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< 冒涜 | メイン | おだてりゃ医者も・・・ >
2007.04.26 22:07 |  診療  |  医療事故  |  なな  | 推薦数 : 9

医者・患者関係は深遠です

Second opinionのために患者さんを紹介した先の先生から、電話が来ました。
患者さんの、子宮膣部組織診のプレパラートを貸し出してほしい、とのことです。
カルテを開くと、私の病院で子宮頚部上皮内癌と診断されたのが、半年以上前です。
また、私のところにいらっしゃる前に、他の病院で同じ診断がなされており、
元々Second opinionで当院にいらっしゃったものを、
更に他の病院での診察をご希望されたため紹介した、という経緯でした。
3つ目の病院(同時に2つの病院に紹介しましたので、計4つの病院にかかっています)で、
円錐切除術を受けた、という記録があります。
なかなか手術が受け入れられなかった、という気持ちがよく汲み取れる経過ですが、
それにしても、今頃になって何故?と思い、事情をお聞きしたところ
何と、患者さんが紹介先の先生を、訴えている、とのこと。

詳細は、こうです。
紹介先の先生のところでも、ご本人のご希望で同じ組織診を施行し、同じ診断になったそうです。
4つ目の病院でも、やはり組織診をやっています。
その上で円錐切除術を施行したら、切除した検体には癌細胞が残っていなかったのだそうです。
執刀した先生が「よかったですね、癌細胞はありませんでしたよ」と言ったら、
「癌細胞がないのに、どうして手術をしたんですかっ」となってしまったとか。

癌細胞がないことは、切除して初めてわかることなのですが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

世津子さん(仮名)は、体外受精で授かった、双子ちゃんの妊婦さんです。
子供の頃、重い腸の病気のため、お腹を開ける手術を何度も受けています。
体外受精であっても、妊娠成立自体が奇跡的、という状態でした。
遅いご結婚をされ、不妊に悩んだ世津子さんは、いくつも産婦人科を回った後、
当院の産婦人科部長先生の外来にたどり着きました。
更に部長先生のお知り合いの不妊専門のクリニックで、何度も体外受精をトライし
ようやく授かった、待望の双子ちゃんでした。
しかし、どんどん大きくなっていくお腹に、
恐らくは激しく癒着していると思われる腸がひきつれるのでしょう。
妊娠中に、激しい腹痛に悩まされていらっしゃいました。
一方で、妊娠成立までの背景もあって、世津子さんもご主人も、世津子さんのご両親も、
部長先生に絶大な信頼を寄せていました。
ああいうのを「目がハート」というのでしょう(笑)、
痛み止めを使っても全くおさまらない痛みに泣いていても、
部長先生の温和な顔を見るなり、涙目に笑顔を浮かべていらっしゃいました。

お産は帝王切開、もちろん部長先生の執刀です。
大きなケロイドのあるお腹を切開すると、何度も開けたお腹は、見たこともない腹壁になっていました。
皮膚のほぼ真下まで膀胱がつりあがっており、
部長先生の技術を持ってしても、最初の切開で、膀胱の一部を損傷してしまいました。
膀胱損傷は、本来は極力避けるべき合併症です。

お産は無事終わって、術後のご説明をご家族にした時のことです。

部長:「ほぼ予定通りの手術ができたのですが・・・実は膀胱の一部を損傷してしまいまして・・・
   膀胱を縫わざるを得ませんでした。1週間くらい、尿管が入ったままになりますし・・・」
お母様:「あ、あ、あ、先生、ありがとうございます~~」
ご主人:「子供を取り上げて頂いて、膀胱まで縫って頂いて、
   いやいや、何とお礼を申し上げたらいいのやら。」
部長:「は、は、は・・・(汗)」
私:(は、は、は・・・)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

医者・患者関係は深遠です。

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コメント

コメント一覧

これは、厳しいですねー。
しょうがない、って言ってもわかってはくれないんでしょうねー。
説明が不足してるから、医療裁判が起こる、って言う人もいますけど。
最初から、聞く耳持たない人には、何を言っても聞いてくれないんですが。
そんな事、ほかの日常生活とかでもあるでしょうに。

なんでわかんないのかなー。
written by Dr. I / 2007.04.26 23:01
すみません、セカンドオピニオンに関してアメリカで体験した2例をTBさせて頂きました。

先生ご提示の最初の案件はアメリカですと裁判としては成立しないと確信します。医療専門担当弁護士が私の剣道仲間にいますが、彼等はカルテ開示、医師からの事情聴取だけで無罪放免。日本では裁判になるのですか?
これがいつも不思議です。

後半のお話、ほっとしました。いいお話をありがとうございました。救われた気持ちです。
written by Tai-chan / 2007.04.26 23:13
うーん難しいですよね! 悪性腫瘍は結構セカンドオピニオンあるのですが、出来るだけキチンと説明してるつもりでも、理解されてなかったり・・・ 
でも後半みたいな話があるから頑張れるのかも(o^o^o)
written by メタボ / 2007.04.27 00:12
むずかしですね。
医学的知識や医学的考え方をバックグラウンドを持つか持たないかで、医師からの説明の理解力は全然違うと実感しています。(だって統計学や経済学のバックグラウンドのない人にいくら統計や経済の説明をしてもわからないことってありますでしょう?)
曲がりなりにも看護学・医学を大学で専攻していたので、病院での説明もわりとスムーズに受け入れることができます。でもそうでないとたとえば姉や友達なんかでも見当はずれな理解をしていることがあります。本当に難しいです。

されど2例目のように、心が通じ合えば言葉もいらないときもあるので、人間って不思議ですね。
written by ひいよん / 2007.04.27 00:21
対照的な2例ですね。
昔は後者のような患者さんが多かったのですよね。でも最近はどんどん前者が増えています。これはマスコミの偏った報道が影響しているのだろうと思っています。
前者のようなケースが増えると、医療者はやり切れませんね。
written by 春野ことり / 2007.04.27 00:38
えー、円錐切除ですよね、子宮がなくなったわけではないのに訴えるのですか…信じられません。
結果が出てからなら、何とでも言えますよね。
まさに「後出しジャンケン」ですね、医師は全知全能の神様だとでも思っているのでしょうか(だったら崇拝して欲しいものです)。
確かにドクターショッピングをしている時点から、DQNの素質があったのでしょうが…ひどすぎますね。
UROでもたまに、膀胱全摘をしたけど癌は残ってなかった(TURで切除しきれていた)ことがありますが…寒いです。
「だったら手術しなければ良かった」とイヤミを言われることはあっても、訴えられた事例は聞いたことはないのですね…(ストーマができるので、QOLが大きく低下します)

嫌な時代ですね。

膀胱損傷は…仕方ないですよ。縫ってバルーンを入れれば治ります。ちょっと渋ったりしますが…
written by うろうろドクター / 2007.04.27 11:31
なな先生
セカンドオピニオンを求める人はだいたい二種類です。
1.地方の名士
2.日本語を理解できないヒト
私の外来にいらっしゃる方で2の場合は、私は担当医にならないことにしています。
最近、私の説明を「信用していないわけではないのですが」といいつつセカンドオピニオンを求めていった方がいますが、この方の診療は、お断りしようと思っています。
こちらのベストが理解できない方には、ベストを尽くす意味がないと思います。
written by Atsullow-s caffee / 2007.04.27 12:40
Dr.I先生、こんにちは。

この円錐切除の患者さん、確かに最初から
自分が子宮の病気であることが受け入れられない、という気持ちを露にしていました。
いくつかエピソードがあったため、よく覚えているのですが、
例えば、この患者さんの確かお身内の方が、卵巣嚢腫のopeをしているそうです。
そのお話が出た時に「卵巣嚢腫は、良性の腫瘍です」と言ったら
「卵巣膿腫って、腫瘍なんですか? そんな話、聞いていません」
でしたので。
どう接したらいいのか、難しいですね。
written by なな / 2007.04.28 06:46
Tai-chan先生、コメント、TBありがとうございます。
いくつも頂いて、単純な私はただ喜んでます(笑)

当事者の先生に、詳細お聞きすることはできなかったのですが、
「説明義務違反」というものがありますので、
これなら争点になり得るかと思います。
日本以外には、説明義務違反という条項はないのでしょうか。
「期待権の侵害」は、かなり日本独特のものと聞きましたが。
written by なな / 2007.04.28 06:50
ひいよん先生、こんにちは。

>医学的知識や医学的考え方をバックグラウンドを持つか持たないかで、医師からの説明の理解力は全然違うと実感しています。

まさにこの通りと思います。
我が身に照らし合わせると、患者さんの気持ちがわかるような気がします。
例えば銀行あたりで金融関係の説明を聞いても、この方面に全く疎い私には、
さっぱり理解できませんから(笑)。
「元金云々」と言われて、全く理解できず、
「ガンとかキンとか言われても、全くちがうものを想像しちゃいますね」と言って、爆笑されたことがあります。

一方、不妊患者さんは、得てしてよく勉強していらっしゃることが多く、
ある時
「どうして普通はひとつしか排卵しないんですか」と聞かれて
どきっとしたことがありました。

どの患者さんにも完全にわかってもらうのは無理でしょうが、
なるべくわかってもらえるように、お話しするしかないのでしょうね。
written by なな / 2007.04.28 07:02
メタボ先生、こんにちは。

悪性腫瘍こそ、セカンド・オピニオンは必要かと思います。
ほんと、説明は難しいです。
患者さんの反応を見ても、どれだけわかってもらえたかすら、把握できませんしね。

後半の話の部長、とっても温和で素敵な先生なんです。
医者は、オーラも大切かも知れません。
written by なな / 2007.04.28 07:11
春野ことり先生、こんにちは。

先生が下さったTBを拝読して、「幸せ不幸せはその人の心が決める」という思いを強くしています。
この2例も、そんな思いから綴ってみました。
我が身を振り返って、上手に幸せに生きたいな〜、と思います。
written by なな / 2007.04.28 07:13
うろうろドクター先生、こんにちは。

そう、子宮を取ったわけではないのですが。
しかし、円錐切除の後遺障害として、
1 妊孕性が落ちる可能性がある:頚管の一部を切除するため、頚管粘液が若干減ることによる
2 妊娠時、切迫早産になりやすい
の2つの可能性があることはあるのです。
あとは、他でも書きましたが「説明義務違反」となるのでしょうか・・・

>UROでもたまに、膀胱全摘をしたけど癌は残ってなかった

他科でも充分あり得ますよね。
これからムンテラの時
「手術をしても癌がない可能性もあります」のひと言を付け加えないとならない、ということでしょうか。
はあ……

>膀胱損傷

uroの先生方には、一生頭が上がりません(笑)
written by なな / 2007.04.28 07:20
Atsullows-caffe先生、こんにちは。

先生くらい毅然とした姿勢も、必要と思います。
当事者になってしまった先生、やさしくて、いい先生なんです。
だからこそこの患者さんに選ばれて、opeをお願いされたのでしょうから。
何かが違っていたら、当事者は私だったかも知れません。
written by なな / 2007.04.28 07:25
なな先生

初めてコメントします。このエントリに書かれていた2例、他の方のコメントを拝見すると「1例目はNG、2例目はOK」と考えてらっしゃる方もいらっしゃるようですが、私(医療者でも患者当事者でもありません)にはどうしてもそうは思えないのです。

1例目は、「医師は情報の非対称性があるのをいいことに常に優位に立とうとしている」ことへの反発、2例目は完全なパターナリズムで、どちらの例も、患者側に医師を一人の人間としてコミュニケーションをとろうという姿勢が見えないという意味では、同じくらい根深い問題のように思えます。裏を返せば、2例目の人たちはシチュエーションが変われば簡単に1例目のようになってしまう可能性があるということではないでしょうか。

医師・患者が常にそれぞれがベストを尽くそうとしているということを念頭に置きながらコミュニケーションが取れるといいのですが。本当に、医師・患者関係は深遠ですね。
written by けろっと / 2007.04.28 23:47
けろっとさん、こんにちは。

>裏を返せば、2例目の人たちはシチュエーションが変われば簡単に1例目のようになってしまう可能性があるということではないでしょうか。

その通りと思います。
1例目の患者さんもまた、当初はopeをした先生を信頼していたのだと思います。
何件も病院を回った上で、選んだ先生だったのですから。
医療の現場にいると、そんな「豹変の瞬間」を見ることがあります。

今回の話は医者と患者の関係の例として書いたものですが、
愛憎表裏一体という、人間の本質の一部分なのかも知れませんね。
深遠です。
written by なな / 2007.04.29 08:48
癌の治療では1例目のような症例はよくあります。

婦人科の知識がある専門家に聞けば、
正当な治療だったことがわかるはずですけど、
その患者さんは聞く耳を持たない状態になっちゃってるんでしょう。

でも、こんな症例が全部裁判沙汰になっていたら溜まりませんね。

こういう医事紛争を裁判になる前に解決するような
第三者機関の設立がやはり必要ですね。
written by 産婦人科研究医 / 2007.04.29 19:30
産婦人科研究医先生、こんにちは。

正当な治療で、結果が良くて、も訴訟になってしまった例です。
「説明義務違反」というものがある以上、起こりえることは、
全て説明しないといけない、ということになるのでしょうか。

裁判は、起こす側も心身共に非常に消耗すると思います。
この患者さん、今、どんな気持ちでいらっしゃるでしょうね。
written by なな / 2007.04.30 11:36
なな先生、こんにちは。
GWのお休みとれてますか~?

信頼しているお医者さまなら、患者側としては命に関わることでもなければ特に突っ込むこともなくALLおまかせなのでしょうね。
専門用語を並べて説明されてもわからないし^^;
私もなな先生だったら「まな板のうえの鯉」になっちゃうかな。お好きにどうぞ~って感じで。
基本的に退院してから元通りの生活ができればいいだけですもの。

ネットのお友達に先生の先輩外科医のお話を伝えたら、とても感動してたとともに先生からのメッセージ ゛死ぬまで忘れません゛とのことでした。携帯からだとコメントが読めないそうで代わりにお伝えしました。
written by mizuho / 2007.05.01 16:30
mizuhoさん、こんにちは。

「まな板の上の鯉」というか「先生にお任せします」という患者さん、いらっしゃいます。
いい緊張が張りますよ。期待に応えなきゃ、と思うからでしょうか。

優しい言葉をありがとうございます。
6本指の天使に幸あれ ~~/
written by なな / 2007.05.03 10:27

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