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前期破水で入院された元美さん(仮名)は、2人目のお産です。
破水すると、ほどなく陣痛がくることが多いのですが、
元美さんの場合、一晩入院して、ようやく陣痛が始まりました。
いったん陣痛が始まると、経過は順調で、
数時間で分娩室に移動になりました。
分娩の体位を取って消毒した頃、ご家族が到着されました。
ご主人と、2歳半になるお兄ちゃんの一馬くん(仮名)の2人です。
ところがお兄ちゃん、近くまで来たのがわかるくらい、大泣き。
陣痛の合間の、元美さんのお話によると、
ママと離れて過ごしたのは、生まれて初めてだったそうです。
前の晩もご自宅で大泣きし、泣き疲れて眠るまで、パパがほとほと困ったのだとか(笑)。
お産が終わるまでお待ち頂いたのですが、
壁一枚隔てた向こうから、一馬くんの泣きじゃくる声が聞こえて来ます。
「ほんとにママが大好きなんですね~」と、
助産師も私も、ほのぼの。
玉のようなお嬢ちゃんが無事生まれたその途端、
疲労の残ったままの顔で、元美さんは、「息子、入れてもいいですか」。
産後の処置がまだなのですが、ご本人の希望なので、
一馬くんを分娩室に呼びました。
ママの顔を見るなり、一段と大泣きしながら駆け寄ってきた一馬くんは、
自分で分娩台に登ろうとするのですが、高くて登れません。
看護師に抱きかかえられて、元美さんの隣に横になると、
ぴたりと泣き止みました。
元美さんは、胎盤を出されたり、局所に麻酔や縫合されたりしているのに、
慈母のようなやさしい表情で、「一馬、えらかったね、ママいるからね、よしよし」と、
下半身とは全く別の、完全に子供を慈しむだけの、ママの顔になっています。
一方、赤ちゃんの清拭が終わったので、
ママに抱いてもらうために、一馬くんに分娩台から降りてもらおうとしたら、
再び火がついたように泣き出しました。
もう、到底引き離すことはできません。
かくして、元美さんの胸の上に赤ちゃん、右脇に一馬くん、
局所は縫合中、元美さんは慈母のような微笑み、という、不思議な光景。
母性の神々しさに、ただ圧倒されました。
さらに、所在なさ気に立ち尽くす、パパ(笑)。
溶けるような笑顔で元美さんと一馬くんに見とれる、若い看護師。
お産の前、泣きじゃくる一馬くんをあやそうとしてくれた、他の赤ちゃんのおばあちゃま。
普通の生活をしていたら見るはずもなかった、
こんな人間味あふれる光景に出会えること。
これも産科医の醍醐味と思うのです。
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コメント
コメント一覧
なな先生の今回の記事を拝見して、ブーグローの絵画を
思い出しました。↓ こんなカンジ(笑)
http://rart.org/cgi-bin/goodsprev.cgi?gno=030boug
テーマが違うけれど、女性の傍らに2人の天使ちゃんw
殺伐とした世の中でこんな別世界な光景があるんですね。
相変わらず、ご多忙の日々をお過ごしのようですね。
『産科医の醍醐味(1)』読ませて頂きました。
ご家族は、なな先生ほかスタッフの真摯な働きぶりと心遣いに感謝されましたか?
きっとこのご家族は、心からの謝辞を述べてくれたのでしょうね。
でもね、医療界に限らずどの業界でも、いや仕事を離れた身近な世間においてすら
お世話になった相手に対して素直に感謝する、っていう事に
欠けているような気がします。
医師や看護師、その他医療技術者に限らず
我々サラリーマン(技術系・事務系)においても
通常業務以上の仕事・手助けをしても
『どうもありがとう!』『お陰で助かったよ!』などの感謝の言葉を聴かれなくなりつつありますね ...。
少し寂しい傾向です。
煽てられて木に登るタイプの私のような人間には、特にそう感じるのかな(笑)?
仕事ってお金だけじゃないんですよねぇ。
金銭以上に、意欲的に仕事をするインセンティブに恵まれれば、暴走気味にでも仕事に打ち込めちゃうんですけどね笑)。
心のこもった謝辞は、現金○万円以上の値打ちがると思いますね。
休む間もなく産科医を続けられるのは、こんなほのぼのエピソードが多々あるからなのですね。
一馬ちゃん、聖母のようなお母さんのもとできっと優しいお兄ちゃんになっていることでしょう。
生まれてきた赤ちゃんも幸せいっぱいのサークル(家族の輪の中)で健やかに成長されることと思います。
前期破水かぁ、二人目の出産を思い出しました。
一晩入院して翌日opeになりましたが、先生からの後日談。
切開したらすぐ赤ちゃんの顔で睨みつけられたそうです^^;額に傷がつかず良かったけど、なかなか出てきたくなかったようで吸引。カップのあとは2週間ほどとれませんでした(・・;)
子宮の中は心地よいのでしょうね。。
私は今、チビの隣で寝るのが一番のしあわせです!
無事、お帰りになったようで(笑)。
素敵な画像ですね。
産婦人科外来に張りたくなります。
こんな世の中で、私みたいのは甘いのかも知れない、と思うことがあります。
でも、お産は元々夢のあるものなのです。
産婦人科医が、いえ、産婦人科医だからこそ、
お産に関する夢を語るのも、ありかな~、と。
現実の世界では、照れくさくて口にできませんが、
ブログでは、むせ返るような甘い話を連発してしまおうと思って(笑)。
何事につけ、心を込めてお礼を言うのは、大切なことだと思います。
う~ん、元美さんご家族に、お礼、言ってもらったかな?
あまり印象に残っていませんが(スミマセン)、
ただ、普通に嬉しそうになさっていたので、それで充分かと。
>仕事ってお金だけじゃないんですよねぇ。
同感です。
研修医の頃は、お金を払ってでもお産やopeをしたいくらいだと思っていました。
帝王切開なのに吸引でないと赤ちゃんが出なかったなんて。
mizuhoさんも赤ちゃんも、頑張りましたね。
帝王切開も含めて、お産の時の様子を後でご本人とお話することがありますが、
こんな風に、印象に残るものなんですね。
心してお話しないと。
この時間だと、mizuhoさんはお子さんたちと一緒に夢の国かな(笑)。
お産って本人にとっては本当に衝撃的だと思うんです。半ばパニック状態だから事実を理解できてないんですよね。ホントはお医者さんとか助産師さんとかとも、こうでしたね、ああでしたねって語って自分の中で理解していきたいんですよね。
こうしてなな先生が振り返っていらっしゃるってことは元美さんも患者さんも幸せだなぁ~って思います。
素敵なお話ですね。
とても温かい気持ちになりました。
私もいずれは2人目を・・・と思っていますが、
私には元美さんのような行動がとれるのかな・・・?
でも、その時には、
元美さんのような女性、母親でいたいと思いました。
あ、でも息子が私ナシでも大丈夫!という子だったら
ちょっと寂しい・・・ですね・・・。
図星です(笑)。
仕事、多分大好きです。
そっか、後でご本人と一緒に振り返る!
これ、必要ですよね。
十余年目にして、今、初めて気づきました。
今日から早速実行します。
ありがとうございます!
ほんと、お産って、ご本人にとっては衝撃的ですよね。
真夜中でも、その日の何件目かであっても、
一回一回を、大切にしないといけません。
ああっ、まだまだ課題がいっぱい……(でも、ワクワク)
脊椎麻酔後の後遺症、大変でしたね。
地獄の苦しみだったのではないでしょうか。
「もう一人子供がほしい」というお気持ち、
とっても大切なものと思います。
各科のドクターが何人もいそうな、大きめの病院で、聞いてみては如何でしょう。
個人的な意見ですが、私だったら、麻酔科と小児科が許可してくれれば
脊椎麻酔でなくても全くOKですし、
同じ考えの麻酔科と小児科の先生も、いると思います。
それにしても、もっと無茶な要求をしてくる患者さんも多い中、
ふたばさんのような方のほうが、却って暮らしにくい世の中なんでしょうか。
ちょっと切ない気持ちです(微笑)。
こちらこそ心温まるコメントを、ありがとうございます。
いずれ2人目を。
素敵な女性、母親でありたい。
でもでも、息子さんが「私なしでも大丈夫!」じゃ、ちょっと寂しい。
素敵です!
しかし、考え方はいろいろで
「2歳半にもなって、そんな甘えたことではいけません。
ちゃんと言い聞かせれば、わかるはずです」という辛口の意見もありました。
何人も子育てをした、還暦過ぎの女性の言葉です。
まだまだ、知るべきことはいっぱいありそうです。
お話から、今でもたまにある脊椎麻酔の副作用だと思います。
ここでお話して下さったくらいの内容で充分ですので、
ここはと思う病院で、じっくりお話してみては如何でしょう。
勤務医の大部分は、良心に従って働く、普通の医者ですよ。
ふたばさんの気持ち、充分伝わると思います。
また遊びに来て下さいね〜
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