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< "義理・人情” の入り口で | メイン | 潜在助産師さんたちに聞く >
2007.02.12 17:24 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  なな  | 推薦数 : 36

恩師井上先生の辞表

「疲れちゃってね・・・」

それが、辞表提出の理由だそうです。

産婦人科医としての育ての親である、敬愛する、井上先生(仮名)。
50代半ば、大病院の産婦人科部長です。
妊婦さんにとてもやさしい、お産の大好きな井上先生は、
ご自分の担当の妊婦さんのお産には、ほとんど立ち会っていらっしゃいました。
「お産の時、来て下さいますか?」と言われると、
必ずカルテに「入院時呼んで下さい」と書く私のスタイルは
井上先生から譲り受けたものです。
また、比類なくタフな先生で、
遷延した分娩を徹夜で診つづけて、
翌朝から外来と5時間のopeをこなしても
「さあ、飲みに行こうか」なんてことも、しょっちゅうでした。
井上先生の口から「疲れた」という言葉が出るのは、
一度も聞いたことがありません。

井上先生のロマンは「分娩死」。
頑張って頑張って、ようやく自然分娩になったお産を見届けて、
「よかったね、おめでとう!」と言って
分娩室の片隅で死ねたら最高だね、と言っていたのに。

ですが、私が井上先生のもとにいた頃と今とでは、
産科医療を取り巻く環境は、激変しました。
訴訟の的になりやすい小児科は、萎縮的・防衛的医療にならざるを得ませんので
井上先生のお考えにそぐわなくても、産科も萎縮医療にならざるを得ません。
患者さんの権利意識増大に伴って、要求もクレームも増えました。
頑張って自然分娩になっても、あまり喜ばれなくなってしまいました。
分娩費踏み倒しも増えています。
大学医局の人手不足も甚だしく、非常勤医派遣が打ち切られたそうです。
また、新生児死亡があった時には、警察が介入して来ました。

勿体ないことこの上ない引退ですが、
地方病院では、産科医の自殺者が出ていることを思うと、
思い切ってお辞めになったことを、英断と考えるべきかも知れません。

「お辞めになったら、何をして過ごすんですか?」とお聞きしたら、
「映画でも観ようかな・・・」という返事が返って来ました。

50代半ばの男性が、長年勤めて来た職を辞するということ。
ベテラン産婦人科医が、burn outするということ。
敬愛する、大切な師匠が、この道からいなくなること。

言葉が見つかりません。

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コメント

コメント一覧

本当に残念な事ではありますが。
結局、一番頑張っている人にしわよせが来て、忙しくなって。
もう駄目だ、ってなって辞めていかれるんですよね。
written by Dr. I / 2007.02.12 17:43
 現場はなかなか状況が厳しいので、これ以上、状況が悪化する前の撤退はやむを得ないかもしれません。しかし残念ですね、経験とノウハウをお持ちの先生がまた一人。日本の周産期医療はどうなるんでしょうかね?辞めるななんて言いません、辞める前にもっと「アピール」して欲しいですね。
written by SkyTeam / 2007.02.12 17:54
Dr.I先生、おっしゃる通りと思います。
一番頑張っている人が、報われない世の中。
とても変だと思うのです。
written by なな / 2007.02.12 17:58
Sky Team先生、私の無念と悲嘆をご理解下さって、ありがとうございます。
井上先生の辞職は、社会的損失です。
そして、日本中に第2、第3の井上先生がいらっしゃるのではないかと思うと・・・
空恐ろしいのです。
written by なな / 2007.02.12 18:01
井上先生、とっても残念ですね。
でも、それほどの先生が『これ以上はもう・・・』と思うまで
頑張っていらっしゃったと思うと、
これからのご自分の時間を大切に過ごしていただきたいですね・・・
お医者さんって、ご自分の身体よりも患者さんの事をいつも心配されていて
本当に頭が下がります。
私の知り合いの医師(外科)も大学病院勤務で
三日に一回は当直というとんでもない激務ですが、
いつもよく食べよく飲み、びっくりするほどタフです。
やっぱり仕事に誇りと大きなやりがいを感じているので、
だからあんなに元気でいられるのだと思います。
そういう頑張っているお医者さんに萎縮しないで思いっきり
働ける環境に少しでもなったらいいのになぁ、と思いました。
井上先生のように辞められる先生の中には
決して辞めたくて辞められるわけではない先生も
たくさんいらっしゃいますよね、きっと・・・

明日はバレンタインデーですね。
なな先生にもチョコあげたいです!
なな先生もどうか健康でありますよう・・・
written by はね / 2007.02.13 00:03
なな先生のショックが大きいことが私にも伝わります。
今、朝日新聞で妊婦さんの治療についての連載が掲載されており、毎日読んでいます。病気を持った妊婦さんが治療を受けながら、無事出産をした話などいろいろ載っていて、リスクのある出産を高度医療をしながら、産婦人科の先生がなんとか妊婦さんに無事赤ちゃんを産んでもらいたいという熱意が伝わってきます。

井上先生のような熱意をもった先生が燃え尽きられる。。。日本の医療は大丈夫なのか、もっとマスコミで報道してほしいです。そしてなんとか良い方向へ向かっていってほしいものです。

私もなな先生にチョコをあげたいです。先生はチョコを食べると幸せな気分になる方ですか?
written by バリ島 / 2007.02.13 00:34
これから日本の周産期医療はどうなるのでしょう…
10年後、20年後が想像できませんね。
生命の誕生は未来へと引き継がれていくのに
どんなに科学や研究が進歩しても
それだけは変わらないのに
未来の女性たちはどこで赤ちゃんを産んだらいいのでしょう。
この流れをどこでくいとめたらいいのか
誰がくいとめるべきなのか
私たちも含め、それぞれが意識改革だけでもしないといけませんね。

written by mizuho / 2007.02.13 01:30
なな先生、お疲れ様です。
今日にかぎって、ここに書き込む言葉が見つからないや…。

Sólo Dios
Sabe donde y cuando
La vida no sera
Lo has echo bien
Solo con un sueño todo
Sabras como vencer

いつか どこでとかは
神だけが知っていること。
人生は僕たちに言ってくれるだろう、
「お前は精一杯やった」
夢を見失いさえしなければ
戦いに勝つすべがわかるはず。


----------------------------

これが物語ならきっと報われるはずでしょう。
でも、現実はこんなに酷いんですね。
正直者、真面目な人が傷ついて倒れていく。
そんな光景をちょっとでも無くしていくために
少しでもそういったなな先生たちの世界を近くにいる人に伝えていこうと思います。

※ 上の歌詞はIl DIVO 版の「ヒーロー」の一節です。
スペイン語なので文字化けしちゃうかなー(^^;
written by 来夢 / 2007.02.13 15:45
井上先生、お疲れ様でした。
本当につかれたのですよね。
ゆっくり休んでくださいね。映画いっぱい見てください。

そして、そして・・・また緩やかな現場にひょこっと
現れる井上先生。
分娩死を希望するくらいですもの。
心底分娩が好きなんですよ。
今は心身共にボロボロかもしれないけど
そんな井上先生じゃないと・・・感じました。
written by ぴょん / 2007.02.13 21:20
はねさん、お久しぶりです。
心のこもったコメントをありがとうございます。
外科の先生たちも、「なんで?」って言いたくなるくらいタフですよね(笑)
私自身もかなり頑丈な方ですが、とてもかなわない、と思うことがよくあります。
個人的な印象ですが、「医者は、自分のことより患者さんのことを考える」というよりは、
医者の中には「健康ため」ということに無頓着なタイプが多いんじゃないかしら、と思います。

チョコレート、ありがとうございます。
お気持ちが充分伝わって来ました。
ホワイトデーにはお返しします(笑)
written by なな / 2007.02.15 20:45
バリ島さん、こんにちは。

そう、もっとこんな事実が報道されたら、医療崩壊も変わってくるかも知れませんね。
あの世代の産婦人科医のburn outは、決して珍しいことではないと思います。
でも、広く世の中にその事実が知られているとは思えませんから。

チョコレートは「大好き」というより、多分マニアです(笑)
opeの後に「美味しい!」と思えるひとかけらを食べる瞬間が、たまりませんね。

written by なな / 2007.02.15 20:49
mizuhoさん、こんにちは。

>未来の女性たちはどこで赤ちゃんを産んだらいいのでしょう。

やさしいママさんならではの、素直でやさしい、素敵なひと言です。
また、意識l改革も、とても大切と思います。
先日外来で、里帰り希望の若い妊婦さんとお話した時のこと。
分娩取り扱い中止が相次いでいる地方へ里帰りされるとのことですので、
なるべく早めにお産をする病院を決めて、
分娩予約を取ることをお勧めしたところ、
「え〜っ、産婦人科って、足りないんですか?」ですから。
written by なな / 2007.02.15 20:58
来夢さん。

>言葉が見つかりません。
>今日にかぎって、ここに書き込む言葉が見つからないや…。

「言葉が見つからない」。
こんな気持ちを共有してくれる人がいた。
充分ですよ(笑)。

音読すると、美しい詩ですね。


written by なな / 2007.02.15 21:05
ぴょん先生、こんにちは。

>ゆっくり休んでくださいね。映画いっぱい見てください。

本人に、伝えます。
こうなった以上、そう言って差し上げるのが、ひとつの思い遣りですね。
で、井上先生がひとしきり映画を見たところで、これも伝えます。

>そして、そして・・・また緩やかな現場にひょこっと
>現れる井上先生。
>分娩死を希望するくらいですもの。
>心底分娩が好きなんですよ。

図星ですから、これも(期待)。
written by なな / 2007.02.15 21:16
初めまして、某県で泌尿器科の勤務医をしています。
先生のブログを最初から最後まで、一気に読んでしまいました。胎児死亡の話などは涙が止まりませんでした。
世間でもいろいろと報道がありますが、実際に苦労して診療をして、燃え尽きてしまうこのような話を聞くと胸が痛みます。
今後、なな先生のような方までも居なくなったら、本当にこの国の産婦はどうすればいいのでしょうか?
もっと多くの人に、この現実を知ってもらいたいと強く思います。
私はYahoo!の方に、主に一般の人に向けてブログを書いてます。(まだまだ書き始めたばかりですが)
先生がOKならそっちでもご紹介できれば、と考えてます。
先生は、激務や当直で本当に大変かと思います。
くれぐれもお身体には気をつけて下さい。
少しでも現在の苦境が改善していけばいいのですが・・・
written by うろうろドクター / 2007.02.21 13:11
うろうろドクター先生。コメントありがとうございます。
ネーミングが素敵ですね(笑)
先生のブログ、拝読しました。
特に病気腎移植の話は、興味深く読ませて頂きました。

恩師井上先生が現場からいなくなり、
親を亡くした子供のように自失していましたが・・・
そうですね、私までいなくなっちゃ、いけませんよね。

多くの方に読んで頂くことは、もちろん大歓迎です。

今後ともよろしくお願い致します。
written by なな / 2007.02.23 05:48

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