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私の病院で、もうすぐ臍帯血バンクへの献血がスタートします。
臍帯血は、血液疾患の患者さんへの骨髄移植とほぼ同じ治療に使うことができます。
骨髄移植はドナーに負担がかかりますが、
臍帯血は、お産が終わればいらなくなる胎盤と臍帯から採血するだけで済み、
そして誰かの生命を救うことのできる、画期的なものです。
手間はかかってしまいますが、
忙しいこのご時世に、敢えて導入に踏み切ったことには、理由があります。
非常勤医として週1回勤務している、S先生の産院へ行った時のことです。
S先生が「これはなな先生のものですよ」と、封筒を渡して下さいました。
どうやら金一封です。
先日お産された産婦さんのご主人からとのことですが、
たまたま当たった当直医である私に何故?と不思議に思っていると、
S先生が説明して下さいました。
S先生の産院は忙しく、当直に行くとまずは完全に徹夜になります。
しかしS先生は、私が大学院生時代、無給だった頃に
優先的に当直に呼んで下さり、経済的に支えて下さった恩師です。
また、開業医であるS先生は、患者さんへの接遇にとても気を配る先生ですので
私自身も、どんなに忙しい当直の時でも、心して丁寧に接するようにしていました。
そうすることが、S先生への恩返しになると思っていました。
その産婦さんのお産は、真夜中でした。
臍帯血バンクへの献血を申し出て下さっていた方です。
ご主人とご主人のご両親が、分娩室の外で初めての赤ちゃんをお待ちになっていました。
無事にお産になり、臍帯血の貯血が終わって、
ご家族全員がお揃いになったところを見計らって、口を開きました。
いつも通りに、お産へのお祝いの言葉を述べた後、
「今回は臍帯血バンクへの献血にご協力下さって、ありがとうございました。
ママのご好意で、この子は、生まれると同時に誰かの命を救ったことになりますね」。
敢えてご家族がお揃いになってからこの言葉を言ったのは
患者さんへの接遇に気を配るS先生の産院だからこその、パフォーマンスでもありました。
ところが産婦さんのご主人が、
自分の両親の前で奥様が褒められたことに、感激したのだそうです。
それで下さった、金一封でした。
一緒に添えられていたお姑さんからのお手紙には
「孫の一生のスタートを飾るお言葉を、ありがとうございました」
と綴られていました。
これにはS先生も喜んで下さって、そのまま私に下さったという流れです。
さらに喜んだ私ですが、しかし到底使えるお金ではなく、
考えた末、こんなふうに育ちましたという報告も兼ねて、母に渡しました。
私よりさらに感激屋の母にも、到底使うことはできず、
結局、母の母(つまり祖母)の仏前に上がったままになっているようです(笑)。
臍帯血をめぐるこんな心の連鎖が、臍帯血バンクへの導入までつながったというわけです。
私の大好きな、春野ことり先生のブログhttp://blog.m3.com/Visa/20070502/1に
「おだてりゃ医者も木に登る」とありましたが、まさにその通り。
木に登っちゃった医者の、一例です。
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コメント
コメント一覧
妻の父・兄は産婦人科です。妹の夫は臍帯血の研究で教授職につかせていただきました。
みんなに教えてあげたい話です。
救える命へ向けた
暖かい一歩ですね。
このように生まれた
感激の絆が
これからも
彩り深く
つながっていきますように☆
やはり、”言葉”ですよ。人類を救うものは。
それもぐっどなタイミングで・・・。
私の「大好きな」なな先生から「大好きな」なんて言われると、天まで舞い上がっちゃいます~。
産婦人科って本当に喜びのあるいいお仕事だと思います。何かと大変なご時世ですが、こういうことがあるから頑張れるんですよね!
普段のお仕事でさえ忙しいのに、新しいこの制度のスタートは大変でしょうが、本田美奈子.さんも白血病の時に、この臍帯血を使った治療をされたはずですよね。全国の白血病の患者さんに沢山役立っていくことを私も祈っています。
そして、なな先生や妊婦さんの思いが、沢山の白血病の患者さんに伝わりますように。
先生のお言葉で、初めて気づきました。
そうでしたね、これ、産婦人科ならではのいいエピソードなのですね。
素敵な意味づけを、ありがとうございます。
臍帯血に係わる先生方に、よろしくお伝え下さい。
臍帯血バンクの血内の先生にお聞きしたのですが、
臍帯血移植は、骨髄移植の数を上回ったそうです。
もっと拡がるといいですね。
あつろー先生のカフェですれ違いましたね(笑)。
慣れない事務仕事や、臍帯血に関する勉強会等、雑事を乗り越えての念願の献血スタートなのです。
その記念と思ってつぶやいた記事でした。
この産婦さんのお姑さんから頂戴した言葉を、今度はEさんにプレゼントです。
当院の臍帯血バンク献血スタートを飾る言葉を、
ありがとうございます。
おっしゃる通りですね。
医者を活かすも言葉、逃散させるも言葉。
もちろん、医者だけではないでしょう。
「人の命を救う仕事」、普段あまり意識することはありませんが、その通りでしたね。
試算したら、当院で臍帯血献血が行われると、
うまくいけば年間70人近い血液疾患の患者さんを救えそうです。
俄然、張り切りますよね。
木の上、気持ちいいですよ~(笑)
是非登ってみて下さい。
いいでしょう、産婦人科。
満床の病床マップを見て、堂々とにんまり笑えるもの産婦人科の特権です。
でも、こうして産婦さんと赤ちゃんの一生の記憶に残る場になるのだと思うと、
気は抜けません。
ところで、満床でにんまり、という時点で、やっぱり仕事中毒なのかな(笑)
>なな先生が臍帯血バンクへの献血のスタートを心待ちにされている様子が伝わってきます。
なんでわかったんでしょう~?(笑)
献血がスタートしたらきっと、毎日献血バックの数を数えて、せっせと記録すると思います。
秋篠宮妃紀子様も、献血されたそうです。
もっと拡がって、一人でも多くの方の生命と健康を救えますように。
孫が生まれた産院も明るくて新生児が眩しかった。
。。。。。木に登る、面白い表現ですよね。
褒め殺しなんてのもあるけど これは
注意しないといけません、、、ね。
え、お孫さんがいらっしゃる年代の方なんですね。
びっくりしています(笑)
ちょっと年上くらいの方を想像していましたので。
産院の、特に新生児室には、独特の光があります。
産婦さんのご主人、お姑さん、
なな先生のお母様、そしてなな先生。
素敵な方々の素敵なお話です。
こうしてコメントを書くたび、なな先生にお会いしたくなる気持ちが高まります。
そんななな先生をお育てになったお母様にもお目にかかりたくなってしまいました。
母までほめて下さって、ありがとうございます。
私と母、ごく平凡な母娘です。
「仲良きことは美しきかな」というように、
仲良しの関係は、きっと美しく見えるのですね。
お嬢さんと一緒にフラワーアレンジメントに行っているmizuhoさんは、
私から見たらとってもうらやましいですよ。
私も母とでも、娘(いたらですが)とでも、やりたいな。
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