低出生体重児、いわゆる「未熟児」の増加が全国的に問題となっている。鳥取県の昨年度の未熟児に対する医療給付費は二〇〇二年度からわずか五年間で二・四倍にも増えた。増加のはっきりとした要因は不明だが、喫煙や若者の極端な「やせ願望」など、さまざまな要因が複合的に影響しているとみられる。
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低出生体重児の出産が続くと新生児集中治療室のベッドが足りないこともある=米子市西町の鳥取大医学部付属病院
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新生児の1割
低出生体重児とは、出生体重が二千五百グラム未満の新生児。出生数や合計特殊出生率が年々減少しているにもかかわらず、低出生体重児の割合だけは全国的に上昇中だ。厚生労働省の人口動態統計によると、二千五百グラム未満の新生児は一九七〇−八五年ごろまでは5%台で推移していたが、その後増加傾向に。二〇〇六年度には9・6%と一割に近づいている。
県内でもその傾向ははっきりと表れている。低出生体重児の割合はここ数年9%前後で推移し、〇六年度は8・8%。出生体重が二千グラム以下の低出生体重児が指定医療機関に入院した場合、入院医療費の自己負担分を国や県が助成する「未熟児養育医療」という制度の対象者も近年増えている。
制度の助成を受けた近年の新生児数は▽〇四年度=八十六人▽〇五年度=百人▽〇六年度=九十人▽〇七年度=百二十四人。未熟児養育医療の事業費も〇二年度の約千四百万円に比べ、昨年度は倍以上の約三千五百万円に増加した。
医学の進歩
県内で高度な診療を要するリスクの高い分娩(ぶんべん)は鳥取大医学部付属病院総合周産期母子医療センターか、県立中央病院の地域周産期母子医療センターに転院・搬送される。鳥大センターの長田郁夫副センター長は「小さく病的な子、医学的管理を要する子が増えてきたという印象はある」と話す。
早産や低出生体重児が多くなっている要因として指摘されているのは▽三十年前までは亡くなることが多かった千グラム未満の赤ちゃんも助かる進歩した医学▽妊婦の高齢化▽不妊治療による多胎児の増加▽喫煙−など。また近年は、女性の強い「やせ」願望による体重増加不良という新たな要因も注視されているといい、長田副センター長は「いろいろな要因が重なり合って成長が未熟になっていると思われ、“これが原因”といえない」と問題解決の難しさを指摘する。
ベッド不足も
低出生体重児の増加は新生児集中治療室などのベッド数不足にもつながっている。都市部の妊婦がたらい回しになる事例は、受け入れるベッドがないことが原因の一つ。県内ではたらい回しになるような事例はないが、昨年度は鳥大センターで対応できず、他県のセンターに受け入れてもらったケースもあった。
長田副センター長は「最近は妊婦健診を受けない人がいるが、健診はしっかり受け、自分の体がどんな状態でどんな管理が必要かをしっかり知っておくことが大切」と指摘している。