臨床研修見直しで議論開始、年内に結論
医師不足を招いた一因とされる臨床研修制度を見直すため、厚生労働省と文部科学省は9月8日、「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」の初会合を開き、意見交換した。「10年はかかる医学部の定員増よりも早く医師不足に対応できないかを議論するもの」(事務局)で、月1回のペースで行い、年内をめどに報告書をまとめる。検討結果が制度に反映されるのは早くとも2010年4月からだという。
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医師養成数増、方策と環境整備は? 冒頭のあいさつで、鈴木恒夫文部科学相は「2004年度に必修化された新医師臨床研修制度が、大学病院の医師派遣機能を低下させ、医師不足のきっかけになったという指摘がある」と前置きし、「学部教育と卒後研修を一体的にとらえた研修制度の見直しが必要と考え、厚労省と共同で検討会の設置を決めた」と経緯を述べた。
舛添要一厚生労働相は「新研修制度は、プライマリーケアを育てるなど良い側面もある。問題の所在を見極めたい」としながら、「授業に魅力がなければ学生は来ない。医師を一人前に育てるにはどうするべきか、ここにメスを入れないといけない」と述べた。
検討会の座長には、「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会と同じく、高久史麿・自治医科大学長が選出された。
検討会の構成員の中でも、新臨床研修制度への意見は分かれた。
福井次矢・聖路加国際病院長は「臨床研修制度イコール医師不足ではない。どの専門分野にどれくらい足りないのか、そのデータが欲しい」と要求した。
小川彰・岩手医科大学長は「臨床研修制度が医師不足の要因となった。2年間の研修に専念するため、医療現場からは実際、1万5000−6000人のマンパワーが失われている」と訴えた一方で、西澤寛俊・西岡病院理事長は「専門教育を受けた若い先生が、地方に行きたがらない。臨床研修制度がなく、専門教育に重きを置いていれば、医療崩壊がさらに進んでいたかもしれない」と述べた。
齊藤英彦・名古屋セントラル病院長は「臨床研修制度は医師の生涯教育の一環で、医師の偏在はまた別の問題。偏在をなくすために各県の枠を決めることで解消できるのではないか」と提案した。また、吉村博邦・北里研究所理事は「プライマリーケアも当然だが、専門も必要。両方のバランスを良くする必要があり、大学の機能を生かした連携が必要」と指摘した。
高久座長は「患者が大学病院に殺到し、臨床がますます忙しくなり、研修医には回せない。日本の医学教育すべてに関わる問題」と指摘した。
福田康夫首相の辞任を受け、舛添厚労相は「医療制度を再構築し、国民が安心できる制度にするには、医師の養成から行わなければならない。国民的課題なので、誰が大臣で誰が首相であるかに関係なく(検討を)続けるべきだ」とまとめた。
更新:2008/09/09 11:20 キャリアブレイン
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