【コラム】米国のMMA中継に関して、知人に尋ねまくりました。/高島学

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▲10月26日に行われたShoXCエリート・チャレンジャー・シリーズ。ハビエル・バスケスの引退試合、そしてマライペットのMMA4試合目が、Showtime系列のノンPPV中継で全米に流された



Photo & Text by Manabu TakashimaPhoto ; Dwight McCann, Dave ContrerasSpeical Thanx to, Neighbor K, Isamu Horiuchi, Dave Contreras, Kazuko Bagwell, Kid Peligro, Loretta Hunt, Keith Mills

  
5月にラスベガスへ行ったときに、
チャック・リデル王座陥落のニュースを視た。
PRIDEのヴァンダレイ・シウバ特集を視た。
IFL中継も視た。


6月、これもベガス。
ライブニュースに、ジェンス・パルヴァーが出演していた。
TUFフィナーレを視ることができた。


9月、LAの隣人Kさん宅でボードッグが流されていた。


5月は滞在そのものが長く、
TVをつけている時間も長かった。


6月のTUFは中継時間をチェックし、
取材終了後、視聴した(ライブというのは東部時間、つまりベガスでは3時間遅れのディレイ中継だから、取材終了後でも十分に視ることができる)。


9月はたまたまだった。


これらの期間以外、2月、4月、8月の渡米では、
TVをつけている暇もないようなスケジュールだったので、MMAのTV中継を視る機会はなかった。


2005年以前、つまり僅か3年前まで
米国のホテルや一般家庭に滞在し、
たまたまターンオンしたTVで
MMAを視る可能性は”ゼロ”パーセントだった。


それが今や――、
上記のチャック・リデルやジェンス・パルヴァーの
顔が映っていたのは、ESPN系のどれかだったし、
PRIDEやIFLは、FSN――、
フォックス・スポーツ・ネットで視た。
TUFは、ご存知SpikeTV。
ボードッグはIONtelevision。


このほか、エリートXCとともにShowtimeが
MMAに参入し、
IFLのドキュメントを中継していた
Mynetworkが、
11月3日にワールドGPのライブ中継を行う。
ズッファのWECには、VERSUSがついている。


また高画質の次世代TV、HDのマーク・キューバンが
HDネットでMMA番組を始め、
ビッグショーの開催+中継というお膳立てができつつある。


………………、………………。


なんて、書き連ねながらも、実は
全くもってこの事態が、把握できていない。


だいたい、米国と日本ではTV事情が違い過ぎる。
米国にたびたび、足を運ぶようになって17年。
分かっているのは「ケーブル」といわれているものの形態が日本とは全く違うということ。


ケーブルなしにTVアンテナで、視られるのは
三大ネットワークと、その地域の地方局のみ。
それ以外の数々のコンテンツは、ケーブルで視聴する。


だから、
アンテナの電波が届きにくい地域のケーブルや衛星中継、
大手スーパーが自宅とTVの相互連絡を求め
開局したケーブルTVとは全く別もの。


日本のそれらのケーブルTVでは、
今やスカパー系の主なチャンネルやWOWOWが視られ、
お得感があるものの、
やはり地上波メイン局で――普通にテレビをつけて――
見られる番組の強さは絶対だ。


米国では自分の好きな番組を見るには、
とりあえずケーブルに加入する。
そんなぐらいしか、知識は持ち合わせていない。


また、米国ではパラボラ・アンテナの設置が制限されている条例が都市部でみられたりするために、
ランディ・クートゥアーが、ケーブルを引っこ抜くという
破天荒やコマーシャルをUFCの際に流し続けていた
DirecTVやDISHnetworkなども、
なかなか普及しないと聞く。


車とならび、ケーブルTVは米国の住民に欠かせない
ナショナル・アイテムなのではないだろうか。


そんなケーブルの電波網に、MMAが次々と進出している。
つまりは、それだけMMAが米国社会に
浸透していると、一見、捉えていいわけだ。


とにかく、UFCのPPVのバイが何十万だ、
ミリオンを超えるかも――といわれている今、


米国のMMA中継って、どれだけ浸透しているのだろうか。


気になり始めてから、しばらく時が経ってしまったけど
今回、米国に住む友人宅のケーブル局状況を尋ねてみた。


LA近郊に住む友人が4名。
サンディエゴが1名、メーン州が1人、アリゾナ州が1人。
ネヴァダ州も1人。


この人数で、米国TV事情なんて大げさなかことはいえないけど、ずいぶんと勉強させてもらった。


まず、ケーブル自体に加入していない友人が、
1人だけいた。
正直、驚かされた。


ネヴァダとサンディエゴの友人は、
ケーブルでなくDISHnetだった。
想定内の返答の一つだ。


そして、他の7名の家で、
どれくらいMMA中継が行われている局を
視ることができるのか、それを尋ねてみた。


ちなみにこのなかの4名は、
MMAとかなり係わり合いが強い生活を送っている。


7票を満票として――。
Showtimeが5票。
Spikeは6票。
FSNが、7票。
Mynet――4票。
ION――5票。
VERSUS――5票、


ただ、Mynetなどは、LA近辺ではアンテナだけで見られる場合もある一地方局に近い形態を持つ。
他方、ケーブルで視聴できるにもかかわらず、
このチャンネルの存在自体を知らなかった友人もいる。


大げさでなく、三桁×3にのぼろうかというチャンネル数、
全く目にしないチャンネルがあって当然だ。


視聴可能世帯数と、視聴世帯数は違うということ。


ちなみにスポーツ局として、古くから親しまれている
ESPN(ニュースやクラシック、“2”など、系列は尋ねていない)は、全員が視聴でき、
ボクシングで有名なHBOは4票だった。


キューバンのHDと契約し、HDnetを視ることができる友人は3人や、思った以上に普及している。
(新しいモノ好きな、国民性だし。ちなみに3人が3人とも米国人か、米国人の配偶者のいる家庭だった)


FSNやSpikeが視られている確率が高いのは、
ケーブル局との契約形態のあり方に関係する。
ベース・チャンネルに加え、
リミテッド+、ディジタル・ティアー(欄?)など、
何通りものパッケージが存在しているケーブル局との契約。

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▲MMA界初のチーム戦を行ったIFLの中継は、FSNとMynetworkで行れている。香港がベースでアジア53カ国で中継を行っているスターTVとも契約

FSNは、リミテッド+のような
順基本の次に当たるパッケージにほぼ組み込まれている。
Spikeも同様だが、個人ではなく
集合住宅などで一括契約している場合など、ちょっと
R12的なSpikeは弾かれるケースもあるようだ。
(確かにSpikeの深夜枠のCMなど、子供には見せたくないという意見は十分に起こりえると思う)


ShowtimeやHBOは、
複数のチャンネルを保有しており、
視聴するには、追加料金を支払う必要がある
(PPV中継も持つ)プレミアム・チャンネルで、
これこそ日本でいうと、
ケーブル内のスカパーという位置づけのような気がする。
つまり、Showtimeにわざわざ
追加料金を支払って視聴する人は、
このチャンネルの番組をチェックする可能性も高く、
ベース・チャンネルに組み込まれている
IONのボードッグ中継や、
MynetのIFLドキュメントを目にする人よりも
ずっと多いと推測されるわけだ。

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▲一時、MMA界の話題の中心にいたbodogは、急降下。IONは放送局自体のバリューも低く、ほとんど視聴されていないMMA中継という声もある

契約料金は、それこそケーブル会社ごとに
まちまちなのだが、
ベース・チャンネルに、リミテッド+や
ディジタル・ティターを加えて
月額40ドル?50ドルという契約を結ぶのが、
まず視る側の基本ラインだそう。


アンテナでも見られる三大局と地方局に、
CNNやESPN、MTVが加えられているに過ぎない
20チャンネルほどのベースは20ドルそこそこだという。


DISHなど衛星系も、ケーブルと同じように
複数のパッケージが用意され、大きな違いはない。


ベース、リミテッド+、ディジタル・ティアーで、
HBOやShowtimeとの契約なしという友人宅では
ゲーム好きの旦那さんの意向で、
ネットゲームができるGEMAERを追加して、
月額$83.85を支払っているという。


娘が3人にいて、学費に将来を考えての学資保険など、
出費が増えてきた、我家では
年間10万円もテレビを視るために使えるだろうか?
きっと家内に拒絶されるだろうなぁ。
PRIDEのPPVがなくなり、
全くスカパーを視なくなった自分の家では、
今年の春に月4500円程度の契約を取り消されてしまったぐらいだし――(愚痴)。
(視ないものにお金を払う必要はないのだけど、
ごくごく稀に時間ができたときに、スカパーを視るぐらいなら、子供の世話をしろ――ということだと理解しています)


1人暮らしの友人は、
HBOやShowtimeを含め、
上に記した全てのチャンネルが視聴でき、
加えてインターネットとの抱き合わせで、
月額110ドル程度の出費になるという。


DISHの友人は、Showtimeは契約しているが、
HBOはなし。Mynetが視られない状況で月に50ドル、
割安に感じるが、
パラボラを立てるのには設備投資が掛かっている。


つまり、米国のコアなMMAファンが
ケーブルや衛星、そしてHDまで加えると、
月1万2、3千円程度がかかり、
これにUFCやEXCのPPV代(40ドル程度)
も必要になってくるということだ。


高い、安い――は個人差がある。
MMAファンでも、
全てをチェックできる時間など、持ち合わせていない人が
多いに違いにない。
実際にHDDディスクに、どんどんMMAの試合が
溜まってしまう――という声もあった。


ShowtimeのMMA中継は、メジャー・コンテンツ。
FSNだと、ワンノブゼム。
そんな印象もあるという米国のMMA TV事情。


やはり最高の成功例は、
UFCとSpikeの関係のようだ。

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▲ジ・アルティメット・ファイター、UFCファイトナイトのSpikeTVの中継と、PPV中継は抜群のコンビネーションを誇っている


で、ちょっと知っておく必要があるのが、
実際のところ、
現時点はズッファの1人勝ちということ。


米国MMAワールドの住民が、
ナショナルTVに進出――と、
表現するケーブルネットでの中継も
番組枠を購入して中継しているに過ぎない。


ズッファにしても、SpikeやVERSUSとの契約は
中継料を手にするのでなく、番組についた広告費が
懐に入る仕組みだったという話も耳にした。
(20代?30代の成年男子の支持を得たTUFは、封切ムービーのCMが必ず入り、かなりの収益を得たそうだ)


ShowtimeのPPVは、
EXC、ストライクフォース、
Dyamaiteも含め、大惨敗という状況にあるという。


もちろん、今は普及の時期。
非PPVのShoXC、PPVのEXCという風に、
UFCのTUF?ファイトナイト?PPVとは
違ったメジャー化へのプロセスを開拓しようという
意気込みも感じられる。
しっかりとした資金と計画制があれば(あるに違いない)、
第二のUFCになる可能性だって十分にある(と思う)。


米国でも、本当の本当のメジャー・スポーツは
三大チャンネルの無料放送で、視ることができる。


つまり、PPVの売り上げを上回る
広告費を得られる――、社会に影響があるということ。


独占禁止法にひっかかる可能性もあるぐらいだという
1人勝ち状態のズッファ、
UFCブームなのか、MMAブームなのかといえば、
現時点ではUFCブーム。


「UFCの取材に来た」といえば、これ以上の説明は不要。
しかし、「MMA」といってしまえば、
とたんに「何だ、それ?」となるのが現状。


ただし、そのUFCに引っ張られる形で、
MMAという言葉も、浸透し始めている。


そのUFCは、一度は破談に終わったという
HBOでの中継を、
今も諦めていないという話も伝わってくる。


まったくイコールとして、捉えることはできないが、
ケーブルがそれだけ浸透しているということは、
人々の目に触れることもそれだけ多い。


で、そこで何が行われているのか、
重量級の戦いをメインにすえるプロモーションも多いが、
WECのような組織も出てきている。

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▲UFCと同じズッファ系のWEC。ミドル級王者パウロ・フィリョのファイトも、VERSUSで全米に流される

マルセリーニョ・ガッシアのMMAデビュー戦よりも、
ユン・ドンシク×ファビオ・シウバよりも、
ホ・ミンソク×柴田勝頼が重用されHERO‘S韓国大会。
どんどん、海の向こうに引き離されそうな気がする。


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【 2007年11月02日 20:02 】

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