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医者になってから、怒り心頭に達したことが、3回あります。
1回目は、医者ではなく医学生時代、解剖学実習の時です。
解剖学実習では、ご本人とご家族のご厚意で献体して下さったご遺体を解剖します。
学生4人1組のクループで、1人のご遺体での実習でした。
同じグループの中に、秀才を気取った男子学生がいました。
よく勉強していましたが、解剖がスムーズに進まないと、不満を口にするタイプです。
確かに、皮下脂肪の多いご遺体だと、メスがすぐに切れなくなるので、
やりにくい面はありました。
ずーっとブツブツ言っているので、うるさいな~と思うものの
自分の手先に夢中で、あまり気にしていませんでした。
が。
「全く、何考えてんだ、このご遺体は」
と、尖った接子の先で、ご遺体をぶつっと刺したのです。
見た瞬間、一気に涙があふれました。
怒るとか、許せないとか、そういうことではなく、
ただ、太めの静脈を切った時のように、ぶわっと涙があふれ返ったのです。
帽子にマスクですので、誰にも気づかれることはありませんでしたが、
女子更衣室に駆け込んで、しばらく涙を流していました。
怒り心頭に達した瞬間でした。
2回目は、大学病院に勤務していた時のことです。
大学病院は、診療機関であると同時に、教育機関でもあり、研究機関でもあります。
私のいた大学病院は、その中でも特に研究に力を入れている病院でした。
ところが私は臨床ばかりに力を入れ、研究には貢献できていなかったため、
たまにちらりちらりと小言を言われていました(気にしていませんでしたが)。
産婦人科外来に来た患者さんは、それぞれの研究テーマ別の専門外来にかかってもらって、
専門的な治療を受けると同時に、研究に協力して頂くこともあります。
その一方で、どの専門外来に行ってもらえばいいのか、
判断に迷う患者さんもいらっしゃいます。
多くの場合、「何となく調子が悪い」「更年期なのか、気分の変調がある」など、
治療のポイントがつかみにくい患者さんです。
元々女性のメンタル・ケアに興味のあった私は、
そういう患者さんを集めて、時間をかけてお話することを始めました。
これが思ったより好評で、患者さんは喜んで下さるし、
他の先生方も、専門外の上、つかみにくい患者さんを任せられると、
人気は上々でした。
ある日、医局の指導的立場にある先生とお話している時のことです。
「そういえば、なな先生のところに、不定愁訴の患者が集まっているらしいね。
ま、研究にならない患者を診ることないよ」
頭が真っ白になりました。
研究に、ならない、患者は、診ることない、だと??
・・・もう二度と大学病院なんか戻りません。
3回目は、福島県立大野病院、加藤克彦先生の不当逮捕事件です。
逮捕から1年以上たちましたが、全く怒りはおさまりません。
何がそんなに腹ただしいのか。
ひと言では言えませんが、多くの普通の医者たちの良心を、
踏みにじる行為だからでしょう。
来週、第3回公判があります。
第1回、第2回公判と、検察官の言動に、怒りは増幅する一方です。
加藤先生とは全く面識もなく、福島県にはまるで無縁の、一人の産婦人科医の中に、
たぎるような怒りがあることを、
福島県警も、検察も、知る由はありませんが。
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コメント
コメント一覧
“天使のような女医” なな先生。
何かあったようですね(違ったら御免ね)。
過去の怒り事案を持ち出してブツけるなんてね(深読みですか?)。
(1)思慮の足らない大学生の行い。
(2)これは仕方ないですね。
個人的には大学病院に国立研究所附属病院(通称ナショナルセンター)は、こんなモンかなぁ、と。
(3)この事件、何度読んでも福島県警と福島地検の意図が釈然としませんね。
それにしても、昨今は医療訴訟事件が多過ぎますよね。
特に産科、小児科に侵襲性の高い診療科のね。
この事は色々な医療系Blogで取り上げていますよね。
ま、そんな事はさて置き。
なな先生のご機嫌が一刻でも早く直る、何か良いきっかけに恵まれる事を
祈念申し上げます。
くれぐれも、ご自愛の上で御活躍くださいませ。
敬具
見知らぬ通行人A(その2)
最近、女性外来というのが増えてきていますね。確かに、患者自身もどの科にかかっていいのかわからないので、こういう科が増えてきたことはうれしいことです。
なな先生は、その時代の先端を行っていたのに。
これからも悩める女性のために、なな先生頑張ってくださいね。応援しています。
医学生の話、以前私が「一握りの冷血な医者もいますから」とコメントしたことがありますが、おそらくその「冷血な医者」になっていることでしょう。臨床医でないことを祈るのみです。
大学病院、聞いた話では診察台のカーテンの向こうに何人もぞろぞろ並んで観察?するとのことで、すぐ近くに産婦人科の権威の大学病院がありますが、命に関わるほどの重い病気でなければなるべく係りたくないと思っています。研究材料にはなりたくないですから。
大野病院の一件、私も公判の行方を見守っています。
なな先生の心が悲鳴をあげることのないように…
共感して下さる方がいると、やっぱり嬉しいですね(笑)。
研究も大切だし、誰かがやらなくてはならないことではあります。
ただ、向き・不向きがありますので、
自分が何に向いているか上手に見極められると、うまくいくのかも知れませんね。
これからも、どうぞ遊びに来て下さい。
いえいえ、何か困ったことがあったわけではなく、
福島事件のことを書きたかっただけなのですよ。
果たして自分は、こんなに怒ったことが過去にあっただろうか、と思いを巡らせたら
2つほど思い当たる節があったので。
(1)(2)(3)とも、同感です。
(2)に関しても、その通りですが、
だったらそうと、患者さんにも示すべきだと思います。
いずれも「人の気持ちを踏みにじる行為」なので怒ったわけですが、
患者さんは、本来敷居の高い大学病院に行こうというほどの思いがあるのに、
あの言葉を言った指導医は、その切実さに応えようとしていないのですから。
それならそうと、病院の姿勢として、初めから打ち出せばいいと思うのです。
どんな場面につけ、「どうしたの、何かあった?」と言って下さる人がいるのは、
嬉しいですね。
ありがとうございました。
80歳超える女性に、この話をしたことがあります。
大正レディーですが、目を真っ赤にして、一緒に怒って下さいました。
バリ島さんのコメントで初めて気づいたのですが、
ああ、そうですね、あれは女性外来のなかった時代に、
そんなコンセプトでやろうとしたことでした。
お母様のお話と言い、度々はっとさせてもらっています。
このお話はやっぱり悲しい気持ちになりますね。
私は看護学生として大学病院で分娩を見学させていただいたことがあります。その分娩の最中(終わったあとだったかな?)、女医さんがポリクリ学生に「そこのあなた、臍帯の血管は何本?」って質問を始めたんです。学生は緊張して答えていたんですが、今お母さんが頑張っていま赤ちゃんを産もうとしているのに、そんな話は後でいいじゃないか!とかなりの違和感(怒り?)を覚えました。それがなんとなくトラウマになって、病院なんかで産むまい!って思ってしまったんですよね。
今はお医者さんを選ぶときは、技術もそうですが、やっぱりなんとなく波長があうとか、そんな心の部分で病院を選ぶことは多いんですよね。みんなそうじゃないかと思います。
なな先生のところには先生の優しい波長を求めてみなさんいらっしゃるのではないでしょうか。頑張ってくださいね。
いつも心あるコメントを頂いて、その度ごとによろこんでいます。
「冷血な医者」が身近にいないので、実はあまりぴんと来ていませんでしたが、
そうですね、あんな元医学生がいるのですから。
大学病院は、以前は確かにそんな一面もありました。
最近は患者さんの意思を無視して「教育」するようなことは
減っているような印象です。
mizuhoさんのように医療者ではない方が、福島事件に注目してくれるのは、とても心強いことです。
学生の側、つまり教育される側にありながら、
そんな思いを持てるのは、医療者の卵として大切なことだと思います。
里帰り分娩の際、お産する病院がどこがいいかと決められずにいる人には
「波長が合うのが大事」とよく言っています。
よほどの合併症でもあれば、それなりの設備とマンパワーのある病院をお勧めするのですが、
お産こそ、波長を尊重していいと思います。
子育てが一段落したら、現場にお戻りになるのですか?
お互い頑張りましょうね。
学生時代にちょっとした心の病気になって通院する患者になったんです。大学へいくと実習があり、医療者と患者の両方の役割を同時にこなすことは難しかったんです。
学内実習中にパニックを起こしたことがあります。
そのとき、医師のK先生が呼ばれました。「何やってるんだ!」とK先生は私にどなりました。それにとても傷つきました。それで私が臨床へいけば、私はずっと患者になれないと思い、臨床へ行かず大学院へ進学しました。
でも私が大学院を修了するとき、K先生は「あのとき怒鳴ってごめんな。君があんなにしんどかったなんて知らんかったんや。僕、ずっと気になってたんや。今は元気か?」って言ってくれました。
医者のくせに、患者の気持ちを考えないなんて、って頑固に思っていましたが、K先生はずっと思ってくれていました。このとき、臨床だってまんざら悪くなかったのかも、頑固になりすぎてたかなと思いました。
結局今は公衆衛生の道に進んでいて、それはそれで大切さな仕事だと思っています。子供がお座りできるようになったら、また“健康な人が健康であり続けられるように”お仕事します。
長文で(しかも私のことで)すみません。
大変な思いをされましたね。
自分が心の病を抱えることほど、患者さんの気持ちを痛切に理解できる状態はないと思います。
ご家庭を持ちながら、健康のために仕事をしようとなさる姿は、素敵です。
私なんか、自分一人の面倒みるのでいっぱいいっぱいなのに(笑)
2番目の怒り、私も不定愁訴をよく診ていました。研究も好きではありますが、不定愁訴を聞くのが特に外来では大切な仕事の一つですね。
1番目の怒り、言語道断です。
先生のブログ、拝読しました。
タイトルが素敵ですね。
どこかに書きましたが、元々、福島の加藤先生の事件のことがきっかけて
ブログを始めたようなものなのです。
他科の先生が一緒に怒って下さるのは、この上なく心強いことです。
今後ともよろしくお願い致します。
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