雑誌記事ルポ・腐女子の愛は国境を越えて(2)婦人公論9月 2日(火) 17時54分配信 / エンターテインメント - エンタメ総合エンターテインメント市場における日本と韓国との一番の違いは、検閲および年齢制限の厳しさだろう。一般のテレビドラマしかり、書籍しかり。 「韓国で販売されているBL作品には、すべて“19歳未満購読不可”のマークが入っていますし、中身にも修正が加えられています。たとえば、マンガの登場人物のセリフや擬音がラブシーンの絵を隠す位置に入れられたり、絵やコマの一部が削除されたり。日本版と比較して初めて『こういうことだったのね』と理解できることもありました。ただしこれはBLに限ったことではなく、韓国ではむかしからマンガに対してとんでもない修正が加えられてきたんです。私たちは慣れっこなので笑い話にしていますが」とスヨンさん。 そういった事情からか、韓国ではBLはおろか、マンガを扱う書店そのものが少ない。「欲しい人はマンガをメインに扱っている書店に行くか、インターネットで購入するのが普通」なのだという。小中学生が読む少女マンガ誌で赤裸々なラブシーンが描かれ、大抵の書店にBLコーナーがある日本とはえらい違いだ。 今回私が、スヨンさんと彼女の友人であり、「高校生のときにBLにハマり、好きな声優さんが出演しているドラマCDで日本語を覚えました。BL作品は本棚ひとつ分、持っています」というテヒさん(26歳)の案内で訪ねたのは、学生街・弘大(ホンデ)にあるマンガ専門店。店内のほとんどを日本のコミックスの翻訳版が占め、一角には平積み台と大きな本棚数個分で作られたBLコーナーも設けられている。土曜日だったせいか、店は10〜20代の男女で混んでいて、BLコーナーにも女性たちが集まっていた。 ところで韓国では、日本のどの作品が人気なのだろう? スヨンさんとテヒさん、および彼女たちのブログ仲間に呼びかけリストアップしてもらったところ、まずマンガ部門では、香坂透『お金がないっ』、寿たらこ『SEX PISTOLS』、西田東『願い叶えたまえ』、講談社漫画賞を受賞したよしながふみの『西洋骨董洋菓子店』など。小説部門で名前が挙がったのは、木原音瀬、榎田尤利、遠野春日らだった。 BL系出版社最大手の、リブレ出版・牧歳子取締役編集部長は語る。 「名前が挙がった作家は、日本でも人気が高い人ばかり。好みの傾向はほとんど同じですね。韓国と台湾では、私が少女マンガを扱っていた15〜16年ほど前から翻訳出版がされています。作品をセレクトするのは現地の出版社。現在の担当者はご自身もBLが大好きな女性で、このために日本語を身につけられたそうです。最近では、BLをオンラインでダウンロードして読めるサービスも始まりました。単行本1冊を5話に分け、1話200ウォン(約21円)で販売しています」 日本でも、携帯電話でのマンガ配信の需要が高まっていると聞く。近い将来、「BLはオンラインで読むのが当たり前」になる日が来るのだろうか? ルポ・腐女子の愛は国境を越えて(3)へ続く 取材・文◎上田神楽(ライター) 【関連情報】 ・ 『婦人公論』2008年8月7日号目次
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