「公衆はもっぱら新聞紙によって事件および問題の真相を知り、これを判断の基礎とする」
ずいぶん昔の文章だとすぐ分かりますね。日本新聞協会が一九四六年七月に制定した最初の「新聞倫理綱領」の一節です。当時、テレビはもちろん民間放送もなく、社会の日々の動きを広く、詳しく知るには新聞が唯一のマスメディアでした。
今の私たちは違います。新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、ウェブ、携帯など実に多様なメディアを通じてニュースや情報を手に入れています。
山陽新聞社も新聞を核に、現時点で使えるほとんどすべてのメディアを通じてニュースをお届けしています。最近ではテレビニュース番組の制作や動画の取材にも取り組んでおり、ウェブサイトやケーブルテレビのoniビジョンなどを通じて配信しています。
新聞社の編集局が放送局のようなことをするとは、ほんの少し前まで思いもよらないことでした。今後、いろんなかたちでマスメディア間の融合が進んでいくことは間違いないでしょう。
九月一日付で編集局にメディア本部が発足しました。取材、紙面編集、多メディア編集を一体的に行い、いつでも、どこでも、だれにでも山陽新聞ニュースを届けるためです。
先ほど引用した新聞倫理綱領は二〇〇〇年六月に全面改定されましたが、根本の精神は不動です。「正確、公正、責任」。多メディア時代にあっても新聞社のメディアであるかぎり、守り通さなければならない誓いです。
(メディア本部・佐々木善久)