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あるんです、はい。
その日は、同期のSくんと、ちょっと離れたところにドライブに行きました。
2人とも病院に呼ばれないはずの日に会えるのは、
数年ぶりだったと思います。
今頃と同じ、季節は秋でした。
高い空。
少しひんやりし始めた空気。
車窓から見える植物は、すすきに、コスモス。
近くに砂浜があったので、出ました。
ジーンズをまくり上げて、足首まで海に浸かって、
Sくんも私も、大はしゃぎ。
ひゃあひゃあ言いながら車に戻って砂を払い、タオルで足を拭いていると、
鳴らないはずのSくんの携帯が鳴りました。
一瞬で空気が緊張します。
「えっ? うん、うん……わかった、すぐ行く」
聞くと、常位胎盤早期剥離だそうで、
携帯がつながる医者には、全員に連絡しているようでした。
一秒でも早く、ope室に行かないとなりません。
いいからスピードを出しました。
緊張してハンドルをさばいていると、近い距離に警官の姿。
当然、車は止められました。
そしてもちろん、事情を話しました。
「XX病院のS先生と、私はT病院のななです。
S先生が緊急事態です。後で出頭しますので、行かせて下さい」。
ところが、Sくんや私よりも10歳は若そうな警官は
それを許してくれませんでした。
「規則は規則ですから」。
止められること、約5分。
以下は、後でSくんに聞いた話です。
緊急帝王切開でしたが、赤ちゃんは亡くなりました。
ope室に入室して、消毒をする直前の胎児心音確認の時は、
遅めながらも、心拍が聴取できたそうです。
この後、ope開始から児娩出まで、3分。
つまり、消毒から児娩出までの数分の間に、
赤ちゃんは亡くなったことになります。
誰も、悪くありません。
あの若い警察官は、法律を、職務を守りました。
警察官が、我々を行かせてくれたところで、
赤ちゃんの救命はできなかったかも知れません。
でもこれを、ひとつの真実として、あの若い警察官に知らせるべきか否か。
Sくんも私も、ことの重大さにどうしていいかわからず、立ちすくんでいます。
コメント
コメント一覧
昔の映画やドラマなんかでは、警官も
「おっとスピード違反の車はどこにいったのかな?見えなくなっちまったなぁー」
なんて粋な台詞を言ってくれたりしたのですが。飲酒運転をとりしまる法律とは別口にして欲しいですね。
患者さんの命が危ない→スタッフの手が足りない→非番の医師が応援に行く→目的が人命救助であるから、救急車の通行と同様に交通法規の例外を警察官に保証してもらいたい→現場では、交通違反が目的ではない上に緊急を要するので、警察官にサイレンを鳴らして先導してもらいたい。
という事情を手際よく伝えることが大切ですね。ということは逆に言えば、そういう事態に備えることが重要になります。市民の命を救うという目的は同じなのですから。
できれば日頃からシミュレーションを積んでおいてほしいですね。消防署の救急隊員と病院の救急部門では、個人的な信頼関係を基に情報交換して互いの組織の改善策を講じる試みがなされています。
これが小さな試みではなくて、市民の安全を守る一般的な取り組みになってほしいと思います。そうすれば、誤解も減ることでしょう。
ただし、飲酒要因は別ですよ。
先生のブログ、拝読しました。
私自身、この時のことはいろいろ思うところがありますが、
先生の歯に衣着せぬ断罪に、胸のすく思いをさせて頂いたことも事実です。
「緊急帝王切開以上の優先事項はない」。
その通りです。
上にも書いたように、いろいろ思うところありますが
もしあの時、赤ちゃんを救命できない、という最悪の結果が
わかっていたとしたら、
私も先生のように、振り切って行ってしまったかも知れない、と
ふと思ったりもします。
今でもSくんも私も答えが出ないことのひとつに、
「あの若い警察官に、真実を知らせるべきだったのか」ということもあるのです。
ことの可否はさておいて、こういうことがあったのだ、と、
当事者として、また年長者として「ひとつの真実」を知らせるべきだったのか。
それとも、若い彼にそこまで重い十字架を背負い込ませるのは酷、
と考えるべきなのか。
時間がたち過ぎていて、今から知らせる術はもちろんないのですが。
言及するコメントを、ありがとうございます。
今から思うと、確かに他の手続きを踏む方法はあったと思います。
地元の警察に、前もって連絡を入れるという方法もあるのだそうですね。
現在、救急車両の範囲拡大が検討されているようですが、
果たして我々のような町医者が、安心して急場に駆けつけられるようになるのでしょうか・・・
一般人の視点(私の個人的な視点です)なのですが、私が
警官の立場だったとして、もしかしたらなな先生とS先生がただのカップルの言い逃れ…として判断されてしまい、医師だと信じてもらえなかった可能性も考えられないですか?
私も拾得物を届けてむしろ感謝されるはずだったのに警官にねちねち言われてイヤな思いをしたことがあり、そのとき初めて職業柄、警官はどんなヒトに対しても信頼もしてくれないし、まず「疑惑ありき」なのだと痛感したのです。
もしも病院の職員証とか提示してらしたら、すみません。
ダッシュボードに緊急停車許可のお墨付きとかもっていらしたとか、医師とわかる状態で今回のことになっていたのだと
すれば、ただの職務を遂行しただけの警官なのでしょうけれど…。
それにしても緊急だとわかる「ドクターカー」って必要だとつくづく感じますね。
警察官には、我々が医者だということは示しました。
さらに医者だというだけではなく、緊急事態だということを
証明する必要があるなら、
Sくんの病院に電話して確認してほしい、と言ったのですが、
聞いてもらえませんでした。
来夢さんの言う「ドクターカー」のようなものは必要だと、私も思います。
警察に反感を持つ者として一言。警察官にはノルマがあるそうです。彼らも人間ですから楽に多くのノルマを達成したいのが本音です。そのために時間ばかりかかって、相対的に点数の少ない仕事はやりたがりません。そこで狙われるのが交通事犯や、自転車泥棒などの軽犯罪です。桶川事件や、警部補の息子が主犯の栃木の誘拐殺人事件、埼玉県草加駅前交番に助けを求めてきた人に対する暴力団員による暴行を数名の警官が見ていただけだった草加駅前交番事件など面倒な割にノルマ点数の少ない事件には手を出しません。私も10回ほどそういう事件にからんで警察に届けた経験がありますが、まともに受け付けてくれたことはありません。ところが、一時停止違反とか、自転車の無灯火走行、標識などの関係で一方通行違反を起こしやすい一方通行路の出口での一方通行違反取締りなど軽微な事件の摘発には以上に熱心です。私は10年以上も使っているぼろ自転車に乗っていますが、ここ1年間で自転車泥の疑いで3回も警官に質問されました。そんなことをやる暇があるのならもっと大きな事件を熱心にやれといいたくなりますがそういう事件には不熱心です。特に、暴力団員がらみの軽い?暴力事件などは、小さな暴力も見逃すな、などという標語を警察署の前などに大きく掲げていますが、届けてもほとんど相手にしてくれず泣き寝入りです。
ななさんの場合も、その警官に少しでも人情があって、聞く耳を持っていたならそんなことにならなかったはずです。今からでも遅くないですから、その警官、そいつの名前は交通切符から明らかでしょうから、の行為で死ななくてもいい赤ちゃんが死んだことを警察署長に抗議するとともに、赤ちゃんのご両親にもその事実を知らせるべきです。もっとそういうことをしても、そんな不人情な警官には通じないでしょうが。この事件が起きたのがいつだか分かりませんが、その時に新聞などにも投書すれば多少はそういう警官にもお灸がすえられたかもしれませんが。
当時のSくんの病院に、先生のような方が首脳陣にいたら、
彼は本当に行動に移していたかも知れません。
おっしゃる通りと思います。
ただ、あまりに若い警察官が、使命感に燃えてやったことと思いますので、
当時は、それでためらってしまったのです。
あれから年月を経て、医療を取り巻く事情は大きく変化しました。
胎盤など見たこともないであろう警察が、
胎盤の取り扱いに犯罪行為があったとして、
医者を逮捕する時代になりました。
今、同じことがあったら、多分全く違う反応をすると思います。
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