三笠フーズによる事故米流通について会見する農水省の廣田明消費流通課長=8日、鎌田正平撮影
三笠フーズが工業用の事故米を食用と偽っていた問題で、農林水産省は昨年1月に不正の情報提供を受け、その後も繰り返し工場に職員が足を運びながら、見破ることができなかった。事故米の購入業者を抱える自治体の担当者からは、発覚後も情報を積極的に明らかにしようとしない農水省の姿勢に不満が噴出している。
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三笠フーズをめぐる疑惑は07年1月末にも農水省東京農政事務所に寄せられていた。封書に入った手紙には、有機リン系農薬のメタミドホスが検出された事故米が、「米菓用で広島方面で売りに出ている」と記されていた。
この「告発」を受けて、福岡農政事務所は福岡県筑前町の工場へ立ち入り調査。しかし、700トンが未開封のまま在庫としてあるのを確認しただけだった。担当者は「二重帳簿になっていて不正を見抜けなかった」と釈明する。
そもそも点検態勢も甘かった。毎月、事故米を粉に加工する日程を事前提出させ、加工日には職員が立ち会っていた。過去5年で計96回にも及んだが、偽の帳簿を疑わず、出荷先に本当に納品されているのか、裏付けをとることは一度もなかった。
三笠フーズの社員は「現物は確認されないし、粉にした後に『すぐに出荷して、物はありません』と言えば済んだ」と明かす。
発覚の端緒は、8月22日と27日に福岡農政事務所に寄せられた食品表示110番への匿名電話だった。調査や立ち会いを担当してきたのとは別の部署の職員が2度目の電話で、実際の流通先を聞き出した。これが帳簿の矛盾点を突く材料となった。省幹部は「疑ってかからないと検査にはならない」と話す。
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三笠フーズは農水省にとって、便利な存在だった。
「農水省とは共存共栄でやってきた。向こうが困った時には少量でもすすんで買ってきた。『買いませんか』と営業もしてくる」。三笠フーズのある社員はそう証言する。