過去の病気と思われている結核だが、今でも毎年、国内で2000人以上、県内でも20人以上が死亡し、なお「国内最大級の感染症」だ。これまでの薬が効かない新しい結核菌も出現しており、結核予防会県支部は疑わしい症状がある場合、検診を受けるよう呼びかけている。【遠山和宏】
国内で新規登録される結核の患者数は人口10万人あたり約22人(05年)。米国(約5人)など他の先進国と比べると患者数が多く、撲滅に向けた努力が必要とされている。
結核予防会県支部によると、1980年には県内で143人が結核で死亡した。90年以降も毎年20~40人が死亡している。
一方で、結核検診受診率は県内で80年には70%近かったが、昨年は約30%にとどまった。他者への感染を防ぐためにも、早期発見が重要で、受診率の向上が求められるという。
新たな結核菌の患者が確認され始めたのは00年ごろ。「超多剤耐性結核」と呼ばれ、ここ数年、研究が進んでいる。
結核の症状が出ても、薬を飲むと1カ月程度でせきや微熱などの症状が治まるため、服薬をやめる人がいる。しかし、実際は治癒するまで半年~9カ月かかり、放置すると再び発症するケースが多い。服薬を再開し、症状が治まると服薬をやめる、ということを繰り返すうちにできる耐性菌が新しい結核菌の正体だ。従来の薬は効かない状態となる。
他者への感染例もある。治療薬が確立されていないため、超多剤耐性結核菌が流行し、再び結核が広がる可能性もあるという。
「タンが出る」「せきが長引く」などが結核の初期症状で、2週間以上続けば早めに病院で受診したほうがいい。また「十分な睡眠」「バランスの取れた食事」などが結核予防にも効果的という。
世界では毎年、約915万人が発病し、165万人が死亡するなど途上国を中心に深刻な状況で、日本は世界への援助も求められている。結核予防会は、結核予防を目的とした募金活動「複十字シール運動」を展開しており、昨年度は全国で約3億8000万円が集まった。結核対策の調査研究や途上国の結核対策支援に使われる。問い合わせは県支部(096・365・8800)。
毎日新聞 2008年9月9日 地方版