ・コイズミ・カイカクであると考えます。
わたしの専門は金融ですが、その世界をみても、ムラカミ、ホリエモンを獄舎につなぎ、タケナカ、コイズミ、フクイ、キムラという輩が大手をふって世間を歩いている今の日本をとても気味悪く感じます。
妊婦健診の費用の問題は、改善の余地があると思います。
おっしゃるように、国からの補助、民間の保険、
どちらも現実的な線だと思います。
公的補助が出ていますが、分娩のための入院だけで50万くらいします。
更に、子育てにはもっともっとお金がかかります。
本気で少子化を食い止めるのであれば、妊娠・出産の費用の補助は
不可欠と言ってもいいかも知れません。
後段の妊婦さんのように、本来きちんとした方が
一生踏み倒しの罪悪感を背負わないとならないような、悲しい顛末。
第2第3の彼女を、決して出したくないですね。
> いつのころからか「真心」とか「真面目」とか「誠実」とかいうものを軽んじるようになった風潮である
なるほど、そういうことだったのですね……!
普段から漠然と思っていることを、ぴたりと言い当てて頂いた感です。
医療の崩壊は見ての通りですが、
社会全体が歪んでいる、その一面を見ているに過ぎないのかも知れません。
医学生に将来の希望を聞くと、「楽して儲かる、ベンチャーを考えています」
という返事が返ってくることがあります。
中高生が殺人を犯して、動機が「人が死ぬところを見たかったから」。
家庭教師をやっている友人の話、生徒をたしなめたら
「小学生には小学生のストレスがあるんだよ!」と言われたそうです(苦笑)。
そんな社会背景のもとで、
警察、教師、医師などの専門家の権威が失墜したことが、
「気味悪い日本」を作り出したのかも知れませんね。
胎児の保護義務、倫理観、その通りと思います。
胎生期の大切さを、しっかりと自覚してほしいと思います。
これから妊娠する女性に対しては、是非とも啓蒙するべきでしょう。
しかし。
ちょっとお話は逸れますが、
今回の奈良事件の当事者の女性の自己責任を
今、追求する一部の声は、悲しい思いで見ています。
当事者の女性は、流産されたばかりです。
悲嘆に暮れているだろうし、何よりもご自身の責任を感じているはずです。
そんな時に、他者が自己責任を問うていては、
社会の世知辛さを増幅させてしまうのではないかと、思うのです。
出産費用については、最近は、出産育児一時金の受取代理というのがあったと思います。(窓口で大金を払わなくて良くなった)
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n0925_1.pdf
検診についても、健保組合によっては、かなりの補助金がでるところもあります。(妊婦検診利用券?だったかな)
少し調べれば、前より改善されているので、もっと利用すべきだと思います。
なので、やはりそういう知識があるかどうかだと思います。
2歳の娘を持ちつつ、正社員で働くみけと申します。
なな先生のブログを読んで、一生懸命働いていて、報われないなんて、あってはならないことだと思います。
まず、このニュースを知って、午前2時ぐらいに買い物をしている神経を疑いました。妊娠してると気づかなくても・・・と思ってしまいます。
また、実家の近所で、できちゃった再婚をした人がいます。
その夫婦は、安く出産するため入籍をしなかったと聞いて、そういう考えの人もいるんだと、驚きました。
助成があるといっても、その源は税金ですよね?
妊婦検診も、二人目からはお金を節約するために、なかなかいかないと言う話も聞いたことがあります。
確かに、私は共働きをして、経済的には少し余裕があると思いますが、贅沢な暮らしはできません。
医療や健康保険問題を考えるとき、どこまで国が補償するのか、そしてそれを負担するのは誰なのかと考えてしまいます。お金がなくて困っている方はたしかにいらっしゃいますので、ちゃんと機能する医療制度にして、お医者さんたちも働きやすい職場になったらと願っています。
いかに母子の搬送システムが機能していないかを取材していましたが,最後にキャスターが現場の忙しさをわかって欲しいということをいろいろなひとから言われたということをコメントされていました。
マスコミが機能だけにこだわらず,現場の多忙さ(それも日常的に)を取り上げてくれたことが少しうれしく感じました。
助産師もがんばらなければいけませんね。
出産一時手当金の、事前申請も可能ですね。
手当金が出るまでに、お金を払うのが大変な若い世代の
助けになるといいのですが。
お返事遅れました。
妊娠・出産に対する補助は、今後増額の方向に向かうことが予想されます。
現に、従来健診2回分の補助であるところを、
5回分に増やすことが検討されていますので、いずれ実現するでしょう。
地方自治体も、頑張っていると思います。
でも、みけさんのおっしゃるように、財源は税金なのですよね。
それを頭の片隅に置いて、健診を受けてもらいたいと思っています。
2歳のお嬢ちゃんがいたら、きっとお仕事も大変ですよね。
妊娠・出産で終わらない補助を・・・なんて言ったら、欲張りすぎですね(笑)。
お返事遅れました。
おっしゃる通りです。
現状は、搬送システムの機能不全だけが原因ではありませんから。
その後、妊婦さんを乗せた救急車の記事が次々湧出していますね。
緊張が高まったところで、この勢いがどちらの方向へ動いていくのか、
つまり、
従来通り「医療者けしからん!」になってしまうのか、
「妊娠したらきちんと健診を受けましょう」となっていくのか、
見守っています。
なな先生が取り上げられている不払い産婦さんの
入院費用は高額医療費助成の対象になりそうなのですが・・・。
分娩時の緊急手術は対象外なのでしょうか?
友人はIUGRで観察入院をしましたが、高額医療費助成を
受けられたので、助かったと話していました。
まじめな方の不払いを避ける方法ですが、
ソーシャルワーカーさんとの連携も視野に入れると良いかもしれませんね。
おそらく輸血に関しては、助成の対象になり得るのではないかと思います。
ソーシャルワーカーが不在の病院も多数あり、
連携は極めて希薄なのが現状ではないでしょうか。
医療費助成のことに関しては、当事者である妊婦さんに対して、
例えば母親学級レベルで、もう少し説明があってもいいのかも知れませんね。
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