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以前お話した、摂食障害の10代の患者さん、千秋さんのお話です。
http://blog.m3.com/nana/20070512/1
千秋さんは、摂食障害、リストカット、引きこもり傾向があり、
何件かの病院を経た後、私のカウンセリング外来にいらっしゃいました。
極端なダイエットをしたかと思うと、いっぺんに大量の食べ物を食べ、
嘔吐する、ということを繰り返して、苦しんでいました。
到底私の手に負える状態ではありませんでしたので、専門医受診を何度かお勧めしたのですが、
うまく行きませんでした。
せめて、残った医療者である私の手でいいから、放さないで。
そんな気持ちで、一緒に病気に向き合っていました。
その時の記事を読んでくださった、聡明な2人の女性が、
野菜を一緒に育てる、という方法を、教えて下さいました。
これだ! と思って、千秋さんにお話したところ、
千秋さんも喜んで、引きこもりがちだった部屋を出て、種を買いに行ってくれました。
千秋さんの選んだ種は、ミニトマトと、ラディッシュ。
小さなプランターを用意して、一緒に種を播きました。
あっという間に野菜たちは育ち、食べられるようになりました。
先日、外来で。
真っ赤なミニトマトを、千秋さんと一緒に、茎からもぎました。
10数個あったと思います。
どうやって食べたい?と聞いたら、そのまま食べたい、と言うので、
洗ってそのまま、食べました。
口に含むと、しっかりと土の香りがする、
売られているトマトにはない、青い味。
自分たちで育てたトマトは、とても甘く、何とも言えない味わいがあります。
美味しいものは、何でも「あまい」という感覚がすると思うのです。
やわらかい肉や、豆腐、採れたての野菜。
みんな、美味しいものに独特の「あまみ」があります。
千秋さんも私も、言葉はなく、2人でただむしゃむしゃと、トマトを食べました。
「あまいね・・・」
ひと言だけ言うと、
千秋さんは、こっくりとうなずきました。
1週間くらいして、千秋さんがくれたお手紙です(一部編集)。
「食べモノに夢中になってました。けど、吐くことが前提なので
吐けなかったときは相当落ちます。
吐かないと次の行動ができませんでした。
食べる=吐くことになっていました。
あまいトマトを食べて、食べ物に味がする感覚を思い出しました。
トマトおいしかったです」
あれから1ヶ月。
千秋さんに、約2年ぶりの月経が来ました。
まだまだ苦しい日は続くと思いますが、
千秋さんは、きっともう、大丈夫。
そう、信じています。
~ぴょん先生とLilyさんに、心からの感謝を込めて~
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コメント
コメント一覧
そして、千秋さんが食べ物の味を思い出したという一言で、涙が出てきました。
以前しんどかったときは、感情がぽーんとなくなった感じでした。
きっと「あまい」と感じたとき、感情がふーっとよみがえってきたんではないでしょうか。「おいしい」と感じることができれば、それは元気になれる証拠です。
千秋さん、先生、応援しています。
ななセンセイ、ステキ!!千秋さん、良かったですね。
私も一緒にトマトを食べたような、甘くてあたたかい気持ちになりました。
センセイが千秋さんを思う気持ちが、彼女にはもちろん、
トマトにも伝わったのかもしれませんね。
ホント、食べ物の味を思い出してくれたなんて、私もうれしいです。
(ちょっと気になっていたので…)
遠い空の下からですが、いつも応援しています。
先生と千秋さん、他の患者さん、そして
ここにいらっしゃる全てのみなさんにHAPPYのスパイラルを!!
同じ医師というより、人間として尊敬します。
なな先生のblogを読むたびに頑張ろうっていう活力が出てきます。
いつも感謝してます。
無理されないでくださいね。
心温まるお話ありがとうございました。
こんばんは、お疲れさまです。
千秋さん、よかったですね。
なな先生と千秋さんの頑張りが、しっかり実を結んだんですね。
私まで、嬉しくなってしまいました。
そして、すごくすごく、温かい気持ちになりました。
私はトマトも土いじりも苦手なのですが、
息子と何かを育ててみたくなりました。
ミニトマト、育ててみようかな・・・。
千秋さんの変化、私もとても嬉しい気持ちで一杯になりました。
私も以前、花を育てることでストレス解消をしていた時期がありました。最近はすっかりさぼってますが。
今、私の父も借りている畑で野菜を作り、それを自分で料理するというのが日課になっています。年を取って、いきなり田舎から都会に来なければならなかった父のせめてもの、生きがいになっています。
なな先生のはずむ心が伝わって来ました。
前回のお話は娘の授業からのヒントです。
おとなしい娘が「なすを植えたい。」って言って
生き生きとした表情で学校で習ってきた事を私に伝えた時の
あのキラキラした眼・・・
・・・同時に5月になり新緑の季節・・・山で独居の認知症のおばあちゃん達。「畑はいいよぉ~。野菜はいいよぉ~。育てるっていいよぉ~。」
”育てる”って事は自分も一緒に生きるっていうことかなって。
そして、私も家の玄関前で・・・なな先生と千秋さんに
触発されミニトマトと、パセリ、セロリ、などを育てはじめました。苗を選ぶ娘の顔・・・生き生きしてました。
もちろん、収穫の時もです。
千秋さんの身体は生き始めたのですね。
ええはなしやなあ……。
たべることの意味って、単に栄養をとることだけじゃなくて、人生を楽しむってことなんですよねえ。
彼女の身体も、プランターや土や苗や葉っぱと同じ…
命をつなぐ大切な母体となるんだということに。
だから、大事にすべきだということに。
身体はすでに気づいたからこそ、月経が来たのかもしれませんね。
リストカットの傷をご覧になったときは、先生ショックだったでしょう…
よく支えてあげられましたね。
これからも厳しい道のりでしょうが、どうぞゆっくり、ゆっくり…。
真剣勝負でした。
私のところで、良くなってくれなかったら・・・と思うと。
でも、そのうち真剣勝負であることを忘れて、
千秋さんと一緒に過ごす時間を、むしろ私の方が楽しんでいました。
治療は、そうなるとうまく行くのかも知れません。
> 「おいしい」と感じることができれば、それは元気になれる証拠です。
私も、そう信じています。
コメントありがとうございました。
Lilyさんが、遠い空の向こうから届けてくれたエールが、
千秋さんと私に通じましたよ。
その節は、ほんとうにほんとうにありがとうございました。
ブログでの交流が、こんな形で実を結ぶとは。
Lilyさんも私も、思っていませんでしたね(笑)。
心からの感謝を込めて、ありがとうございました。
お褒め頂き、ちょっと照れくさいです(笑)
あの外来は、診療行為というよりは、趣味のようなものです。
私の方こそ、先生のやさしいメッセージに何度励まされたかわかりません。
先生のお弁当の写真、実は頻繁にロムしています(笑)
リスと野菜の取り合いなんて、日本じゃなかなかできません(笑)
何となく浮世離れしたブログにお付き合い下さり、
ありがとうございます。
千秋さんと私に温かいメッセージを、ありがとうございます。
土いじりがあまり得意でなくても、プランターならいけるかも知れません。
トマトでなくても、育てやすい品目があるみたいですよ。
千秋さんは、なな先生の手を離さずに、そして一緒に新たな場所へ一歩踏み出せたんですね。
本当に良かったです。
ゆっくりゆっくり歩き出されますように、遠いこの地から願っています。
私事ですが、私はまだ同じ場所にとどまってます。
カウンセリングを受け始めました。
そんな私でも、新しい場所へ踏み出せるのでしょうか。
私自身の力で乗り越えるしかないのは分かっているのですが、不安です。
でも、なな先生と千秋さんのこのお話は、そういった私に勇気を与えてくれました。
素晴らしいお話し、本当にありがとうございました。m(_ _)m
ありがとうございます。
>「この手を放さないで」
「放さないでくれてありがとう」
と、ドクターから言って貰える千秋さんのことが
(不謹慎かもしれませんが)
羨ましく思いました。
そうやって、生きていることの楽しさをみつけ
感じてゆくのですね。
鉢植えの花を見事に枯らしてしまう私ですが、
何か野菜を育ててみたいと思います。
千秋さんに、やさしいお言葉をありがとうございます。
花や植物を育てる、って、誰にとってもhealing効果があるのですね。
バリ島さんにとっても、おじ様にとっても、
千秋さんにも、私にも。
私も、自分の部屋でシクラメンを育てています。
先生のアドバイスが、実を結びました。
おっしゃるように、千秋さんの身体が、生き始めました。
最初に目を覚ましたのは、味覚だったのではないでしょうか。
何しろ、まだ10代の子です。
何かに絶望するには、幼すぎます。
ぴょん先生のアドバイスは、現実の世界で、
確実に一人の女の子を救う光明になりました。
お年寄りのお話に、共感します。
がんセンターに勤務していた時に、
化学療法のために入退院をしていた患者さんが、
やはり野菜を作っていらっしゃって、
活き活きと、そのお話をなさっていたのを思い出します。
心からの感謝を込めて、ありがとうございました。
食べることの意味は、人生を楽しむ。
ほんとうに、そうですね。
先生のブログの記事を読んで察するに、
先生は食べること、お好きなのではないでしょうか?
きっと人生の楽しみ方が、上手なのではないかと
勝手な想像をしています(笑)
そうですね。
食べることの大切さは、むしろ「誰と食べるか」にあるのかも知れません。
土と、命と、母体。
千秋さんの中にある、何かを結ぶkey wordです。
心のやさしい千秋さんは、子供が大好きで、
いつか子供を生みたい、だから今のままではだめ、という考えが、
いつも根底にあったようでした。
> リストカットの傷をご覧になったときは
はい、おっしゃるとおりです(笑)
あれを見て、ああ、私の手には負えないな、と思いました。
私の担当するカウンセリング外来は、
婦人科と心療内科、精神科の間を埋める、グレイな部分を担っていますが、
「自殺企図のある症例は、専門医の託す」
という、明確な線引きをしていますので。
温かいメッセージの上に、私自身にまでねぎらいのお言葉を頂戴し、
ああ、真剣な思いで千秋さんに接していることを、
わかって下さる方がいらした、と
何か報われた気持ちです。
千秋さんが、日なたで心から笑えるまで、
向き合い続けるつもりです。
コメント、ありがとうございました。
千秋さんに温かい目を向けて下さって、ありがとうございます。
カウンセリングを受け始めたのですか。
ご不安、如何ばかりでしょう・・・
不安に苦しむ患者さんたちに、言っている言葉があります。
不安て、どうして起きるのだと思いますか?
・・・。
不安の本態は「わからない」ということです。
例えば試験前。
結果がわからないから、不安になります。
大事な舞台の前。
これも、うまく行くかどうかわからないから、不安になります。
つまり「不安」は、結果がわかるまで、ぬぐえなくて当然のものなのです。
蒼さんが、いい治療者にめぐり合えることを、
お祈りしています。
ジェイクさんの下さったメッセージ、
医者として、最高のほめ言葉です(笑)
千秋さんとは、どこか波長が合ったのでしょう。
私自身、外来で患者さんと野菜をむしゃむしゃやってしまうあたり、
ちょっと酔狂な部類に入るかも知れませんが。
千秋さんが私の外来に来たのは、偶然のことですが、
出会いって大切ですね。
恵まれた偶然にきちんと気づいて、喜べる、
そんな感性は磨いておきたいと思います。
あぁ、なな先生・・・その通りです。さすがです。
取り除くことは今の現状では不可能なのですが、原因は分かってるんです。
ただ不可能なだけだけに、その原因をどうしたいのかが「わからない」でいます。
差し当たり、今の所は薬で眠れるようにしてますが。
「カウンセリング」についても、先が見えないだけに不安です。
このカウンセラーを信じられるか・・・。人と距離を取り、信じることに時間がかかる私としては、まず先生との信頼関係を築くのが大変です。
でも、この「不安」についての言葉をもらっただけで、分かってもらっただけで、心が少しスッキリしました。
こうして、なな先生と出会えたことに感謝します。(^^)
だんだんブログの趣旨から外れ、私事に長々と付き合っていただき、ありがとうございました。
こちらこそありがとうございます。
乾きそうだった私の心にもたっぷりのお水を
かけていただいた・・・そんな感じです。
なな先生の暖かな眼差しを千秋さんはちゃんと
キャッチしたのですね。
先生の暖かい心が、トマトの味にもしみたんだと思います。私ども内科の世界にも、摂食障害の患者さんがまぎれ込んでくる事があります。なかなか、先生のようには正面を切って向かいあうことができなくて、精神科になんとか紹介しようとすると、こなくなって、、、、。そういう患者さんに逃げずにむきあう姿が素晴らしいと思いました。
先生、お体御大事に。
お返事ありがとうございます。
「まずは信頼関係を築くことから」、
こう心を決めることができているだけでも、一歩前進と思います。
蒼さんのペースで、ゆっくり行きましょう。
ひと息つきに、遊びに来て下さいね。
先生のところも、大変なのでしょうか。
医療も介護も含め、人をケアする現場は
どこも同じなのかも知れませんね。
ぴょん先生が下さった温かい心を、
そのまま千秋さんにバトンしましたよ。
千秋さんに本物の笑顔が戻るまで、
引き続き見守るつもりです。
摂食障害の患者さんは、確かに接し方は慎重になりますよね。
まずは、どこまで正直に話してくれているか、あたりから
測らないとならないし。
難渋することはしばしばあります。
私自身も、スーパーバイザーの先生の指導の下になんとかやっていますが、
内心冷や冷やしています。
> 暖かい心が、トマトの味にもしみたんだ
うふふ、素敵な考え方ですね(笑)
とても素敵なお話に感動しています。
なな先生と千秋さんをつなぐ糸、蜘蛛の糸から今は綱引きの綱ぐらいになってきたように思います。
うちの息子、本が大好きで本ばっかり読んだ後、小憎たらしくなります。でも、庭や外で泥まみれになると、とってもかわいくなります。
娘も植木鉢の土をいじるところから、今はおむつバケツの水と必死で土と水を家の中で求め、今はお砂場でご機嫌です。
家の側で畑仕事をするのがあたりまえだった頃、痴呆になっても今より生きやすかったのでは、とアルツハイマーの我が祖母を見ていて思います。
千秋さんと私に、素敵なメッセージをありがとうございます。
今でこそ安定していいお話ができるようになりましたが、
途中は正直どうなるかと思った時もありました。
いいスーパーバイザーに恵まれたことも、
大切なポイントでした。
ちいまめさんは、お坊ちゃんとお嬢ちゃんがいらっしゃるのですね。
お2人の土いじり、楽しそう♪
老若男女問わず、土に触れることには独特の意味があるのかも知れませんね。
いつもながら、なな先生の繊細な心に打たれます。。
かくして、わたしは、先生のBlogのファンに。。。
先生のPoemのようなBlogがもし、本として出版されたら、私買います!!!!
素敵な言葉のプレゼントを、ありがとうございます。
本より、ここでなら読み放題でタダですから(笑)
どうぞ堪能して下さい。
また遊びに来て下さいね。
心の病は、何かきっかけがあると以外に快方に向かうのではと考えています。千秋さんもそのきっかけの第一歩を歩みだしたのですね。鬱病は、仕事を休んでのんびりと、というのが定説となっていますが、私は逆に、何か仕事に対し、遣り甲斐やきっかけがあれば、(無理をしなければ)それはそれで快方に向かうのではと今では自己を見つめて考えてます。今日も地震がありましたが、被災された方々の心のケアが心配です。
千秋さんとなな先生の心のつながり
その温かいものを感じて、傍で見ていたトマトも
甘さを増したのでしょうね。
植物って、不思議なものでちゃんと見て感じるらしいです。
愛情をこめて育てたら、それだけの成果を実らせてくれます。
ずっと前に、毎日声をかけながら丹精にお庭の手入れをしていた方がいて、その方が話し掛けると反応する植物がある(サボテンだったかな^^;)って話を聞いたことがあります。
愛情が通じたミニトマト、とっても甘かったことでしょう。
千秋さんのご回復、信じています。
新潟の地震で避難所に臨月の妊婦さんがいると報道で知りました。
とても気になります。
そうですね。
「どうすると良くなるか」人によってちがうのでしょう。
人の数と同じだけ、道筋があるのだと思います。
その、とてもデリケートな、そしてとても重要なその人ごとの違いを
大切にしたいと常々思っています。
Jさん、何もできませんが、見守っています。
この頃、普通の時間にPCに向かっていらっしゃるようですね(笑)
>愛情をこめて育てたら、それだけの成果を実らせてくれます。
そうかな〜〜(^ ^;)
mizuhoさんに言われると、そんな気がして来ました。
そうあってほしいと思って、ミニトマトとラディッシュに
「頼むわよ」と、話しかけてましたから(笑)。
> 新潟の地震で避難所に臨月の妊婦さんがいると報道で知りました。
そうなんですね……
きっと、しかるべきところに守られていると思いますが。
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